短編⑤
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眩暈がする。
頭も少し痛む。
でもこんなことで休んでる訳にはいかない。
だって今日は、
島に上陸するんだもの。
・・・・だって今日は、
エースとの初デートなんだもの!!
具合悪いなんて言えないし、見破られたくもない。
気合を入れてメイクして。
精一杯のお洒落な服を着た。
最後に鏡の前でチェック。
顔色上手く隠せた・・・・よね?
よし!
「おーいアコ入るぜー」
タイミング良くそこにエースが入って来た。
「ノックしてよ、もう」
「もう準備出来てんじゃねェか。行こうぜ」
「はいはい、ってエースはそのカッコなの・・・?」
私は気合を入れたのにエースはいつも通りの姿。
「・・・・やっぱダメか?」
思わずツッコめば不安そうに眉を下げたエース。
「エースらしくていいと思う。行こう?」
「おう」
少し照れたような返事と同時に手が出された。
「え、あ」
一瞬の逡巡の末手を握っていいのだと理解してゆっくりと手を繋いだ。
・・・熱も出てきたかな。
どうかエースにバレませんように、と祈りながら船を降りた。
両想いになって初めてのデート。
良い思い出にしたい。
私にとってもエースにとっても。
「賑やかな島ね。何処行く?まずご飯?」
「そーだな、飯なら俺に任せとけ」
「任せた」
エースに手を繋いでもらって良かったかもしれない、というほどに眩暈が強くなってきた。
座れる、良かった。
なんて密かに安堵した。
ああでもご飯、食べられるかなあ。
あんまり食欲ない。
でもエースが行くようなお店で飲み物だけ、なんて注文出来ないし。
そもそもがエースに心配されちゃうし。
「ここなんかいいんじゃねェ?」
「あ・・・・・うん?」
エースの足が止まったその場所を見て私は目を丸くした。
お洒落な、カフェ。
「・・・・嫌か?」
「嫌っていうか・・・エース、ここでいいの?」
「たまにはいいだろ?こういうとこも。今日はその、アレだ。デート、だし」
なんてな、と照れ臭そうに笑うエースに心臓を撃ち抜かれる。
良かったこういうところなら簡単なケーキとお茶だけで済む。
「有難うエース・・・好き・・・・っ!!」
「ほら行くぞ」
耳まで真っ赤なエースと手を繋いでお店に入った。
「ケーキ美味しい・・・っけど」
程好い甘さのケーキを頬張りながらちらりとエースを見る。
「けど何だよ。物足りねェならおかわりしろよ」
「物足りないのはエースじゃない?大丈夫?」
こんなお洒落なカフェにエースが満足するようなメニューなんてないから。
エースが頼んだお洒落なパスタは見るからに量が少なくて、
料理が来た時のエースの目が点になっていたのは可哀想だった。
私ならもっと大盛りにして持っていくのに!!
案の定エースはぺろりと食べ終えて手持無沙汰状態。
「たまにはこんなんでいい、大丈夫だ」
「なら、いいけど」
大丈夫、エースのことを気遣えるくらいには体調も良くなってきた。
頭はまだ痛むけど。
・・・大丈夫、と自分に言い聞かせる。
「あー・・・・言い忘れてたんだけどよ」
「何?」
「・・・・アコ今日、可愛い・・・な・・・」
耳まで真っ赤なエースが私を見据えて呟いた。
「・・・・・っそれ今言うの反則じゃない?」
言われた私も照れるんですけど!?
「顔真っ赤だぜ」
「エースもね!」
あ、胸が苦しくなってきた。
でも嫌な苦しさじゃない。
そのままエースは寝てしまった。
・・・・正直言えば私も少し眠りたい。
エースも寝てるんだし、私も少しくらい、いいよね?
「はっ!!」
寝てた!
目が覚めたらエースが私の顔を覗き込みながらにやにやしてた。
「お目覚めか?お姫サマ」
「っごめん!エースが気持ちよさそうに寝てたからつられて・・・・!」
「いいって。俺もさっき起きたとこだし」
やらかした・・・!
「ホントごめん・・・!そろそろお店出ようか」
「おう」
寝てしまったお詫びにここは私が出す、と言ったんだけど、
エースが今日は金があるから気にすんな、と頑として出させてくれなかったので甘えることにした。
少し寝れたおかげかだいぶ体調戻って来た。
「あ、エース見て見て!このリーゼントのキーホルダーサッチさんじゃない?」
デートを楽しめる余裕も出てきた。
「ははっ、確かにそっくりだな!」
「買ってく?お土産に」
「リーゼントならまんま過ぎてつまんねェよ、フランスパン探そうぜ」
「了解!」
雑貨屋さんを見てたらパイナップルのネックレスなんかもあって、
「これマルコさんにどう?」
「俺が渡したら反省文書かせられるやつだな!」
「頑張れエース!」
「はははっ絶対ェ渡せねェ!!」
楽しい。
その時ふと目に留まったのはイヤリング。
綺麗な紅の、炎の形のイヤリング。
・・・綺麗、だあ。
まるでエースの炎みたい。
「それ、欲しいのか?」
「へ!?いやいや、ただ綺麗だなって」
ぼーっと見つめていたらエースにバレた。
「俺を思い出すから、だったりして」
「え、うん。そうだけど」
「え」
「・・・・・いやエースの炎の方が綺麗だと思ってるよ?」
素直に認めたらエースが固まったので、
怒ったのかなってフォローしたら目の前の炎のイヤリングと同じ色にエースの顔が同じ色に染まった。
・・・いや待って。
私今ぼーっとして恥ずかしいこと言った気がする!!
「・・・・ん、さんきゅ」
「いやあの、えっと今のは・・・・っ」
慌てて言い訳をしようとした私の手からイヤリングを取ったエースは、
「え、エース?」
そのままレジでお会計を済ませた。
「ほら。もう少し見たらモビー帰るぞ」
「有難う・・・って、え?もう帰るの?」
もしかしてつまらなかった?それとも怒った?
なんて不安になったのは一瞬。
「さっきの飯じゃ物足りねェから、モビー戻ってお前の作った飯が腹いっぱい食いてェ」
にしし、と笑いながら私の頭を撫でてくれたエースにほっとした。
同時にこみあげてくる嬉しさ。
「任せて!何食べたい?」
「あー・・・・なるべく簡単で早く作れるやつ」
「何それ」
「腹減ってっから」
「じゃあモビー戻ろうか」
「おう」
なんてやりとりがあって、
モビーに戻ってから私はすぐにエースに大盛チャーハンを作ってあげた。
体調もだいぶ戻って来たし、初デートも楽しかったし。
なんて食べてる途中で寝てしまったエースを見ながらしみじみしてたら、
隣にマルコさんが来て座って、
「アコ、熱は?」
私の顔を見るなり開口1番にそう言った。
「え!?」
「自覚症状は」
「め、眩暈と頭痛で・・・熱はたぶんない、かと」
「朝よりはいいみたいだねい?」
「ななな何故それを・・・・!?」
朝マルコさんとは会ってない。のに。
「さっきエースに言われたんだよい。アコの具合が良くないみたいだから診てくれって、よい」
「エースが!?」
じゃあ今日エースは全部気づいてて。
わかってて、私が落ち着いて休めそうなカフェに行ってくれたり早めに帰そうとしてくれてたってこと!?
「落ち着いたら部屋に来るといいよい」
「あ・・・・有難うございます」
そんなこと聞いたらまだエースの側に居たいから。
医務室にはまだ行けない。
マルコさんはそんな私の気持ちも理解してくれたようで。
マルコさんが居なくなるのを見計らって、
気持ちよさそうに眠るエースの頬にそっと口づけた。
有難うね、エース。
初デート行けて良かった。
楽しかったよ。