短編⑤
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「僕は君が好きだ必ず幸せにする。だから野蛮な海賊のもとへ帰したくない」
「・・・・私はあなたに何の気持ちも持ち合わせてはおりません。だから帰ります」
「嫌だ」
「離して」
今まで逗留していた島の酒場で、少しだけ仲良くしてもらった男性がいた。
でもこの島も今日が最後。
ログも溜まって買い出しも終わって明日が出航。
ということで最後にお店に来たら例の男性が居て。
軽い気持ちでご挨拶。
・・・・のつもりだったのだけれど。
熱烈な告白をされてしまった。
しかも、帰さない、と手を掴まれた。
面倒なことになった。
こんなところをお頭にでも見られたら大変だわ。
「あの、一応私赤髪海賊団のクルーでしてね」
「なら余計に帰せない」
「マジで!?」
あの四皇赤髪のシャンクス相手にやりあうつもりこの人!?
そんな強そうに見えないんだけど!?
「君はここで暮らした方がいい」
「いやそれだと私幸せになれないんですが」
さっき幸せにするとか言ってなかったかあんた。
「海賊船に女性が居て幸せなはずない!」
「幸せなんでご心配なく。どうしても離して頂けないというなら仕方ありませんね」
私も海賊ですから。
「で、どうやって帰って来たんだ?」
「お頭に護身用に持たされた物を出したら一発で」
「護身用・・・・ね」
面白そうな顔でお頭が呟くので思わず苦笑した。
「勿論その時になれば使いましたけど」
護身用に、と持たされた武器は脅し用ではない。
ちゃんと使えるようにお頭に訓練されているから。
「今回は使う機会はなかった訳だな」
「そうですね。海賊だって言ってもやっぱり女性は舐められますね」
こんなことは今までに1度や2度じゃない。
純粋に好意を持ってくれてる人もいれば、
あわよくば赤髪海賊団のクルーに取り入りたい人、
仲良くなったフリをして私を誘拐して人質にしたい人。
様々。
その思惑を見破るのはもう慣れてきたけど、
今回のように好意を持ってくれていたとしても危険な目に遭うこともあるし。
「いい加減諦めた方が楽になれるんじゃねェのか?アコ」
「まだ嫌ですよ」
諦めろ、とお頭が言うのは私がお頭の女になること。
そしてずっとお頭の側にいること。
私はまだ自由でいたいから、とずっと断ってる。
お頭のことは好きだから、
お頭の女になるのはいいんだけど。
そしたら私はお頭の側にいないといけないらしい。
『俺の女になったら俺はアコを離せねェ』
と言われた。
「つれねェなァ」
・・・まあ、そんなこと言ってはいても優しいお頭のこと。
なんだかんだ言っても割と私を好きにさせてはくれると思う。
それでもまだ誰かのものになる気にはなれなくて。
「海賊は自由でなくちゃ」
「とは言えあまり1人でふらふらするなよ。いざって時助けられねェのは困る」
「はーい」
翌朝出航の準備をしていたら昨日の男性が港に居るのが見えた。
一瞬うわあ、と思ってしまったけれど、
まあここなら皆も居るし何かされることはまずないだろう。
なんて、油断してた。
昨日のことを謝罪したい、お頭に餞別として良いお酒を持ってきたから受け取って欲しい。
そう言われたことまでは覚えてる。
「あれ」
気が付いたら真っ暗な部屋。
目の前には例の男。
「目が覚めた?」
「見ればわかるでしょ、ばっちりよ」
「安心して、怪我はさせてない。薬を嗅がせただけだから」
「・・・・それ全然安心出来ないやつぅ」
やれらた。
手は縄できつく縛られてる。
「君はこれからここで僕と2人で暮らすんだよ」
「ああああお頭に怒られる・・・!」
ていうか皆に怒られそう。
お前のせいで出航が遅れたとか言われる。
「・・・・君はまだ自分の状況を理解してないようだね」
自分の状況理解してないのはお前だよ!!
というツッコミはあえてしないでおこう。
逆上すると何するかわからないタイプと見た。
この手じゃ懐の武器は出せない、か。
下手したら取られてる可能性もある。
まあ大人しくお頭が助けに来てくれるのを待つっていう手もあるけど。
ここは1つ。
足が自由で良かった。
すっくと立ちあがって、
「そい、や!!」
自分の頭を相手の頭にぶつけた。
「い、っ!?」
「私の武器が懐のものだけだと思ってたら大間違いよ」
私は石頭なんだから。
「早く戻らないと皆に・・・!」
特にお頭に油断したなって馬鹿にされる!
手は不自由だけど足が動けば問題はない、とドアを開けようとした瞬間勝手にドアが開いた。
しまった、仲間が居た!?
と戦慄したのも一瞬。
「だぁっはっはっは!!まったく助け甲斐がねェな!!」
「おか、しら・・・」
あ、これはこれでやばいやつ。
「俺たちがアコを置いて出航する訳ねェだろう。心配するな」
「そっちの心配はもとからしておりません・・・」
手遅れだった!!
「さて、うちの大事なお姫様に手を出したのはそいつだな?」
「私に手を出されたのもその人です・・・」
自業自得とは言え、哀れ。
「お前はこっちだ。お前ら、あとは頼んだ」
おおう、なんて楽しそうな皆の声が聞こえて、
私はお頭に連れられるがまま。
「あーえっと、ご迷惑おかけして申し訳ありません、でした」
「違うだろうアコ?」
「・・・ご心配をおかけしました」
意外にもお頭は怒ってる風でも揶揄ってる風でもなくまじめな顔。
「どんな甘い言葉に唆されたんだ?お姫様は」
「・・・お頭にとっておきのお酒を贈りたいからって」
素直に答えたら盛大なため息が返って来た。
「なら俺を連れて行け。まったく・・・」
「はいぃ・・・・!」
恐縮して強く頷いたら、
大きな手が私の髪を優しく撫でた。
「アコが束縛されたくないのはよくわかる。お前が強いこともわかってる」
「・・・・お頭?」
「それでも心配なんだ。愛してんだ」
ああ私愛されてるなあとは思うけど。
「私もお頭のことは愛してます」
でもそれ以上に今だまだ、
「それ以上に自由を愛してるんです、だろ?」
「・・・・です」
「いいさ。アコは俺のもとへ帰ってくる、今はそれでいい」
「それは勿論・・・!」
「あと1か月は待つ」
「短い!!」
「次にこんなことがあったら待ったなしだ、覚えておけ」
こんなに怯えるくらいならお頭の女になった方がマシかもしれないと真剣に考えることにしました。