短編⑤
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「・・・・マルコさん」
「心配しなくていい、俺がいるだろい」
「・・・・っはい」
マルコさんの分厚い胸板に押し付けられた顔が苦しい。
・・・・さっきからばくばく言ってる心臓も。
マルコさんと買い出しのはずが、
こんなことになるなんて。
久しぶりの島。
ウキウキで買い出しに出るところにマルコさんが声をかけてくれて、
付き合ってくれることになって。
更に浮かれてた。
帰りに海軍と鉢合わせしそうになって、
慌てて入った廃屋。
真っ暗な中、抱きしめられること数十分。
・・・・まだ外は騒がしい。
「おかしいですよね・・・」
「・・・・よい」
顔は見られてなかったはずだ。
マルコさんが即座に察知して、
逃げたのだから。
それなのにさっきから外が騒がしい。
「別の海賊でも居るんでしょうか」
まるで誰かを追っているかのような声が聞こえてくる。
居たか!?いや、あっちだ!なんて騒々しい声が。
「厄介だねい」
「よっぽどの大物なんでしょうかね」
こんなに長く騒々しいなんて。
「騒ぎに乗じて逃げることも出来ないことはねェが・・・」
「見つかったらただじゃ済まない、ですしね・・・」
勿論マルコさんが負けるとは思ってないけど。
「オヤジには騒ぎを起こすなと固く言われてるからねい」
「・・・それなんですよねえ」
そもそもが久しぶりの島。
買い出しをしっかりとして、
クルーの鋭気を養って。
再出発に備えなければいけないのに。
海軍に見つかったので速攻出航です!
なんて訳にはいかない。
ログだって溜まってない。
暗闇に目が慣れてきてマルコさんの顔が見える。
こんな厄介なことになったのに、
機嫌は悪くなさそうだ。
「不死鳥のマルコだぞーって言って回れば逆に皆逃げてくとかないです?」
マルコさん有名だし恐れおののいて。
「血の気が多いやつは向かってくるだろうねい。俺は構わねェが」
「私が構いますね」
「だろい?」
「もう少し様子見るしかなさそうですね」
「窮屈そうだねい」
「はあ、まあ」
「出るかい?」
「え」
「アコは指名手配されてねェ。アコ1人なら出ても問題はねェだろい」
窮屈、というか。
少しばかり恥ずかしいと言うか。
いつまでも抱きしめられている必要はあるのだろうか。
という疑問。
まあ私を安心させるためなんだろうけど。
でもだからって、
「嫌です。ここを出るならマルコさんと一緒がいいです」
「ははっ、そうかい。嬉しいこと言ってくれるじゃねェか」
「大丈夫、待てます」
「いい子だよい。寒くはないか?」
「ぜんっぜん!!」
むしろ熱いくらいです恥ずかしさで!!
「・・・まさか、ねい」
ふとマルコさんが意味ありげに何か呟いた。
「どうしました?」
「いや、何でもないよい」
「・・・追われてる人物に心当たりでも?」
「うちに居るだろい?食い逃げするやつが」
「・・・・うわ」
火拳のエースなら確かに大物だわ。
「まさか、と思っただけだよい」
「ま・・・まあエースなら大丈夫、ですよね」
「・・・・何とかするだろい」
苦笑を浮かべるマルコさんにつられて私も思わず苦笑する。
「で・・・ですよね」
「心配かい?」
「ちょっと・・・・」
ふ、と腕の力が緩んだ。
「行くかい?」
「マルコさんも一緒に?」
「俺は行けねェよい」
「じゃあいいです」
エースならたぶん逃げ切れるし。
「いいのかい?」
「私が行ったところでエースの足手まといになるだけですしね・・・」
戦えないし。
「ははっ、そりゃそうだねい」
「でも・・・」
「でも?」
自分で言ったことでふと考える。
「今だってマルコさん1人ならとっくにモビーに帰れてましたね・・・すみません・・・」
やっぱり私は足手まといでしかないなあ。
わかってたけど。
「エースは守る戦いは苦手だろうが、アコ1人なら守れる」
「・・・はい」
「俺は長男だからよい。アコが2人になっても5人になっても守れるよい」
「いや私分身出来ませんが!!」
思わずツッコんだらマルコさんは楽しそうに笑った。
「それに外で追われてんのがエースだとも限らねェ。他の海賊ってこともある」
「確かに」
「真偽不明の今下手に動かない方がいい」
「・・・・ですね」
マルコさんの言う通りだ。
飛び出して行ったはいいもののエースじゃなかったら無駄になる。
「俺1人ならモビーには帰れたかもしれねェが、帰らなかったかもしれねェよい」
「・・・・と、おっしゃいますと?」
「何の情報も得ずにモビーには戻れねェだろい」
「さっすがマルコさん過ぎる・・・・」
「だからアコが今のこの状況を気にする必要はねェんだよい」
「マルコさん・・・・!」
「むしろアコが居てくれて心強いくらいだい」
「いやいやそんなお気を遣わないでください」
いくら何でもそれはないわ。
料理が出来ることはこと戦闘においてなんの役にも立たない。
「気ィなんざ遣ってねェよい。惚れた女が居て嬉しくない男が居るかい?」
「ほ・・・・・・?」
ん?今幻聴が聞こえた?
「だからアコは気にする必要はねェんだよい」
「ほ?は?ほ?」
動揺を隠せない私にマルコさんがくくっと笑った。
「むしろチャンスだろい?惚れた女を口説き落とすための」
ぎゅ、と再び腕の力が強くなった。
「だ・・・・・誰が?」
「俺が」
「誰を?」
「アコを、だよい」
「わ・・・・・・・私もっマルコさんっ」
マルコさんのことが、と口を開いたら、
『火拳のエースを発見したぞー!!!』
と外で大きい声が響いた。
「えっやっぱエースでした!!!」
「・・・・アコはやっぱりエースが好き、か」
「いや違いますすみません!!!」
追われてる海賊はエースだったらしいけど、
今はそんなこと気にしてる場合じゃなくなってしまった。
ごめんエース。
「・・・・で、続きは?」
「・・・ま、マルコさんが好きです・・・・」
言うが早いかマルコさんの唇が私の唇を奪った。
「・・・・・・・・っふへ」
「まだまだここから出られそうにないねい」
「・・・・そうですね」
エースまじでごめん。