短編⑤
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「暇だ」
「暇だね」
ここ3日、雨が続いている。
島に着く様子もない。
元気の有り余っているエースは退屈しているようで。
まあそれはわかる。
私もいつものことしか出来ないからつまらない。
「ルーキーとか仕掛けてこねェかなァ」
「この雨の中?」
「雨でも負けたりしねェ」
「そりゃそうだろうけど。・・・でもさぁ」
それにしたって、
「何だよ?」
「何で私の部屋で寛いでるの?」
昨日も一昨日も始終私の部屋で寛いでいるエース。
「ここが1番落ち着くんだよ」
・・・・ということは、
雨は落ち着かない。
ってことかな?
そう言ってもらえるのは嬉しいけど。
エースは私のベッドの上でごろごろ。
私は床で読書。
一昨日はおやつを作ってあげた。
昨日は2人で父さんのところに行って一緒に昼寝をした。
今日は何しようかなあ。
雨だと出来ることが制限されるから。
「マルコさんの部屋でも行ってみる?」
「マルコの?何で」
「面白そうな本とか貸してくれるかも?」
「難しい本ばっかだろ、マルコが持ってんの」
「そうかも」
じゃあどうしよう。
悩みだしたところで、
ぐぅ、と音がした。
思わずエースの方を見れば、
「・・・腹減ったな」
「何か作ろうか?」
「ん・・・・いや、いい」
驚いた。
てっきり作ってくれって言われると思ってたから。
「いいの?」
「いいから・・・・ここにいろよ」
真剣な顔で私の顔を見つめるエース。
「え、うん」
もしかしてエースは悩み事でもあるんじゃないだろうか。
そしてそれを私に相談したい。
だからここ数日私の部屋に来てる?
そして今日こそその悩みを私に相談しようとしてる・・・!?
きっとそうだ。
気づいてしまったからには、聞き出したい。
エースの悩みの種を。
そして出来れば何とかしてあげたい。
「明日も雨らしいぜ」
「そうなの?嵐よりはマシだけどこうも続くと鬱々としちゃうよね・・・」
「まァな・・・・腹減るよな」
「エースはいつもでしょ」
世間話をしながら何とかエースの悩みを聞き出せないかなと試みる。
雨が降ってることが悩みな訳はないもんね?
空腹が悩みなのはいつものことだし、
それならさっき私に何か作ってって言ってくるだろうし。
・・・・まさか!
私の作るご飯が不味いって言いたい、とか!?
「ね・・・・ねえエース?」
「ん?」
「お腹空いたんならサッチさんに頼んで何か作ってもらおうか?」
もしそうならエースはここでイエスと言うよね・・・?
「何でだよ。作ってもらうならアコに頼むって」
「そっかあああ!!そうだよねええ!!!
良かった!!安心した!!
「アコ腹減ってんのか?」
「いや食べたばっかりだから全然」
今日オフの日だから下ごしらえもないし。
「・・・この間の」
「うん?」
お、来たか?
「この間のおやつ美味かった」
「この間の・・・・なんだろ」
「砂糖菓子みたいなやつ。甘かったけど」
「ああ、あれね。材料はマシュマロと一緒だけど作り方変えるだけで食感変わって美味しいよね」
前に島に行ったときおばあちゃんに教えてもらった砂糖菓子。
カリカリで美味しかったので、
レシピを教えてもらってエースにも作ってあげた。
「また作ってくれよ」
「勿論」
・・・・悩みじゃなかった。
嬉しい半分、落胆半分。
・・・どうしよう思い切って聞いてみようか。
出来ればこう、それとなく。
「ね・・・・ねえエース、最近どう?」
一生懸命考えたけどこんな言葉しか思い浮かばなかった。
「どうって、何がだよ」
「ほ、ほら・・・誰かと喧嘩したりとかない?」
「別にねェけど。この間盗み食いがバレてサッチに怒られたくらいだな」
「あ、それ知ってる。サッチさんめちゃくちゃ怒ってた」
人間関係で悩んでるのかと思ったけどそうでもないらしい。
盗み食いがバレてサッチさんに怒られたくらいで悩んだりするエースじゃないと思うし。
「あんな怒ることねェのにな」
実際エースはケラケラと笑ってるし。
「いやそこは反省しようよ。サッチさん機嫌悪いの嫌なんだけど」
「・・・八つ当たりとかすんの?」
「それはされないけど。なんていうか全体的に空気ピリピリする」
本人としてはそんなんじゃ美味い飯が作れないだろ、って見せないようにしてるつもりなんだろうけど。
周りは気づいて気を遣ってしまう。
「サッチに何かされたら俺に言えよ?」
「うん、有難う。エースも・・・」
「俺も?」
「・・・何かあったら私に言ってよね」
エースは誰かにいじめられるようなタイプじゃないし、
このモビーで今更そんなことする人も居ないだろうし。
たとえマルコさんがイライラしてても気を遣うとかそんなことせずに、
平気で悪戯仕掛けて怒られるようなタイプだと思う。
「何かってなんだよ?」
「・・・・えーと、サッチさん怒らせてご飯抜きとか?」
「うわありそうだ」
「そしたら私がこっそりエースにご飯持って行ってあげるし」
「おう、さんきゅ。でもんなことしたらアコまで怒られるだろ」
「2人で不寝番やらされたりして」
「アコとなら楽しそうだな」
「そしたらおやつ持ってこ、あの甘いやつ」
エースが好きだと言ってくれた甘いあのお菓子。
材料は砂糖とゼラチンだし、難しくはないし。
何より私も好きだから。
「・・・いいな、それ」
「ね。また作るよ」
エースの口から涎が垂れそうだな、なんて思ってエースを見てたら、
「あの菓子食ってる時のアコの顔が好きだ」
優しい笑みのエースが私を見つめる。
「え、恥ずかしい何急に」
「でも作ってるときのアコも見てたい」
「・・・・エース?」
「つーか」
「・・・・うん?」
外ではしとしと雨が降っている。
でも波は穏やか。
部屋は静かで。
「好きだ、アコ」
エースの声が響いた。
「・・・・・・へ?」
そこには真っ赤な顔で、私を睨みつけるように見ているエースが居て。
「やっと、言えた」
「は、へ!?」
何!?何が起きてるの!?
混乱する私の耳に聞こえたのは、はぁーっという深いため息。
「ずっと言いたかったんだけどよ、タイミングなくて」
「・・・・も、もしかしてずっと私の部屋に居たのは」
「まあこれ言うためってのもあるけど。1番は落ち着くからって言っただろ?」
「そ・・・・そうでしたね・・・」
「なァ」
「はい!?」
ぎゅ、と。
エースの大きい手が私の手を包んだ。
「アコは俺のことどう思ってる?」
「ひぇっ」
いきなりの告白に心臓は爆発寸前だし、
頭は真っ白。
でも言うことは1つ。
「アコ・・・?」
不安そうに私の名前を呼ぶエースの、目を見て。
「私も好き!!!」
雨音に負けないように叫んだ。
午後は2人でお菓子を食べましたとさ。
甘い甘い。