短編①
夢小説設定
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「エース?」
「ん?」
私はその光景を目の前にしてものすごく驚いた。
エースがお肉をさしたフォークを持ったまま、手を止めていたから。
・・・・・・・・・・こんなエース初めて、かも。
「どうしたの?ご飯、食べないの?」
「あ。・・・・・ああ、いや、食うけど」
食べてる途中で寝ちゃうのはいつものことなんだけど。
起きてるのに食べない、っていうのは。
・・・・・・・あきらかにおかしい。
「具合悪い?」
「いや、大丈夫だ」
「・・・なら、いいけど」
でもエースの様子がおかしいのはそれだけに留まらなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
エースの部屋で話をしていて、
頷いてくれたりはするんだけどやっぱり心ここにあらずなエースは、
さっきから私の目をじーっと見ている。
「・・・・・・・・・エース」
「・・・・・・・・あ?ああ、何だ?」
「いや、何だ?じゃなくて。どうしたの?」
私が名前を呼ぶとはっとしたように答えるエースにやっぱり違和感。
「何でもねェよ」
「何でもなくないでしょ?変だよ?」
「アコが心配することは何もねェから、大丈夫だ」
あくまで言おうとしないエースに対してこみあげてくるものは悲しさ。
「私には言えないってこと?・・・・・まさか浮気」
「ばっ!・・・・・んな訳ねェだろ!?俺が好きなのはアコだけだ!信じろ!」
急に大きくなった声と、
そのまっすぐな視線。
「うん。信じる」
「・・・・・・・・・やっぱ不安か?」
「え?」
不安か、と聞いてるエースが一番不安そうな顔でそんなことを聞いてきた。
やっぱ?
「俺じゃ不安、だよな」
「・・・何それ」
いつものエースらしくない、弱気な台詞。
「後悔してねェか?アコ」
「後悔?何の?」
「ここに残ったことを」
どくん、と心臓が動いた。
「エースは・・・・・・・後悔、してるんだ?」
そう言った瞬間、
物凄い勢いでベッドの上に押し倒された。
「ちょっ」
「俺は人生に悔いは残さない」
「・・・・・・・・・・ん」
怒ったようなエースに言葉が出ない私の唇を塞いで、エースは私の顔を覗き込む。
「今更アコを手放すことなんか出来ないし、する気もねェ。ただ」
「・・・・・・・ただ?」
「アコの世界とここがあまりにも違いすぎるだろ?ここは海賊船だし、俺は海賊だ」
「そうだね」
「・・・・俺はちゃんとアコを守れてるか?」
辛そうに眉と目を細めて私を見つめるエースに、かける言葉は。
「馬鹿」
「は?」
「エースのバカ。バーカ」
「・・・・・・・・・おい」
思い切り笑顔で、そう言ってやった。
「私が笑ってない日が1日でもあった?」
エースの珍しく弱気になってる原因が、私なんだって思ったら、
嬉しくなった。
「・・・・・・・・ねェな」
エースはまじまじと呟くと、
私の頬にちゅ、っと唇を落とした。
「今も笑ってるもんな、アコ」
「でしょ?」
「・・・悪かった」
言いながら退いたエースを見て、
私も起き上がった。
・・・・・・・・何かこっちに来たばっかりのこと思い出すな。
「エースが海賊なのも、ここが海賊船なのも知ってて私はここにいるんだけど?今更じゃんそんなの」
私はエースが私の家に来る前から知ってた。
ここに残ると決めた時だって。
「だよな」
「そもそも何でそんな風に思ったの?」
「・・・・・・・・・最近アコがよく遠く見てたから。したらミリアがホームシックじゃねェかって」
「・・・・・・・・・なるほど」
「で?どうなんだよ実際」
今度は拗ねたように私を横目で見る。
「遠くを見てたっていうか、海を見てただけ。綺麗だなって」
「綺麗ぃ?」
「だって私の世界の海ってこんな綺麗じゃなかったんだもん」
「・・・・・・・そうだったか?」
「そうそう。私海好きだし」
そう答えればエースはがっくりと肩を落とした。
「・・・・・・・・心配して損した」
「あははっ私は嬉しかったよ」
「笑うな」
「うわっ」
そして再び私はベッドの上に倒された。
「あれ、ちょっと、」
「心配させた分と、笑うなって言ったのに笑った分」
「はい!?」
「しっかりお仕置きさせてもらうぜ?」
そして目の前に迫ったエースの顔は、
いつもの大胆不敵なエースの笑み。
「・・・・・好きだから許す」
「そりゃ光栄だ」
好きな人の側に居られて、
愛して、
愛されて。
こんなにも幸せな日々。
後悔するはず、ないのにね。