短編⑤
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「はぁぁぁめっちゃ素敵だった・・・」
「思ってたよりは良かったな」
「マジで神だったわ・・・」
「そんなに良かったか?」
取引先からもらったチケット。
神の声、と呼ばれる歌声のイケメンのコンサートだった。
雪村誠司。
名前は知ってたけどあまり興味はなく、
でも行かないのも勿体ないから、と。
たまたま隣に居た同僚のシャンクスを誘ってきてみた。
シャンクスが運転する車の中で余韻に浸る。
「あの中性的な雰囲気に、綺麗な歌声!素敵だった・・・!」
「なるほど、アコはああいう顔が好みか」
「そりゃあイケメンは癒しだし」
目の保養だし、と言ったらシャンクスは前を見たまま、
「イケメンならここにもいるだろう」
と真顔で呟いた。
いやまあ確かにシャンクスだってイケメンの部類に入るとは思う。
でも、
「ジャンルが違うのよ」
「ジャンル?」
「男らしいイケメンと中性的なイケメン」
「俺は?」
「もちろん男らしい方でしょ」
シャンクスの顔は濃い。
「で、アコの好みは後者か」
「違うけど」
「・・・・おいおい」
「シャンクスで男らしいイケメンは見慣れてるから中性的なイケメンは目の保養になったの」
「じゃあアコの好みは?」
「外見的な話のことなら普通で十分だけど。イケメンは信用出来ない」
「だっはっは!手厳しいな!」
シャンクスは豪快に笑うと、
車を停めた。
「ここらで飯でも行かないか?腹減ってるだろう?」
「空いてる!」
見るとここはファミレスの駐車場。
コンサートが11時からで2時間ちょっとやったところだから、
お腹はぺこぺこ。
「いやー思わずCDも買っちゃったけど楽しみだわ」
「しっかりサインももらってたな」
「爽やかな笑顔で有難うございますって言われたわ。最高だった」
それだけでも買って良かったって思うもの。
「向こうはその金で女と美味い飯、か」
「いやー美味しいの食べて欲しいわぁ」
「何だ、妬かないのか」
「今日会ったばっかりのしかも年下の子相手のことで妬く訳ないでしょ」
とりあえず注文を済ませて、
ドリンクバーでウーロン茶を持ってきた。
ウーロン茶を口に含んだところで、
「なら俺だったらどうだ?」
「何が?」
「他の女と飯に行ったとして」
「私の金でなきゃどうでもいい」
シャンクスはどうしても私と恋バナがしたいらしい。
「・・・寂しいこと言うなァ」
なんて笑ってはいるけど、
「シャンクスだって私が男と食事行ったってなんとも思わないでしょ」
と問い詰めたら、
「そんなことはないぞ」
とあっさり否定された。
「え、妬くの?」
「ああ、妬く」
・・・この挑戦的な視線を受けては、
認めなければいけないかもしれない。
シャンクスの気持ちを。
でも本人の口から聞くまでは、あくまで私の勘違いということもある。
・・・・触らぬ神に祟りなし。
「意外。シャンクスってそういうの気にしないタイプだと思ってた」
「束縛する男は嫌いか?」
なんて苦笑するので、私はにこりと笑顔を作った。
「大っ嫌い。ついでに言うとさっきも言ったけどイケメンも嫌い」
「嫌い、とまでは言ってなかっただろう」
「そうだっけ。でも信用出来ない人を好きにはなれないよね」
「俺も信用ならないか?」
「仕事の同僚としては信用してるわ」
間違いなく、ね。
有能だし上司部下からもなんだかんだ言われながら信頼されてるし。
「1人の男としては?」
「信頼出来るほどプライベートを知らない」
素直に答えたところで注文した料理が届いた。
お互いに受け取って、
「頂きます」
私はハンバーグ。
シャンクスはドリア。
「・・・さっきの話だが」
「うん」
「確かに俺もお前のプライベートはよく知らねェ」
「でしょ」
「でもだから、今日デートに誘ってもらえて嬉しかった」
「え、えっとデートのつもりでは」
なかったんだけど。
思わず動揺してしまった私にシャンクスは笑った。
「そっちにその気はなかったんだろうが、俺は素直に嬉しかったってだけさ」
「たまたま近くにいたから、シャンクスが」
「たまたまだと思うか?」
「たまたまじゃなかったら何なの」
何か段々イライラしてきた。
「意図的に傍に居たんだ」
「私が仕事で忙しくしてた時にシャンクスは暇して人間観察してたって訳?」
「ああ、なかなかに楽しかった」
こんにゃろ。
「そんな意地悪な人は次何かあっても誘ってあげませーん」
「おいおい、そりゃあないだろう」
「雪村君の次のコンサートなら誘ってあげてもいいけど?」
意地悪には意地悪で返す。
なんて大人げないのはわかってるけど。
「デートの誘いなら喜んで」
「デートじゃないわ。コンサートへのお誘いよ」
「・・・参った」
と、シャンクスが両手を挙げて降参のポーズ。
「私の勝ち?じゃあここはシャンクスの奢りでいいかしら」
「勿論だ。だがアコからしたら奢られっぱなしは癪じゃないか?」
・・・シャンクスはホント痛いとこ突いてくる。
「・・・・次のコンサートの時は奢るわよ」
シャンクスの言う通り奢られっぱなしは性に合わない。
「これで次も俺と出掛けられる訳だな?」
「はいはい、何とでもどーぞ」
「俺も、負けっぱなしは性に合わないんだ」
シャンクスの手が私の頬に添えられた。
そして、
「愛してる」
短い言葉とほぼ同時に唇が重なった。
「・・・・返事は次のコンサートでいいかしら?」
負けず嫌いはお互い様。
「次のコンサートはいつあるんだ?」
「さあ?」
「・・・・待つよ」
ここまで待ったんだ、いつまででもな。
そう言い切ったシャンクスは何処か寂しそうで、
次の彼のコンサートが早く決まりますように、とそっと思った。