短編⑤
夢小説設定
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「悪夢障害?」
「・・・・それくらいしかないよい」
「・・・・ちなみに原因をお聞きしても?」
「ストレス」
「ストレスぅ!?」
マルコさんが苦笑しながら言うことには。
私が1番驚いた。
ストレス・・・・あったかな私。
知らないうちに貯めてたんだろうか。
ああ、エースに何て言おう。
「幸い今度島に着く。ストレス発散して来ればいい」
男でも漁ってみるかい?
なんて。
軽口叩くマルコさんにあはは、と乾いた笑いを返して。
「有難う、御座いました・・・」
部屋を出た。
ところにエースが居て。
「お、どうだった?」
心臓が止まったかと思った。
・・・・・これは、どうするべきなのだろう。
ことの発端は昨日の夕飯時。
「アコ、クマ出来てんぞ。目の下」
私の隣で夕飯の続きを食べ始めたエースが、
私の顔を覗き込んだ。
「あー、うん」
「寝れてねェの?サッチにこき使われてんのなら俺が言ってやろうか?」
「いや、そんなことは・・・ないけど」
そんなことはない。
むしろ最近は自主的に新しいレシピを試しているだけで。
「今日はちゃんと寝たほうがいいぜ」
「う・・・・ん」
曖昧な私の返事にエースが眉を顰めた。
「何か悩み事か?」
「・・・・・・寝るのが、怖くて」
思い切って心の内を吐露してみることにした。
最近の現状を。
「寝るのが怖い?何で」
エースは咀嚼していたご飯をごっくんと飲み込み、首を傾げる。
「最近ずっと怖い夢ばっかり見るんだよね」
「怖い夢?」
「すっごくリアルでね。目が覚めた後も忘れられなくて眠るのが怖くなるのよ」
「・・・・そんなに怖い夢なのか?」
「あと金縛りとかも。知らない人が部屋に入ってくる幻覚とか、幻聴とかも」
「・・・それ幻覚なのか?」
「自分の悲鳴で起きるの。鍵も確認するけどちゃんとかかってる」
毎日のように見る悪夢。
起こる金縛り。
「どっか具合悪いんじゃねェのか、それ」
「心当たりはまったくないんだけど」
「脳のどっかに何かあるとかよ」
「やだ怖い」
「今日も変な夢見たら明日マルコに聞いてもらえよ」
「怒られそう」
夢のことで相談してくるんじゃねェよいとか呆れられそう。
「でも眠れねェんだろ?」
「うん」
「俺もついていくから」
「・・・・有難う」
ということで朝も早くにエースが私の部屋にやってきて、
金縛りと悪夢から逃れられなかった私はおとなしくエースとマルコさんに会いに行った。
部屋の前で待ってる、とエースが背中押してくれたおかげですんなりと相談することが出来た。
マルコさんは意外にも優しく話を聞いてくれたうえで、冒頭の診断に至る訳だ。
でもその原因がストレス、だなんて。
エースに心配はかけたくない。
でも本気で心配してくれたエースに嘘はつきたくない。
「アコ、どうだったんだよ?ちゃんと診てもらえたのか?」
「あ、うん・・・優しかった」
「それで何かわかったのか?」
「あー・・・・・・ええと」
どう答えようか迷っていたら、
「男漁りするなら声かけろよい、俺が見定めてやる」
ドアが開いてマルコさんがにやり。
「男漁り・・・・?」
訳がわからない、とエース。
「まままマルコさん何てことを!!」
「心配なら今日は一緒に寝てやれよい、エース」
「マルコさんっ!!!」
「サッチには今日はアコを休ませるよう言っておくよい」
じゃあな、と颯爽と去っていったマルコさん。
残された私とエース。
「・・・・・何だよ男漁りって」
「いやしないよ!?」
エースの蔑むような視線が痛い。
マルコさんめ!!
「当たり前だろ。させねェよ」
「・・・・いや何か、あの。私の、その。悪夢障害ってやつじゃないかって」
言われて。
「で?」
「・・・で?とは」
「原因も聞いたんだろ、アコのことだから」
「聞きました」
「原因は?」
「・・・・・・・ストレス、だって」
「ストレス?」
覚悟を決めて話せば案の定エースの表情が目に見えて暗くなった。
こくりと頷く私に黙るエース。
・・・き、気まずい。
「あ、あのでも・・・全然心当たりないから。マルコさんの診断誤りじゃないかな?」
「ほんとにねェの?心当たり」
「ない。そりゃあストレスがゼロとは言わないけど」
悪夢障害に至るほどのストレス、なんて。
「それでさっきのマルコのセリフかよ」
「・・・・そう。いやしないけど」
「わかった」
「何が!?」
突然エースが深刻な顔で頷いた。
「今日は俺が一緒に寝る」
「何で!?」
「さっきマルコが言ってただろ」
「あ」
心配なら一緒に寝てやれよい、って。
「俺が一緒なら魘された時起こしてやれるし。少しは安心だろ?」
「そ・・・それはそうだけど」
「俺じゃ嫌か?オヤジに頼むか」
「え・・・・エース寝れないかも、よ?」
「俺はどこでも寝れる体質だから大丈夫だ」
私が寝られない可能性大なんですけど!!
でも、まあ。
ここまで言ってくれるエースの気持ちを無下には出来ない。
「よ、よろしく・・・・」
「おう、任せとけ!」
マルコさんの陰謀か。
悪夢もマルコさんのせいだったりして。
とか言ったらめちゃくちゃ怒られそうだから言わないけど。
「・・・・あの、エース?」
「ん?」
ん?じゃないよ。
夜寝る時にエースは約束通り私の部屋に来た。
そして私のベッドで横になった瞬間。
エースが私を抱きしめてきたのだ。
「この態勢は?」
「抱きしめるとストレスが減るってマルコが言ってたからよ」
やっぱマルコさんの陰謀じゃん!!
ただでさえ好きな人(エース)と一緒に寝るのなんて耐えられないのに!!
エースは単純バカ(失礼)だから信じちゃうのわかってて言ったよ絶対。
エースの硬い体が私を包む。
寝れる、かなあ。
「無理しなくてもいいんだよ、エース?」
「いや俺は普通に嬉しいけど」
「え!?」
「まあいろいろ我慢は必要だけどな」
「は!?」
「マルコに言われたんだ」
「これ以上何を!?」
余計なことを!?
「惚れた女の1人くらい守ってみせろって」
「ほ・・・・・・・」
あ、これもうダメだ。
完全に眠れないやつだ。
固まった私の髪を優しく撫でて、エースが笑う。
「今度島に着いたら俺とデートしてくれよ」
「え、あ、う」
「返事はそん時でいいからさ」
「・・・・で、でも、あの」
「まぁた考えこむと悪夢に魘されるぜ?今日は俺がいるけど、見ないにこしたことはねェだろ」
ほら、と私をあやすように背中を叩いたエースはそのまま目を閉じた。
「おやすみ、アコ」
「・・・・おやすみエース」
その日悪夢にうなされることはなくて。
今日からずっと俺と一緒に寝ような、とエースが嬉しそうでした。
ちなみにデートの時に何て返事したのかは内緒。