短編①
夢小説設定
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「・・・・・・嘘でしょ」
静かに呟いた言葉は、誰にも拾われることはなかった。
そういえばここ、最近掃除してなかったなあと入った倉庫。
あらかたの掃除と片づけを終えて出ようとドアを開けようとした、が。
ドアが開かない。
「何で?」
思い切り力をこめて押すけどびくともしない。
押して駄目なら、とひいてみるけどそれも駄目。
「かくなるうえは!」
ドアから数歩離れて、ドアを睨みつけた。
そして、
「はあああ!!」
勢い良くドアを蹴った。
・・・・・けれど、
「いっ・・・・・・痛い」
蹴り飛ばそうと思い切り力を入れてみたけど、ドアは動いていない。
足が痛くなっただけ。
「・・・・・・・・・・・どうしよう」
はあ、と深くため息が出た。
さすがに1日出られなければ誰かが心配して探しに来てくれるとは思うけど。
それまでこのまんま、かあ。
「・・・・・・・・・・・・・よし」
駄目モトでもう1回、と。
今度はドアに体当たりを試みた。
「・・・・・・・・・・ふぐう!!」
今度は身体が痛い。
私の力じゃ駄目だ。
・・・・・・・・・やっぱり誰かが気づいてくれなきゃ。
とりあえずドアの側に居よう。
そして近くに誰か来た気配がしたら声を出そう。
それまでは無駄な体力は使わないようにしなきゃ。
私はドアに凭れかかって座って、誰かが通りかかってくれることを待つことにした。
・・・・・・・・今、何分たっただろう。
たぶんまだそんなにたってないはずなのに、少し不安になってきた。
大丈夫、大丈夫、と。
自分に言い聞かせた。
「アコー?」
それから更に待つこと10分くらい。
聞き慣れたお頭の声が聞こえてハッとした。
「お頭!?」
ドアの向こうに居るであろうお頭に精一杯の声を出す。
「そこに居るのか?アコ」
「居ます!ドア開かないんです、出してもらえませんか?」
「開かない?ちょっと待ってろアコ」
ガタッと少しだけドアが動いた。
けれど開く様子はない。
「・・・・・・・アコ、ドアから離れられるか?」
「え、あ、はい」
言われた通り、ドアから出来るだけ距離をとった。
その瞬間、
どぉん、という大きな音と共にドアが壊れた。
・・・・・・・・もう1度言いいましょう、
ドアが、
粉砕した、と。
「無事か?アコ。誰かに閉じ込められた訳じゃねェよな?」
「・・・・・・・お頭?」
「ん?」
「ドア・・・・・壊れちゃいましたけど」
「気にすんな。それより、怖かっただろ?気持ち悪かったりとかしてねぇか?」
呆然とする私に優しく声をかけてくれるお頭。
「あ・・・・有難う御座います、大丈夫です、そんな長い時間でもなかったし」
「で、何でこんなとこに閉じ込められてたんだ?」
「掃除しようと思って入ったら出れなくなっちゃったんです。立て付け悪くなってたみたいで」
「そりゃ大変だったな。もう大丈夫だ」
そう言ってお頭は片手でそっと抱きしめてくれた。
「・・・・・・・でもお頭、よく私がここに居るってわかりましたね?」
「アコの姿が見えねえんで、聞いてみたらここに入るのを見た奴がいたんだ」
いつもなら逃げたくなるけど、
今は違う。
・・・・・・・・・・お頭に抱きしめられていることがこんなにも安心するなんて。
このぬくもりがとても愛しく感じた。
「探して、くれたんですか」
「もっと早く探しに来りゃ良かったな。すまん」
お頭が謝ることなんて、ないのに。
・・・・・・・優しい。
「いえ、助かりました。・・・見つけてくれたのがお頭で良かった、です」
「でももうちっと泣きそうな顔してるかと思ったが、意外に大丈夫そうだったな」
「泣きそうではありますよ?身体とか足痛いですし。・・・でも、お頭が来てくれたから」
すごく、安心したから。
「身体が痛い?何処かぶつけたのか?」
「いえ・・・・その、ドアに体当たりしたり、とか。でもまさかお頭がドア壊しちゃうなんて思わなくて・・・ふははっあははっ」
「・・・・・・・・・・アコ?」
突然笑い出した私を今度はお頭が驚いた様子で見ている。
それがまた、おかしくて。
「見つけてくれて、有難う御座いました」
「アコのそんな顔が見れるなら何度でも見つけてやるさ。今日は珍しく逃げないしな?」
・・・・・・・・・お頭のその言葉に冷静になってみれば、今更ながら恥ずかしくなった自分がいて。
「あ、私足痛めたみたいなんで船医さんとこ行ってきます」
そう言って逃げ出そうとするも片腕しかないお頭の力は緩むことはなく。
「そうか、足を痛めてるんだったな。歩くのは辛いだろう?俺が担いで連れてってやる」
「担いで!?」
さすがに片腕のお頭にお姫様抱っことかは望みませんけど!
「や、あの歩けます!大丈夫です!だから離してくださ」
「だっはっは!遠慮すんな!」
「遠慮します!」
助けに来てくれたお頭がカッコイイ、なんて。
実は思ってた私のバカ。