短編⑤
夢小説設定
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冬島がだいぶ近づいたらしい。
日に日に寒さが厳しくなっていく。
寒いのは嫌いではないけれど、
あまりにも寒いのは辛い。
料理もお皿洗いも、
水を使わざるを得ないから。
手は荒れていくし、
何だか同じように心も荒れていってる気さえする。
「明日の昼飯何?」
今日の昼食のカレーライスを食べながらエースが聞いて来る。
私はあかぎれで痛む指に絆創膏を巻く。
「せめて今日の夕飯食べてから聞いて」
常に半裸のエースにも苛々する。
だって見てるだけで寒いんだもの!!
「アコ何か苛々してねェか?」
「半裸の人間見てりゃ苛々もするわ」
「寒いのか?」
「むしろあなたは寒くないの?」
「俺はメラメラの実食ってるからなァ」
「エース見てるだけで寒いんだけど!!」
「まだそこまで寒くねェだろ。雪も降ってないし」
「エースの寒い基準は雪なの!?」
と突っ込んだところでエースがテーブルに顔を突っ込んだ。
・・・寝たわ。
この寒いのによくまあ眠れるわ。
あったかい珈琲でも淹れて部屋で飲もう、と決めて。
絶対不要だと思われるブランケットをエースにかけた。
部屋でゆっくり珈琲を飲めばこの苛々も落ち着くと思ってたけど。
・・・・私の部屋ってこんな散らかってたかしら。
本、出しっぱなしだし。
あーそういえばこのレシピ試そうと思ってまだやれてないのよね。
だってサッチさんキッチン使わせてくれないんだもの。
島に着いてもサッチさん買い出しには付き合ってくれないんだろうし。
すぐナンパに行っちゃうんだろうし。
エースがすぐつまみ食いするから食材多めに買わないとなのに。
・・・・何で、私ばっかり。
こんな。
「アコー入るぞー」
何だか悲しくなっていたらエースが入って来た。
「ちょっとノックしてよ!」
「したぜ?」
「え、嘘」
「2回したけど返事はねェし、でも鍵開いてたからさ」
「・・・・ごめん」
心外そうなエースに驚いて謝る。
こんなのただの八つ当たりだわ。
「別にいいって。それよりこれありがとな、返しに来た」
「あ、わざわざ有難う」
エースにかけたブランケット。
「具合悪いのか?大丈夫か?」
「・・・何か色々悲しくなってきて」
「何かあったのか?」
「何かあった訳じゃ、ないけど」
ぎゅう、と返してもらったブランケットを握りしめた。
それを見たエースが、
「おしわかった。ちょっと待ってろ」
と部屋を出て行った。
・・・・すっかり冷めた珈琲を見つめてたら何だかお腹が空いて来た。
お昼、忙しくてゆっくり食べてる暇なかったからな。
夕飯の下ごしらえもやらないといけないし。
「お待ち!」
「へ」
いい匂いと共に戻ってきたエースの手にはお盆にお皿とカップ。
「サッチに頼んでおやつ作ってもらったんだ、一緒に食おうぜ」
「・・・・おやつ?これが!?」
あなたが今手に持ってるのはカレードリアですが!?
これがおやつに入りますか!?
まあ昼食で余ったカレーにチーズかけて焼いたんだろうけども。
「熱いから気を付けろよ」
・・・・まあでも、
「んん!んめェ!」
エースが美味しそうに目の前で食べ始めちゃうし、
私もお腹は空いてるし。
ってことで私も、
「頂きます・・・」
食べるけど。
「はふい・・・・・けどおいひい・・・・」
口の中で熱々のカレーとチーズが広がる。
しかも結構なボリュームで。
「・・・・お腹、いっぱい」
食べました。
「んじゃ次、これな」
食べ終わったらエースが茶色の液体の入ったカップを出してくれた。
「珈琲・・・の匂いじゃない」
甘い匂い。
「ココア。好きだろ?」
「好き。でもあったかいのならさっき珈琲飲んだよ」
「珈琲は身体を冷やす作用があるんだろ。サッチが言ってた」
「そう、だけど」
「寒くて腹が減ってるから悲しくなんだよ」
「・・・・・むむ」
だから温かいものを食べてお腹いっぱいにして、
更には甘いココアで心も満たしてくれたって訳ね。
「あと今日は早めに風呂入って早めに寝ろよ」
「でも明日の朝の下ごしらえが」
「俺がサッチに言っておくから。睡眠も大事ってマルコが言ってたぞ」
「・・・わざわざ聞いてくれたの?」
「あ、やべ」
目を逸らしたエースが面白くて笑えば、
「元気出たか?寒いの苦手なら島は俺と回ろうぜ」
「エースあったかいもんね」
ほっとしたように笑ったエース。
こんな風に心配してくれるエースが居てくれて。
私は幸せだなあ。
さっきまでの悲しさとか、
とんがった気持ちどっかいっちゃった。
「おう、あっためんのなら任せろ」
「有難うエース」
寒い日はエースが必須だわ。
(夏も邪険にすんなよな)