短編⑤
夢小説設定
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「却下」
「頼む!!な!?」
「嫌だってば。シャンクス私がホラー嫌いなの知ってるでしょ?」
会社の同期のシャンクスが何故か私をホラー映画に誘って来た。
「取引先との間で話題になったんだ、見に行かねェといけないだろう!?」
「他をあたって」
悪いけどそのお誘いだけは乗れない。
「そう言うなよォ、アコと俺の仲だろ?」
「どんな仲よ」
「入社式で寝て怒られた仲」
「眠い時は寝るのが私の信条だから」
ただそれだけだ。
「金は俺が出す」
「行かないってば」
「お化けが怖いのはわかるが・・・・」
「お化けが怖いんじゃないのよ」
「ならいいだろう」
「グロテスクなのが嫌なの」
ホラー映画ってだいたいグロい場面あるじゃない。
お化けならまあ良く見れば可愛いとこもあるけど。
「じゃあそこだけ目ェ閉じてりゃいいさ」
なんてシャンクスはにこにこと私を誘う。
「・・・シャンクスホラー苦手だった?」
「1人で見るのはあまり得意じゃないんだ」
あーまあそれはわからないでもない。
大勢とわいわい見るのと1人で見るのとでは違うことも、ある。
「・・・・わかった。今回だけ付き合ってあげる」
「そうか!助かる!!」
・・・満面の笑みで顔を輝かされちゃ悪い気もしないし。
で。
『次はオマエだァァア!!』
まあ最近の特殊メイクとか技術には感心せざるを得ない。
心配してた場面もそこまで多くないし。
あーこの女優さん最近良く見るけど名前何だっけ。
この男の子は子役から売れてるコよね、なかなかいい演技するじゃない。
なんて見ていたら隣に座っていたシャンクスの手が私の手を握って来た。
「・・・怖いの?」
小声で聞きながらシャンクスの顔を見れば、
「そういうことにしておいてくれ」
とこちらも小声で返って来た。
上映中に会話はマナー違反だし、仕方なくそのまま繋いでおくことにした。
「意外と面白かったわ」
「怖くはなかったのか?」
「予想よりは全然平気だった。シャンクス怖かったの?」
「そうだな、俺はその・・・見えるタイプ、と言えば信じるか?」
「・・・そうなの?」
突然真顔になったシャンクスは私を見て、
「アコ。今横を見ない方がいい」
「一応聞くけど、何故?」
目を細めて唐突に言う。
「女が居る」
「生きてる人?」
「・・・には見えないな」
「美人?」
「アコには負ける程度だ」
「じゃあいいわ、ほっといて」
躊躇なく答えたらシャンクスが噴出したのが聞こえた。
「だっはっは!動じねェなァ、ほんとに」
「だって私より落ちる美女なら興味ないもの」
「怖くないのか?」
「どうせ見えないし」
仕事でミスする方がよっぽど怖い、と言えばシャンクスはまた笑った。
・・・笑ったくせに、
「そうか。俺は怖いんだが」
「何、内臓出てる?」
「いや、出てねェ」
「血まみれ?」
「いや、傷1つない」
「じゃあ平気よ」
見える人ってのは怖いものなのかしら、と考えた瞬間手に違和感。
・・・映画館の時と同じように、
絡んだ手。
「参ったな、今日は怖くて眠れないかもしれん」
「・・・・つまり、何が言いたいのかしら」
「で、何でこうなるかなあ」
「約束は守るさ」
『新しい財布欲しくないか?アコ』
と満面の笑みのシャンクスが言うには、
『俺の家に泊まってくれ』
なんて爆弾発言。
『そういうのは恋人に言ってくれる?』
『ああ、だからアコに来て欲しいんだ』
これでシャンクスの家に行ったら、
彼の気持ちを受け入れたようなもので。
でも私は、
『・・・財布はいらないけど、パスケースが欲しいわ』
「ホントに見えてるの?」
「さあな?だが怖いのは嘘じゃねェ」
「幽霊が?」
「アコを他の誰かにとられることが、さ」
シャンクスの部屋。
ソファーに並んで座ってまるで恋人みたいな状態で。
「・・・・このまま寝ていい?」
「この空気で?」
「眠い時は寝るのが私の信条、って言ったでしょ?」
「そりゃそうだが・・・」
「大丈夫、何かあったら私が守るから」
そう言って今回は私の方から手を繋いだ。
明日くらいには返事してもいいかな。
なんてね。