短編⑤
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「マルコー今日定時で終わりそう?」
「終われないことはないよい」
「ホント?夕飯食べて行かない?」
「15分、待てるかい?」
「了解」
このところ残業続きだった私達。
たまには恋人のマルコと夕飯でも食べて帰ろうかな、なんて。
「なんだぁマルコ、アコの手料理は食わせてもらえねェのか!?」
私たちの関係は会社公認。
なのでこんな茶々を入れられることも珍しくない。
「あら、料理はマルコの方が得意ですから」
「揶揄うなよい、アコ」
「明日の休みはマルコの家でおうちデートもいいなあ」
「・・・見せつけてくれるなあお2人さん」
さっさと帰れ、とサッチさんに追い出されるように私達は会社を出た。
「うーん、喉越し最高美味しい!!」
「たまには蕎麦も悪くねェよい」
「でしょ。天ぷらも絶品」
夕飯はお蕎麦。
食の好みが合うのも嬉しい。
「明日は俺ん家でいいのかい?」
「久しぶりにマルコの手料理が食べたくなったの。駄目?」
「食いたいモン言ってみろい、何でも作るよい」
「さっすがマルコ、大好き」
「必死なんだよい」
マルコが苦笑しながら言うので私は首を傾げる。
必死?
「・・・何に?」
「愛しい恋人に嫌われねェように、だよい」
「私がマルコを!?」
「アコは可愛いからよい」
心配なんだ、とマルコが呟いた。
「浮気の心配?」
「アコがするとは思ってねェが・・・」
「ないない」
「・・・・心配性なだけだい、悪かった」
真面目で心配性なマルコ可愛い。
「・・・今言うことじゃないかもしれないんだけど」
「・・・なんだよい」
「今週の日曜日友達の結婚式って言ってあったよね?」
「ああ、聞いてるよい。気を付けて行って来いよい」
「有難う、マルコ」
という訳で結婚式当日。
友達のドレス姿は本当に綺麗で、幸せそうで。
いい式だった。
新郎の友人に会社の人が居たこと以外は。
「新郎と友達でラッキーだったなあ、アコちゃんのそんな姿見られるなんて」
「はあ、どうも」
二次会の立食パーティで滅茶苦茶声を掛けて来る男。
部署が違うからあんまり話したことないのに。
「なあこれから俺と抜け出さない?」
「え、無理です。友達と予定あるので」
思い切り警戒して顔を顰めたのが伝わったのか、
「ああ心配しなくていいよ。俺彼女居るし」
「心配はしてません、不快なだけです。私も恋人居ますし」
弁解した彼に私は正直な胸の内を明かした。
「マルコだろ?あいつ真面目だしつまんなくない?」
「・・・・はぁ?」
何いきなり人の恋人こけおろしてくれちゃってるのこの人。
不愉快極まりないんですけど。
「俺の方が楽しいよ?」
「今既に楽しくないです」
「お互い大人なんだから浮気くらい普通にするだろ?マルコも浮気くらいするって」
今度マルコにこの人の彼女聞いて今日のことチクってやろう。
「浮気なんて自分の欲に負けて大切な人を傷つけるようなだっさいことしませんよ」
私も、マルコも。
強い口調でそう言ってやればその人は面食らった顔をした。
「マルコのどんなとこがそんなに好きなの君」
「・・・前に、残業ですっごい疲れてた時。飲み物を差し入れてくれたんです」
「珈琲?」
「と思うじゃないですか。それが味噌汁だったんですよ」
寒い冬。
終電もなくなるかもしれない不安と戦いながら残業してた時。
これ飲んで終わりにしろよい、と渡されたのは温かいお味噌汁の缶だった。
珈琲だと思って受け取った私はプルタブを開けて匂いにびっくり。
でも本当に美味しくて。
面白いなあこの人、なんて。
気になったのが恋の始まり。
「・・・変わってんね?」
「え、どっちがです?」
「どっちも」
「そうですか?まあどっちにしても言いたいことは1つです」
お前に興味はない、失せろ。
「ってことがありました」
一応帰ってマルコにも報告。
「・・・・アコ」
「名前なんて言ったかな、あの男の彼女さん可哀想」
「・・・恥ずかしいよい」
「えっ私恥ずかしいことしてないつもりだけど!?」
「俺とアコの馴れ初めは2人だけの秘密にして欲しかったよい」
「あら・・・私は皆に言いふらしたいけど?」
マルコはこんなに素敵な人よって。
「まあ、ともかく」
お疲れさん、とふわりと抱きしめてくれたマルコ。
「・・・有難うマルコ」
「なあ、アコ」
「なあに?」
「缶じゃない味噌汁、飲みたくねェか」
「飲みたいわ」
「・・・・毎日、どうだい」
「アナタと一緒なら喜んで」
真面目で心配性で可愛い私の恋人は、
面白くて料理上手で素敵な旦那様になる予定の人。