短編⑤
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「どうして私を置いて行ったの」
「・・・・悪かった」
「謝罪が聞きたいんじゃないわ。どうして置いて行ったのかを聞いてるの」
「・・・・・忘れて、た」
「・・・・・・・そう。つまりエースにとって私はその程度だったってことね」
理由次第では許してもいいと思ってた。
・・・許したくはなかったけど、それでも。
きっと優しい彼のことだから。
何か理由があるのだと。
信じたかった。
・・・・でも、そう。
コレが理由。
それなら私だって、
「別れましょう」
こうなるわ。
「いっ嫌だ!」
「嫌だ?あなたにそんなこと言える権利があると?」
「そっ・・・・それは、でも、俺は・・・・っ」
「却下」
「・・・・っ俺はアコと別れたくねェ!!」
「そもそもの原因を作ったのは誰?」
「・・・俺、です」
「さようなら」
とは言っても同じ船で生活する以上は会ってしまうんだけど。
・・・・・・どうして私を置いて行ったの。
デートの約束、してたのに。
島に着いたらデートしようねって。
だから私は精一杯のお洒落をして準備して。
楽しみに、してたのに。
エースは居なくて。
1人で出掛けてしまっていた。
元々エースは1人で出掛けることも多い。
船では大人数での生活だし、
お互いに1人で島を歩きたい時もあるのは理解出来る。
だからそれは咎めてない。
問題なのは私とデートの日に1人で出掛けてしまったことだ。
「嫌だ」
部屋に戻ろうとエースに背を向けたんだけど、
腕を掴まれて動けない。
「・・・・離して」
「それも、嫌だ」
「エース、いい加減にして」
「俺が悪いのはわかってる。でも別れんのは嫌だ」
いつも力強い声のエースの、
珍しく弱弱しい声。
・・・・絆されちゃ駄目。
「私は許さないって言ったわ」
「埋め合わせはする。いや、何かさせてくれ」
「・・・何かって」
「アコが許してくれるなら何でもする」
懇願の瞳に思わずため息が漏れた。
「・・・・私の部屋にお茶とケーキ持ってきて」
「わ、わかった」
ぱっと手が離れてすぐにでも消えそうなエースに、
「2人分」
と言えば、ぱぁぁと顔が明るくなったのがわかった。
・・・・単純だなあ。
エースも、私も。
「すぐ持ってく!待ってろ!!」
「・・・はいはい」
さて、どうしようか。
1人部屋に戻って考える。
・・・・今までのデートはエースだって楽しみにしてくれてたし。
最近は喧嘩とかもしてなかった。
不満があればエースは私に言ってくれるはずだし。
そのエースが今回に限って私とのデートを忘れるなんて。
おかしい、よね。
・・・この島に昔の女が居るとか?
「持って来たぜ!!」
「早っ!!」
想像以上に早かった。
2人分のお茶とケーキ。
「次は何すりゃあいい!?」
「じゃあ・・・お話ししましょう、私と」
「別れ話ならしねェ」
途端エースの顔が曇って思わず苦笑した。
「そうじゃなくて。この島のこと」
「この島のこと?」
「私とのデートを忘れるくらい楽しみなことがあったの?」
「・・・・・あった」
「何?」
少しきつめに問いただせば、
エースがポケットから何かを出した。
「・・・・これ」
「・・・・これ、って」
私が欲しかった宝石の原石だった。
レアものだから手に入ることはないだろうって諦めてたもの。
「この島にあるって聞いたから絶対手に入れてやるってずっと思ってたんだ」
そしたらデートのこと、すっぽり抜けてた。
と俯くエース。
「・・・もしかして私にくれるつもりで?」
「当たり前だろ。ホントは加工してもらってアクセサリーとかにして、って思ってたんだ」
こんな形になっちまってごめん。
・・・ごめんを言わなくちゃいけないのは私の方だったなあ。
だって結局エースは私のことを思ってくれていたのだから。
「・・・ごめんなさい、てっきり浮気でもしたのかと思ってた」
「デートすっぽかしたんだから俺が悪い」
「じゃあお互いさまってことで仲直り、しない?」
「・・・してェ」
お互いに握手。
これで仲直り完了。
「なァ明日も時間あるよな?明日こそデートしようぜ?」
「んー・・・・」
「・・・嫌か?」
「コレ私にくれるんでしょう?」
宝石の原石。
「勿論だ」
「ならこれ自分で加工してみたい」
「・・・面白いのか、それ」
「面白いと思う!」
「んじゃあ俺もやる」
「有難うエース」
もう、置いて行かないでね。