短編⑤
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毎朝、起きる度に思う。
今日会社行ったら会社が爆発してたらいい、と。
それくらいには嫌いだ。
仕事が。
でも仕事以上に嫌いなのは、
「おぉーい酒足りないぞぉ!!」
「どうぞ」
「・・・・注文してくれよ」
飲み会だ。
仕事ならまだお金が発生するから良い。
多少嫌なことがあっても我慢出来る。
でもこれは。
・・・飲み会というやつはお金が発生しないどころか、
出て行くのだ。
しかも何故か私に注文しろだやれ酌をしろだとゆっくり飲めもしない。
冗談じゃない。
酒が足りないと喚く部長の前に注文する機械を渡してあげた。
「やり方わからないならご教授して差し上げますが」
「なんだよォつれねぇなァ」
顔を赤らめた部長があからさまに不服そうな顔。
そもそもこの飲み会だって強制参加だと言われて仕方なく来ただけだって言うのに。
飲み会なんてお金と時間の無駄でしかない。
あー・・・・帰りたい。
「よォアコ、飲んでるか?」
「・・・シャンクス先輩、私帰っていいですか?」
「なんだ具合でも悪いのか?飲み過ぎか?」
私と正反対にこの飲み会を楽しんでいるシャンクス先輩。
羨ましい。
お酒が好きで、人との交流もきっと嫌いじゃなくて。
・・・仕事も出来る人。
「お金、置いておきます。足りなかったら後日請求して下さい」
「おいおい、まだメインはここからだぜ?」
「もう十分堪能しました」
「具合が悪いなら送って行くが」
「・・・そういう、訳じゃ」
こんな人に飲み会が苦手と言っても理解はしてもらえないだろうし。
かと言って何を言えば帰らせてもらえるのかもわからない。
「飲んでるのはそれか?1口もらうぞ」
「え」
止める間もなくシャンクス先輩は私のグラスを取り口にした。
私が飲めるのはジュースのような甘いものだけ、で。
「・・・甘いな。ビールは苦手か?」
「・・・はい」
ああ、だから嫌なのに。
お子ちゃまだとかなんとか言われるんだ。
「日本酒なんかどうだ?意外と甘口のもあってイケるぞ」
「・・・えーっと」
「俺の、飲んでみろ」
・・・揶揄われなかったことの意外さに驚いていたら、
今度はシャンクス先輩のグラスが突き出された。
え、待って。
さっきも間接キスしたのにまたしろと!?
「一口でいい。嫌なら吐いていい」
「・・・じゃあ、一口」
この際間接云々は気にしないことにしよう。
覚悟を決めてグラスの液体を口に含んだ。
鼻をくすぐるお酒独特の匂いは苦手、だけど。
「・・・・飲めなく、はない、です」
これが正直な感想だった。
不味くはないけど、美味しくもない。
「飲みやすいのは他にもあるぞ。無理にとは言わないが飲んでみるか?」
「いえもう大丈夫です」
シャンクス先輩には申し訳ないけどお酒はもう十分。
というか何ならもう帰りたいくらい。
「・・・そうか。ならこれはどうだ?美味いぞ」
シャンクス先輩は一瞬残念そうな顔をしたあとに、
今度は食べ物を取って私に突き出した。
・・・めげないんだよね、この人。
シャンクス先輩のこういうところは素直にすごいと思う。
「どうぞ・・・お構いなく。それなりには楽しんでますから」
でもそれはそれ。
これはこれ。
「よし、アコラーメンは好きか?」
「・・・・らーめん?」
「美味い店を知ってるんだ、これから一緒にどうだ?」
断る私にたいして気分を害した風でもなく。
「ラーメン・・・いいですね」
ラーメンは好きだ、素直に。
「よし決まりだな、金は俺が2人分払っておくから行こうか」
え、今から?シャンクス先輩と2人きりで?
・・・まあこの飲み会にこのまま居続けるよりはいいか。
「しゃいませー」
・・・・という訳でシャンクス先輩と2人でラーメン屋なう。
「・・・先輩、良かったんですか?飲み会」
「酒ならもう飲んだ。十分だ」
「先輩はああいう場所似合ってますね」
「そうか?まあ楽しんじゃいるが」
「私には楽しくないです、正直」
何で飲み会なんてあるんでしょうね。
ぽつりと呟けば、
「そりゃあこういうことがあるからだろうなァ」
としみじみとシャンクス先輩が答えてくれた。
「こういうこと?」
「仕事中じゃゆっくり話しも出来ねェだろう?」
「・・・必要ですか?ゆっくり話すことが」
「人となりを知ることで仕事も円滑に進むこともあるしな」
「・・・はあ」
まあそれは否定しない、けど。
「それに上手くいけば弱みも握れる」
「怖っ」
「だっはっは!なぁ、悪くないだろう?」
「そう・・・ですかね」
「何よりこうして好きな女と2人でゆっくり出来てる」
「あーなるほ・・・・・・ど?」
今いい笑顔でなんて言ったこの人。
「悪いなァ今日の飲み会強制参加にしたのは俺だ」
お前か!!
「もう勘弁して下さい・・・」
「となると、今日で決着つけねェとだな」
「決着?」
疑問を口にしたところでラーメンが到着した。
「いっただきまーす」
スープを口に含んだところで、
「そのラーメンが美味かったら、今度俺とデートしてくれないか?」
「・・・・ってそれ今言うのズルいです」
だって私スープだけでも美味しいと思ってしまった。
「で、どうだ?」
「・・・・美味しいです」
はめられた。
「よし、決まりだな」
「食事が美味しくなかったら速攻帰りますよ」
「ああ、それでいい。っと、そうだ。肝心なことをまだ言ってなかったな」
「・・・何でしょう」
待ちきれないと麺をすすったら、
「好きだ」
「・・・・・・・・っですから何でそれを今・・・っ」
言うのかと!!
「俺と付き合うなら仕事のフォローも今まで以上にするし、飲み会ももう参加しなくていいぞ」
「・・・・とりあえずお返事は次のデートで!!」
今はラーメン堪能させてください!
・・・・・まあ、
今回の飲み会は出て良かったかも、しれないけど。