短編⑤
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エースと喧嘩した。
もうすぐ島に着くのに。
・・・・着いたらデートしようねって。
約束してたのに。
エースの馬鹿。
最低。
モビーが島に着いてすぐ私は1人で船を降りた。
もうエースなんて知らない。
1人で降り立った島は広くて開放的で、
そこそこ賑わってる。
・・・1人でも。
エースが居なくても寂しくなんかない。
「よっお姉さん1人かい?一緒にどうだい?」
「間に合ってまーす」
目に入る美味しそうな食べ物。
でも島に着いたのが昼過ぎだったからお昼ご飯はモビーで済ませて来ちゃった。
・・・・ああ、でも。
エースが居たら。
絶対食べてたな。
きっとまだ食えるだろ、って私も付き合わされた。
可愛いアクセサリーも。
エースが居たらこれが似合うとか似合わないとか、
アドバイスしてくれてたかもしれないな、なんて。
ああ駄目だなあ。
私エースに怒ってるのに。
この間、私とエース付き合って1年の記念日。
私の部屋で待ってるね、って。
・・・一生懸命お洒落してご馳走作って、待ってたのに。
来なかった馬鹿エース。
でも忘れられるはずなくて。
結局これエースが好きそうな味だなあなんて思いながらカフェでケーキを食べてふらふら。
あっという間にいい時間になったので、
良さげなバーに入ってみた。
「マティーニを」
「かしこまりました」
1人でゆっくりと飲んでいたら、
「スクリュードライバーを彼女に」
と隣に突然男性が座って来た。
「いえ、私は・・・」
「この店は初めて?俺詳しいから任せてよ」
そんなに長居するつもりもないからマティーニを頼んだのに。
面倒だけど揉め事を起こす訳にもいかない、と大人しく会話に付き合うことにした。
「恋人は?」
「居ますけど・・・今喧嘩中で」
「こんな美人を1人にするなんて最低だね、その彼」
「最低には違いないですけど、今は私が勝手に1人で出て来ただけなので」
「まあそんな彼は忘れて飲もうよ。ほら、次はルシアンなんてどう?美味いよ」
早く飲み終えて帰ろうと早々に空になったグラスを見て男性は次の注文を勝手にしてしまう。
「生憎ですがもう出ないといけませんのでこれで失礼します」
「マスター、彼女にルシアンを」
こんの野郎。
思わずそんな言葉が出て来そうになって口を噤んだ。
せめてもの抵抗と睨みつけたのを何か勘違いしたのか、
「心配しないで?ここは僕が出すからさ、勿論」
そんな心配はしてない。
ていうかさっきから強いお酒ばっかりじゃないのこれ。
「さあほら、飲んで」
・・・・・どいつも、こいつも。
「・・・・・・ご馳走様でした!」
腹が立ったので出されたルシアンを一気飲みして立ち上がった。
「いや、ちょっ、待っ」
男の声を無視して店を出ようとした瞬間、
「これ美味いぜ、食っとけよ」
いい加減しつこいと拳を握って振り返って。
「え・・・・」
思わず声が出た。
「ちなみにコイツ、すげェ酒強ェから潰そうとしても無駄だぜ、兄さん」
「エース・・・・」
さっきまでしきりに私にお酒を勧めていたお兄さんはエースを火拳のエースを認識したらしく、
さっきまで赤らんでいた顔を真っ青にして、
「こ、恋人ってひけ、・・・・ひぃぃ!!」
逃げるように出て行った。
「お金が逃げた!!!」
散々飲みたくもないお酒飲ませておいて!!
「んじゃあ俺が出すから一緒に飲みませんか、お嬢さん」
エースは少し気まずさそうに私を誘う。
「・・・お金持ってるの?おにーさん」
「恋人に美味いモン食わせるくらいの金は持ってるっての」
仕方なくエースの隣に腰を下ろした。
「へぇ・・・っていうかいつから居たのよエース」
「お前が入ってくる前からここで飲んでたんだよ。つーかお前こそほいほい飲んでんじゃねェよ」
「飲まされたの。見てたならわかるでしょ」
「どう考えても下心しかなかっただろうが、飲まずに帰れよ。・・・あんま心配させんな」
「約束守れないような人に言われたくありませーん」
「・・・・それは、悪かった。反省してる」
「ほんとに?」
「どんだけモビーん中探してもアコ居ないし・・・滅茶苦茶焦ったんだぜ」
「それでこんなとこで1人で飲んでたの?」
「飲んでたっつーか食ってた。ほらこれ食えよ、美味いぞ」
突き出されたフォーク。
「・・・・・ん。美味しい」
フォークに刺さった生ハムのいい塩加減。
美味しい。
「・・・っていうか見てたんなら助けてよ」
「頃合い見て助けるつもりだったんだよ」
「ホントかなあ」
「当たり前だろ、あんな奴にアコを触らせてたまるか」
「・・・・・・ねえ」
「・・・何だよ」
「何であの夜来なかったの?」
結構な言い合いの喧嘩をしておいて肝心なことを聞いてなかった。
「行こうとしたんだよ俺は。いつも通りのカッコで」
「別にいいけど、いつも通りで」
「したらサッチが記念日にそのカッコじゃ駄目だとか何か食わないと寝るから食ってけとかうるさくてよ」
「・・・・・で?」
「食ってるうちに寝ちまった」
「・・・・・・・・馬鹿」
諸悪の根源はサッチさんだったのか・・・!
「悪かった、反省してる。だから・・・もう他の男んとこになんか行くな」
「行かないよ」
エース以外の人のところになんか。
「でもお前さっきの、」
「お酒が勿体なかったから飲んでただけ。エースもさっき言ってたでしょ?私お酒強いから」
確かに強いお酒ばかり飲まされてたけど、
これくらいじゃ軽く酔った程度。
「駄目だ」
「えええ・・・・」
「他の男からの酒飲むの禁止」
「そうね、私もエースと一緒に飲んだ方が楽しい」
「・・・やっぱ酔ってんじゃねェか」
「好きな人が隣に居たら酔うものでしょ」
「・・・・ったく」
エースの肩に頭を乗せる。
「・・・・明日、やり直しさせてくれねェか」
「記念日の?」
「俺だって色々考えてたんだぜ、これでも」
「・・・いいよ」
「んじゃまあ、とりあえずこれ」
これ、と渡されたのは。
キラリと光る赤い宝石のネックレス。
小粒だけどその存在感は確かなもので。
「・・・素敵」
「アコ。これからも・・・俺の側に、居てください」
丁寧に下げられた頭。
「喜んで」
やっぱり酔ってるのかもしれない。
顔をあげた彼の頬にキスをしたのはお酒のせい。
ってことで。