短編⑤
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彼が君の敵だったらどうする?
停泊していた島の男性にふとそんなことを言われた。
・・・彼、とはお頭のことだろう。
お頭が私の敵だったら?
そんなこと考えたこともなかった。
いくらお酒の席とは言えここは怒るべき?
それとも真面目に答えるべき?
「・・・お頭が敵、それは怖いですね」
考えて私は後者を選んだ。
当のお頭は同じく島の女性たちと楽しそうに飲んでいる。
「大丈夫僕が守ってあげるから」
なんてにこにこ笑う男性はとてもじゃないけど頼りなさそう。
いやホントは強いのかもしれないけど。
「いや無理でしょ、相手四皇ですよ」
でも彼がどんなに強かろうとお頭に敵うとは到底思えない。
「いいや、必ず守る。だからこの島に残って僕と暮らさないか?」
その自信は何処から!?
とツッコミはあえて置いておこう。
「お頭は私の敵だと?」
「そうだとも、君の命を狙っているんだ」
大きく頷く彼に私は苦笑を浮かべた。
「仮にそうだとしても私はお頭の隣に居続けます」
私の命が尽きるまで。
「何故!?」
「何故って・・・楽しいから」
「君に海賊は向いていない!」
「それでもあの人の側に居たいと思ってますから」
敵でも側に置いてくれるのなら。
こんなに嬉しいことはない。
まあお頭なら側に置く必要もなく私なんてすぐに消すことは出来るはずだし。
「・・・君の気持ちは、変わらないんだね」
「はい、すみません」
なんてことがあって、それからログが溜まったのと買い出しが終了したこともあり割とすぐに私たちは島を出た。
島を出て3日程過ぎた頃、
不寝番をしてる私のところにお頭が来た。
「何かありました?」
「島を出てから元気がないみてェだが」
「そうですか?」
「心当たりがあるんじゃないのか?」
・・・・はて。
「ポテトサラダがすごーく美味しかったんですけど、もう食べられないなあってことですかね」
心当たり、と言うか心残り、だけど。
「サラダが?」
「はあ。お頭食べませんでした?」
「いや、食ったが・・・そんな美味かったか?」
「玉ねぎのみじん切りの食感とか・・・再現できますかねえ、うちで」
「・・・相談してみよう」
「よろしくお願いしまーす」
確かコックさんも食べてたはずだからお願いすれば再現出来ると思う。
「俺はてっきり男の方が心残りかと思ってたな」
「男の方?」
何のことかと首を傾げる私をお頭は豪快に笑った。
「だっはっは!居ただろう?お前を口説いていた男が」
言われて思い出した。
「ああ・・・・いましたね。そういえば」
「面白いことを言われてただろう?」
「お頭が敵ってやつですか?」
「それだ。まああながち間違っちゃいないが」
「え」
笑いながら何てことを言うんだこの人は。
「・・・敵、なんですか?」
「だとしたらどうする?」
・・・私お頭怒らせるようなことしたかなあ。
「まあ、だとしても特にどうもしませんが」
「いいのか、しなくて」
お頭が不思議そうに目を丸くする。
「流石に命の危機を感じたら抵抗くらいはするでしょうけど」
抵抗したところで敵うとも思わないし。
「というか」
「・・・というか?」
「お頭聞いてたんですか?」
「聞こえてたのさ、たまたまな」
「お頭だって島の可愛い女の子達ときゃいきゃいしてたくせに」
「生憎と耳はいいんだ」
「・・・・まあ、敵でもいいです。側に置いてくれるなら」
「ほォ、嬉しいこと言ってくれるじゃねェか」
そうして目を細めて私のことを愛おしそうに見て来るお頭。
・・・こんな人が敵なはずない。
「それだけお頭を尊敬してるんです」
「尊敬、か」
「・・・何か不服ですか?」
「尊敬も悪くはないが・・・俺はそれだけじゃ満足はしねェ」
「えー・・・・神と崇めればいいですか?」
「面白いこと考えるなァ・・・だが神には興味ない」
「・・・じゃあ何ですか」
いい加減苛々して来た。
そんな私を感じ取ったのか、
「いつか・・・アコの邪魔をすることになるかもしれないってことだ」
「・・・邪魔?お頭が?」
私が足手まといだっていうならわかるけど。
お頭が私の邪魔?
洗濯物干してる時にひっついてくるとか?
それは邪魔だけども。
「寝てる時に邪魔しなきゃいいです」
「いいのか?・・・アコの恋路の邪魔をしても」
「ふはっ、出来るものならどうぞ?」
予想外の言葉に思わず笑ってしまった。
どうせ私の恋の行方を決めるのはお頭だもの。
「私は私なりに頑張るだけです」
「・・・参った、そんな顔見せられちまったら邪魔は出来ねェぜ」
「あらあら随分弱い敵さんですこと」
お頭は片手をあげて降参のポーズ。
その様子が可愛くてくすくす笑うと、
「惚れた女にゃ弱くもなる」
とお頭も笑った。
「え?」
「ん?」
「惚れ・・・・・・・え?」
「言ってなかったか?・・・まあ、そんな訳だ」
悪いが応援は出来ないぞ、とお頭は私の頭を撫でた。
「・・・・ご心配なく。私の敵はいつだって私です」
いつまでもお頭のことを好きですと言えない、
臆病な私が。
私の敵で。
・・・・・シャンクスは、
私の恋人になりましたとさ。