短編⑤
夢小説設定
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「アコ今好きな人居ないのー?」
会社でランチ中。
女子ばかりなのでまあそんな話題になるのも当然。
「今は居ないかなあ」
「今は、ということは!」
そう。
最近までは確かにいたのだ。
好きな人が。
・・・・言ってしまえば今でも好き。
ただ最近事情が変わった。
その人が既婚者であるということが発覚したからだ。
「フられた訳じゃないからね!」
「ふーん。ま、いいけど」
・・・実質失恋ではあるけれど。
・・・好きだったんだけどな。
シャンクス先輩の奥さん見た?
綺麗な人だったねーなんて騒いでる女子社員の話しさえ聞こえなければ。
まだ夢を見ていられただろうか。
いや、いずれはわかったことだよね。
大丈夫。
諦められる。
・・・そう、思っていたのに。
「アコ、飯食いに行かないか?」
「え、あ・・・・・・・はい?」
「・・・・どうした?」
シャンクス先輩からのランチのお誘い。
いや、まあ・・・普通だよね?
「先輩お弁当とか、は」
奥さん作ってくれないんですか。
とは言えない。
「弁当?買ってねェし持ってきてもいねェな」
「ですよねー・・・行きましょう」
ご家庭の事情はそれぞれだし。
近くのカフェでランチに来て、
テラス席に座った。
2人仲良くパスタセット。
ちらりと先輩の手を見る。
大きくてごつくて、男の人の手だなあって感じ。
・・・でも、指輪、してない。
指輪はつけない主義なのかな。
どんな言葉でプロポーズしたんだろう。
どんなシチュエーションで。
どんな顔で。
・・・・ああ、駄目。
私には知っても仕方のないことだ。
不意に先輩のポケットから紙が落ちたのが見えた。
「あ・・・・」
拾って手渡すと、
「すまんすまん、鞄に入れときゃ良かったんだが」
「・・・・招待状、ですか?」
「後輩の結婚式の招待状をもらったまま入れてたんだ。部署が違うからアコは知らない奴かもしれねェな」
先輩の口から出て来た名前は知らない名前だった。
「結婚式、かあ」
先輩はもう式挙げたのかな。
それともやらない感じ?
・・・・だって私呼ばれてないし。
「アコは居ないのか?そういう相手は」
「居ない、です」
「アコがドレス着たら似合うだろうなァ」
「先輩もタキシード似合いそうですね。あ、でも先輩なら和装も」
「いいなぁ、アコが隣に立ってくれるならどっちを着てもいい」
「・・・・何言ってるんですか」
貴方の隣に立つのは私じゃないでしょう。
ああもう何でこんな悔しい気持ちにさせられなきゃいけないの。
「アコ」
「え」
す、っと突然シャンクス先輩の手が伸びて来て。
「ついてる」
と私の頬を掠めて、
そのまま自分の指をぺろり。
・・・どうやらパスタソースがついていたみたい、だけど。
「駄目ですよ先輩、そんなことしたら」
下手に奥様に見られてたりしたら。
「ああすまん、子ども扱いした訳じゃねェんだが」
「・・・・私も、気を付けますけど」
「ところでアコ、日曜日は暇か?」
「休日出勤ですか?何かトラブルでも?」
「いや、デートの誘いだ」
なんて笑顔のシャンクス先輩。
かっと頭に血が上った。
「・・・・っ最低ですね!!」
「え」
奥さん居るのに堂々と!!
「失礼します!!」
いくら好きな人であっても。
奥さん居る人とどうにかなるなんて絶対御免だし、
ましてや向こうから誘って来るなんて最低過ぎる。
こんな人だと思わなかった。
まだ食事の途中だったけど立ち上がってお札を置いて店を出た。
「待て待て、待ってくれ」
「シャンクス先輩最低です!私そんな人嫌いです!」
「そんなに嫌われていたとは知らなかった、俺は何かしちまったか?」
後ろから追いかけて来たシャンクス先輩に追いつかれて、腕を掴まれた。
仕方なく止まって、先輩を睨み付けた。
「奥様の気持ちも考えて発言して下さい!いくら好きな人でも無神経な人は嫌いです!!」
思いの丈をぶつければ、
「奥様・・・・?誰の?」
シャンクス先輩は何故かきょとん。
「・・・誰、って・・・シャンクス先輩の奥様です」
「俺に嫁さんがいたとは知らなかったな」
そして今度はそう呟いて苦笑を浮かべた。
・・・・・・・え?
「綺麗な奥様が居るって、この間うちの会社に来たって」
「ああ、そいつはベックの嫁さんだな」
「ええええええ!?」
「おかげでヤソップと2人してお前も早く身を固めろとうるさくてな」
「そ・・・・・・・・・・・・そう、でしたか・・・・!!」
私は何て失礼なことを!!
「だからこうして惚れた女にアピールしちゃいるんだが、どう思う?」
「も、申し訳ありませんでした・・・!!」
「脈はなさそうか?」
「へ!?」
「いや・・・さっき確かに聞いたぞ。いくら好きでも、と」
「せ・・・先輩が既婚者だと思ってたのでっ諦めようと思って・・・!」
「諦めなくていい。俺はまだ独身だ。という訳でさっきの返事を聞かせてくれないか?」
捕まれたままの手。
その手が、
するりと解けて、すぐに指と指が絡んだ。
「早とちりするような私でいいんですか・・・?」
「自分の欲より人を傷つけるな、と怒ったアコだからいいんだ」
「お恥ずかしい!!」
「俺はアコを傷つけねェ。俺と結婚を前提に付き合ってくれないか?」
真剣な瞳に吸い込まれる。
ああ、なんだ。
私諦めなくていいんだ。
シャンクス先輩は私の好きなシャンクス先輩のままだったんだ。
告白されたことよりそれが1番嬉しかった。
・・・・なんてね。
「私で良ければ、喜んで」
心から笑って、
お返事が出来ます。