短編⑤
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今幸せですか?」
不意にそんな言葉を投げかけられて、
「え、はい。幸せです」
と何も考えずに答えてしまった。
・・・大学の同級生であり恋人であるエースとデートの待ち合わせ。
少し早く来ちゃったな、なんてぼーっとしてた矢先のこと。
にこやかな女の人が近づいて来たと思ったら。
「それは何より。貴方が今幸せなのは誰のおかげだと思いますか?」
「私ですね」
即答した私に女性の顔が歪んだ。
「いいえ、あなたが今幸せなのは神のおかげなのです」
「・・・・いえ、私のおかげです」
これだけは譲れない。
「本当にそうですか?よく考えて見てください」
「確かに元は私じゃないかもしれません。でもたくさんの人のおかげです」
「いえ、人ではなく、」
「俺のおかげだよな!」
「あ」
強い声音。
ぐい、と引き寄せられた肩。
「よくわかんねェけど」
な。
と無邪気な笑みに隠された強い視線。
「・・・・だね」
「この世界は神が、」
「この服も靴もバッグも作ってくれた人に感謝してます、大切にしまーす」
「んじゃ誰かが作ってくれる美味い飯食いに行こうぜ」
「失礼しまーす」
って手を繋いで走ること数分。
「悪いアコ、遅くなっちまった」
「ううん、私が早く来ただけ」
「・・・・で、今の何だったんだ?」
「私が今幸せなのは誰のおかげかって話し」
「ああ、それでアレか」
「そ。だから私のおかげって答えたの」
「・・・俺じゃねェのかよ」
不服そうなエースに苦笑したところで、
「勿論エースのおかげでもあるけど、最終的には私のおかげ」
「・・・は?」
「私が幸せになりたいって努力した結果だもの。あ、ほらエース。ご飯食べよ?」
「・・・おう」
お肉の良い匂いがする定食屋さんに入った。
私は注文したパスタを食べ終える頃、
隣のエースは顔をお皿にツッコんで寝てる。
・・・この寝顔を見るのも、幸せ。
そして起きたエースに、
「寝てた!」
「知ってた。はい」
ハンカチを渡す。
「さんきゅ」
・・・嬉しそうなエースのこの笑顔を見られるのも、幸せ。
「すっごい幸せそうな寝顔だった」
「幸せだからな」
「美味しいもの食べられて幸せだよね」
「・・・だけじゃねェけど」
「だけじゃない?」
少しだけ顔を赤くしたエースがぽつりと、
「隣にアコが居るからだよ」
と呟いた。
・・・ああ、あやっぱり私は幸せだ。
「私が今エースの隣にいるのはエースがカッコイイからだよ」
「・・・何だ急に」
「今までエースが頑張って生きて来てくれたから。私に出会ってくれたから」
そしてそれは私も同じで。
エースに愛される努力は惜しまない、
自信をもって側にいられるように。
だから今幸せなんだと思える。
「・・・俺は、やっぱアコのおかげだとしか思えねェ」
「・・・・そう?」
「アコが俺の側に居て、好きだって言ってくれるから俺は幸せなんだ」
「・・・もしもエースが、私よりいい女がいるはずだ!って思ってたら幸せなんて思えてないよね」
「居るはずねェからな」
「エースのそういう気持ちが、今のエースの幸せを作ってるんだよ」
「そんなもんか?」
「そんなもん。誰かに感謝することも大事だけど自分が頑張ってることを1番に認めるべきだよ」
「・・・・ごちそーさまでした」
「映画までまだ時間あるけど、どうする?」
「この間見たいって言ってた店あったろ?」
「行っていい?」
「当たり前だろ?行こうぜ」
「ありがと、エース」
前に行きたいって言ったお店を覚えててくれた。
優しいエースに胸がきゅん。
こんな瞬間にも幸せだなあと思える。
「・・・やっぱり、よ」
「うん?」
会計を済ませて手を繋いだ瞬間エースが言いづらそうに口を開いた。
「やっぱ俺が幸せなのはアコのおかげだわ」
「え」
「こんな俺にしてくれたのも、幸せって思わせてくれてんのもぜーんぶお前のおかげだし」
「あ・・・・・ありがとう」
「いつもありがとな」
満面の笑みを向けられて、
顔は熱いしなんて答えたらいいかもわからないし。
・・・ただ1つ言えるのは、
エースには敵わないってこと。
「・・・・エース、大好き」
・・・・幸せ、だなあ。