短編⑤
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恋人のシャンクスと結婚してもう2年。
子供こそいないけど、まあ何とか上手く暮らせてると思う。
子供はまあ、出来ればいいとは思うけど出来なくても気にはならない。
・・・・シャンクスがでっかい子供みたいなものだしね。
「さて、と」
今日の夕飯は・・・お隣さんから立派な鯛をもらったから捌いてお刺身にでもしますかね。
それからお肉は焼いて塩コショウでいいわね。
なんて台所でお夕飯の支度をしているところに、
ちらりと緑のものが視界に入った。
床の隅。
「・・・・・これは」
何気なく覗いてみればそこにいたのはカエル。
まごうことなきカエル。
あらカエル。
・・・・・食用、じゃないわよね。
捌けるかな。
いや捌けたとしても毒あるかもしれないし。
・・・・やめとこ。
「ふ、命拾いしたわね」
食べれないカエルに用はないわと視線をはずした瞬間。
「だっはっは!カッコイイな!」
「・・・やだシャンクス、帰ってたの?」
スーツを着たシャンクスが大笑いして立っていた。
「さっきな。ちなみにこいつは俺が回収する」
「逃がすの?」
シャンクスはカエルを摘まむと、
「これを見てもまだわからねェか?」
「え?」
「こいつは偽物。玩具さ」
「・・・・なんだ、じゃあ悩む必要はなかったわね」
「悩んだのか?」
「そりゃあね。食べれるかしらって真剣に悩んだわ。数秒無駄にした」
「恐ろしいな。参った」
「つまらない悪戯してないで、さっさとお風呂入っちゃって」
「そうさせてもらうか」
「行ってらっしゃい」
シャンクスは降参、のポーズをしてくるりと背を向けた。
シャンクスがお風呂に入ってる間にお味噌汁を作って、それから。
「すまん、忘れ物をした」
「え、なに?」
不意に唇を奪われた。
「ただいまアコ」
「・・・・おかえり」
・・・・はあ、もう本当に。
恥ずかしいったらありゃしない。
玩具のカエルに命拾いしたわね、なんて言っちゃった。
シャンクスは度々こういう悪戯をする。
私を驚かせたいらしいんだけど、
迷惑極まりない。
「頂きます」
「今日も美味そうだ、いだきます」
「ところでカエルの玩具、どうしたの?」
「驚いてくれるかと思って買ったんだ、今時は100円で何でも揃う」
「驚いたけど」
「そうは見えなかったな。虫もホラー映画も平気。アコは何なら驚いてくれるんだ?」
「・・・・・・驚いて欲しいの?怖がって欲しいの?」
「両方だな」
刺身を美味そうに頬張りビールで流し込むシャンクスは笑顔で言い切った。
驚いたことなら今まで何回もあった。
何なら今シャンクスと結婚して生活してるこの状況が1番の驚きだ。
怖い物・・・虫は仕留めることが出来るし、
幽霊はそもそも出会ったことがないのでわからない。
「怒ったシャンクスは怖いけど」
「アコに本気で怒ったことはあまりないつもりだが」
「私にじゃなくて。1度あったでしょ、しつこいナンパに遭遇した時」
まだ結婚前に、シャンクスが居るにも関わらずそりゃあもうしつこいナンパに遭遇したことがあった。
その時のシャンクスと言ったら。
『失せろ』
とひと睨みで退散させた。
それ程に怖かった。
「俺の可愛い妻に手を出そうとする奴には容赦はしない。問題あるか?」
「ありません。そう言う意味では人は怖いかもしれないわ。殺人鬼とか」
「そりゃ当然の答え過ぎてつまらねェ」
「何考えてるかわからないご近所さんも怖いわね」
鯛のお礼考えないといけないけど。
下手なもの持って行ったら裏で何言われるかわかったもんじゃないし。
「妖怪は?」
「可愛いから好きよ」
「・・・可愛いか?」
「ええ、とっても。シャンクスには負けるけど」
「・・・喜んでいいのか、それは」
「そうね・・・どうにも出来ないって意味では自然災害も怖いわ」
考えてみれば私にも怖い物はたくさんある。
地震とか火事とか。
事故も。
「まったく頼もしいなうちの奥さんは」
シャンクスが苦笑したので、
「あら、違うわよ。頼もしいのはシャンクス」
「そうか?」
「シャンクスが居てくれればたいていのことは何とかなるでしょ?だからあんまり怖いことはないの」
だから本当に怖いことを挙げるとするなら、
「シャンクスが居なくなってしまうのが1番怖いことね」
「・・・・いつも、俺の方が驚かされちまうなァ」
そう言いながらシャンクスは満面の笑み。
「驚いてるようには見えないけど?」
「十分驚かされてるさ、いつもな」
・・・なんて。
シャンクスを驚かすのは私で、
私を驚かすのはいつもシャンクス。
だったんだけど。
数日後思わぬところで私とシャンクスは酷く驚くことになる。
「しゃっ、しゃん、シャンクス!シャンクス!!」
「どうした?珍しいなアコがそんなに慌てるなんて」
「こここ、これ・・・・っ」
私の手には妊娠検査薬。
表示は、陽性。
つまり、それは。
「・・・・・・・・・・・俺達の」
「・・・・・・・・・赤ちゃん」
これに私は言葉を失って、
「だっはっはっは!!そうか!!」
シャンクスは笑った。
驚き方も人それぞれ。
きっとこれからこのお腹の子にたくさん驚かされるんだろうけど。
シャンクスが居れば大丈夫。
その気持ちはきっと、一生変わらない。