短編⑤
夢小説設定
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夜1度目が覚めたら、何だか眠れなくなった。
夜の海が見たくなって、甲板に出た。
・・・・・・変なの。
海も、波の音も。
いつも見てるし、聞いてるのに。
暗くて深い海。
・・・・・・・・・・・何か、
吸い込まれそう。
「アコ?」
「・・・・・エース?」
急に後ろから声をかけられて、
驚いて振り返ってみればそこに居たのは不自然な程頬が膨らんでいるエース。
「・・・・聞いてもいい?」
「んあ?」
「もしかしてエース・・・冷蔵庫の物ツマミ食いしてた?」
エースはしばし、むぐむぐと口の中のものを咀嚼してから、ごっくんと飲み込んだ。
「腹減って眠れなくてよォ・・・サッチには内緒な?」
口にものを入れたまましゃべるな、と普段から教育していたおかげか彼も少しは成長したようだ。
「内緒・・ってもすぐバレると思うけどね。黙っててあげる」
「サンキュアコ。で、アコは何してたんだ?」
「眠れなくなって、夜の海でも見ようかなって思って」
「夜の海?そんなもん見ても腹は膨れねェだろ?」
「・・・いや、お腹すいてる訳じゃないから」
彼の思考はすべて食べ物に向かってしまうのか。
「何か悩み事か?」
「んーそういうんじゃないんだけど。海が見たくなって」
「海?んなもんいつでも見てんだろ?」
エースの当然の質問に苦笑する。
「そうなんだけどね。海、好きだからかなあ。見てて飽きない」
「そんなもんか?」
「今もね、なーんか吸い込まれそうだなあって」
エースが声をかけてくれなかったら落ちてたかもしれないなあなんて思ったら、ふと疑問が湧いてきた。
「ね、エース。私が海に落ちたら助けてくれる?」
素直にそれをぶつけてみれば、エースは目を真ん丸く見開いて驚きを見せた。
「・・・・無理だな。俺ぁ能力者だし、泳げねェ」
「うん、そうだね」
「でも、助ける。絶対ェ、どんな手を使っても」
そう言って真っ直ぐに見つめられた視線。
同時に風が吹いて、頬に当たった。
「ありがとね、エース。・・・寒くなってきたし、戻ろっか?」
「・・・・・いや、」
エースは上半身が裸だし、私より寒かろうと思ったんだけど。
「こうすりゃ寒くねェだろ?」
そしてふわりと暖かさに包まれた。
「・・・・・あったかいね、エースは」
「メラメラの実食ったからな」
「うん、でもそうじゃなくて」
メラメラの実を食べたからエースはあったかい。
でもそれだけじゃないと私は思う。
「笑顔とか、雰囲気とか。・・・空気?があったかいんだ、エースは」
「ははっすげェ口説き文句」
「うん、好きだよ」
「・・・・・え、」
「好きだよ、エース」
そう言ってエースの背中に腕を回した。
「アコ・・・?俺馬鹿だから、そんなこと言われたら本気にしちまうぜ?」
声にまで熱がこもってる。
ああ、あったかいなあ。
「本気だよ?・・・海より、エースに吸い込まれそう」
「吸い込んでやるよ、全部」
優しい声音に、あったかい身体に。
すべてを預けた。
「うん、よろしく」