短編⑤
夢小説設定
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「はあ・・・・」
真っ黒な空を見上げた。
今日は雲もないのに星も少ない。
・・・・下のざわめきをよそに、私は1人静かに見張り番。
まあ、ちょうどいいかもしれない。
このまま交代くるまでここでのんびりさせてもらおう。
・・・・・と、思ってたのに。
「んー?」
聞こえて来た音に耳を澄ませた。
それからすぐに、
ひょい、と顔を覗かせたのは。
「よォアコ」
「・・・・何か御用?エース」
悩みなんてなーんにもない、って顔のエース。
「風に当たりに来た」
「酔ってる?」
「まぁ、酒飲んだからな」
「皆結構飲んでるよね」
「久しぶりだったから仕方ねェよ」
「・・・・そうね」
久しぶりの襲撃、勝利だった。
そこそこ戦利品もあったし、皆が楽しそうにしているのは必然。
「・・・何か元気ねェな?」
「そう?」
「どっか怪我したのか?」
「ううん、してない」
「じゃあ具合悪いか?」
「夢見が悪いこと以外はいたって健康よ」
「夢見が悪い?」
「滅茶苦茶悪い」
そう、最近悪夢ばかり見る。
だから今日は不寝番でラッキー、くらいに思ってた。
お酒も飲まなければ眠くもならないし。
「腹とか胸に手があると悪夢見るとか言うよな」
「らしいけど、手は脇にある」
「何か悩んでるとか」
「悪夢に悩んでる」
「疲れてるんじゃねェ?」
「疲れる程働いてないと思う」
「念のため明日1日休みもらってみろよ」
「えー・・・・」
「俺から言ってやるから」
「・・・じゃあ、うん。そうしようかな」
自分で疲れてるとは思ってないけど、
思ってないだけで実は疲れてるのかもしれない。
「ってことは寝れてねェ訳だ」
「そう」
「今日は俺が代わってやるからもう寝ろよ」
「有難い申し出だけど・・・大丈夫」
「大丈夫って顔してねェけど」
エースは優しいなあ。
「だって寝るのが怖いんだもん」
「あー・・・・まあそっか、そうだよな」
「情けないよね、怖い夢見るのが嫌で寝たくないなんて」
私のそんな泣きごとにエースは至って真剣な顔で、
「夢の中までは助けに行けねェからなァ」
と呟いた。
・・・・胸が、締め付けられた。
「助けに来てくれるの?」
「当たり前だろ?行けるモンなら行って助ける」
「・・・あったかいねえエースは」
「火だからな」
「あははっ、体温もだけど」
心も、だよ。
不意にぎゅ、と肩を抱き寄せられた。
「え・・・・エース?」
「アコ、見て見ろよ上」
「うえ?」
言われた通り上を見上げる。
「キレーだろ?」
今度は満面の笑みで私を見つめる、エース。
見上げた空にはいつの間にか満天の星が見えた。
さっきは星なんか全然見えなかったのに。
「・・・・綺麗」
星は綺麗だし。
あったかくて優しいエースが側に居てくれて。
・・・・なんだか。
「・・・眠そうだぜ?」
「・・・・ん、眠くなった」
「ここで寝ちまえよ」
「・・・・いい、の?」
瞼が重くなってきた。
エースが居てくれるだけで、
寝るのは怖くない。
「こんだけ近くにいりゃ夢の中でも助けるに行けるかもしれねェし」
「・・・・・・ありがとね、エース」
エースが助けに来てくれるなら怖いことなんか何もないわ。
ああ、でも寝る前にエースに伝えないといけないことがある。
今言わないと。
「いい夢見れるといいな」
優しく頭を撫でてくれるエース。
顔を見れないのが寂しいけど開けていられなくて目を閉じた。
「ね、エース」
「ん、どした?」
「エースのこと、好き」
「・・・・は?」
「だからずっと側にいてね」
そしたらきっと悪夢にうなされることはないから。
「は?いやおま、え、す、え?」
慌てたようなエースの声を聞きながら。
「・・・・・っておい、嘘だろアコ・・・」
私は意識を完全に手放した。
寝てる間エースはずっと私と手を繋いでくれていて。
エース曰く、
「それが答えだ」
そうです。
それから悪夢にうなされることはなくなりました。