短編⑤
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いー天気。
甲板に出ると青空が気持ちいい。
このままこの天気が続けばいいんだけど。
・・・・ただでさえ今の私の体調は、
この天気とは正反対だから。
「・・・・うぇ」
「水、いるか?」
「・・・・お頭」
気が付けばいつの間にか後ろにお頭が居て、
私に水を手渡してくれた。
「すみません・・・」
「二日酔いか?」
「いえ、三日酔いです」
「だっはっは!すまん!」
肝心なところを訂正すれば、お頭は豪快に笑った。
もらったお水を飲みながら空を見上げた。
「あー・・・・・」
「まだ寝て置いた方がいいんじゃないか?」
「大丈夫です。・・・・と思ってたんですけど」
「けど?」
「もしかしたら、そうなるかもしれません」
「と、いうと?」
「気圧が下がってます」
「一雨来るか」
「と思います」
気圧の変化にも割と敏感。
海賊に向いてるんだか向いてないんだか。
「よし、添い寝してやろう」
「遠慮しておきまーす」
「酒は持ち込まないつもりだぞ?」
「当たり前です!!」
「勿論冗談だ」
とお頭はにこり。
まったく何処まで冗談なんだか。
「・・・・・っ」
「おっと」
突然目眩に襲われて身体がぐらりと揺れたけど、
咄嗟に抱き止めてくれたお頭のおかげでくれた地面に衝突するような事態は避けられたらしい。
「・・・大丈夫、じゃなさそうだな」
「・・・・大丈夫です」
「はははっ、まったく想定通りの答えだ」
何とか意識を持ち直して答えたら笑われた。
何故。
「知ってるか?アコ。人に大丈夫か、と聞いてはいけないんだそうだ」
「・・・そう、なんですか?」
「だいたいの人が大丈夫、と答えちまうから、だってよ」
「・・・へえ」
「こういう時は・・・・そうだな、痛いところはあるか?」
「ありません」
「苦しさは?」
「少し・・・気持ち悪さ、とだるさがあります」
「船医に診せる、行くぞ」
思い当たる症状を口にすればお頭の真面目な顔。
「部屋で少し休めば・・・平気です」
「歩けるか?」
「歩けます。自分で部屋に、行けます」
ただでさえ三日酔いのところに急激な気圧の変化。
辛いことは辛いけど歩けない程じゃない。
「体重、かけていいぞ」
「うー・・・・すみません」
「いや、俺にも責任はあるからなァ」
「それは否定しません・・・」
申し訳ないなと思いながらも軽く体重をかけさせてもらう。
お頭はしっかりと私を支えてくれて。
「部屋、でいいのか?」
「はい」
・・・無理に船医さんのとこに連れていこうとしない優しさ。
お頭の肩を借りて無事に部屋へ戻り、
ベッドに横になった。
「・・・・・ふぅ」
「少しは良くなったか?」
「有難う御座います、おかげで少し良くなりました」
「とはいえまだ顔色が良くねェ。寝ておいた方がいい」
「私・・・完全に足手まとい、ですね」
小さく呟いたらお頭が笑った。
「珍しいな。アコが弱音を吐くっつーのはよっぽどのことだ」
そうして私の髪を優しく撫でた。
「思ってるだけならいつも思ってます」
吐かないだけで。
「例えばどんなところが足手まといか言ってみろ」
「まず強くない。戦闘に不向き。海賊なのに」
「でも歌はうまいし料理も上手いな」
「・・・体力、ないし」
「雰囲気を明るくしてくれる」
「・・・お酒に弱いし気圧にも」
「酔った姿は可愛いし気圧の変化に気づいてくれるのは助かってるなァ」
あ、駄目だ。
もうこの人には敵わない。
「あ・・・・降って来ましたね」
ぽつぽつ、と音が聞こえて来た。
「みたいだな」
「寝ますか?一緒に」
「いいのか?アコ」
弾んだお頭の声が私の心に響き渡る。
「お頭も三日酔いでしょ?」
「バレてたか」
「・・・・たまにはこんなのもいいですね」
雨の音を子守歌に。
2人でお昼寝。
(たまには三日酔いもいいだろ?)
(それはもう勘弁願いたいです)