短編⑤
夢小説設定
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「面倒臭くない君が好きだよ、だそうです」
「そりゃあまた悪い男に引っかかったもんだなァ」
「勿論お断りしました。お前が1番面倒臭いわって」
「正論だな」
苦笑するシャンクス先輩に深くため息が出た。
「私男運ないんです・・・」
「まあそもそもそういうとこに登録する奴ってのは、な」
言いにくそうな先輩の言いたいことはわかる、けど。
「でも普通の人だってきっと居ます!」
「そりゃあそうだろうが」
珍しく人気のシャンクス先輩にランチに誘われたと思ったら、
『昨日一緒に居た男は』
と聞かれたのでアプリで出会った人です、と説明。
出会うまでは普通にいい人だと思って昨日会ってみたら。
「ちなみにそいつはアコのどういうところが面倒だと?」
「えーっと、食べ方注意したりしたのと、会計は割り勘がいいって言ったことだそうです」
「・・・それを?」
「まあつまりは俺の言うこと聞いとけばいいんだ、ということですね」
「いい恰好して見せたかったんだろうな」
「気持ちはわかりますけど恰好良くないです」
「だっはっは!!その通りだ!」
・・・シャンクス先輩は、素敵な人、
カッコイイし優しいし。
男女問わず人気がある。
ランチに誘おうと思ってもだいたいは先約がある。
だからこうして一緒に食事が出来るだけでも幸せ。
・・・恋人に、なんて望んではいけない人。
「という訳で昨日会ってた人はもう縁もゆかりもない赤の他人です」
「なるほどな。恋人には見えなかったのはそういう訳か」
「・・・見えませんでした?」
「随分と渋い顔をしてたからな」
「・・・私が?」
「相手の男は楽しそうだった」
「途中までは、です」
「まあそう気を落とす必要はねェさ。出会いなら他にもあるだろう」
「そりゃあ先輩はよりどりみどりでしょうけど」
「そうでもないぞ」
「・・・・そうですか?」
シャンクス先輩は驚く私に苦笑して、
「意外と本命には相手にされねェのさ」
本命居たんだ!?
そっちにびっくり。
「先輩に靡かない女性も居るんですね・・・」
「人生うまくはいかないもんだ。ま、諦めちゃいないが」
「・・・私も」
先輩みたいに自信があったら。
美人でスタイルが良くて。
仕事が出来て。
・・・そしたらきっと。
こんなに必死に恋人になってくれる人を探すことなんてなくて。
好きな人に好きって言えたのかな。
諦めない、って。
・・・・言えたのかなあ。
「・・・私も、の続きは?」
「あ。えっと・・・・・私も、諦めないで頑張ります!」
「・・・・そうか」
・・・少しの沈黙の後そうか、と言ったシャンクス先輩は少し寂しそうに見えた。
諦めの悪い女だなって呆れられちゃったかな。
「す・・・すみません」
「いや、謝ることはねェだろう。・・・身近に好きな奴とかはいないのか?」
「居・・・・・ます」
居るには居る。
目の前に。
でもこの気持ちは憧れとか恋とかいろんなものが入り混じっていて。
・・・何より、恐れ多くて。
とてもじゃないけど好きですなんて言える人じゃない。
そんな私の様子を感じ取ったのか、
「それは・・・不毛な恋、ってやつか?」
「まあ、そんなとこです」
少し気まずさそうなシャンクス先輩。
「相手に恋人・・・もしくは伴侶が居るとなると限られてくるな」
そしてそう言って考えるように顎に手をやった。
「かかか考えないで下さい!!」
「うちは俺も含め独身が多いからな」
「・・・先輩ぃ」
ああっ誤解されている!!
「浮気するような男はやめておいた方がいいぞ、と言っておこう」
「当たり前です!!」
「そのうち離婚する、なんてもってのほかだ。だいたいは嘘だからな」
「奥さんを裏切るような人を好きになったりはしません!!」
「・・・・となると」
「特定しようとしないで下さいっ!!」
必死に叫ぶ私を先輩はじっと見つめて来る。
「・・・な、なんですか」
ぐっと近くなった顔にドキドキ。
「気になるなァ」
そして先輩はニヤリ。
「せっ先輩こそ・・・」
「俺が?」
「・・・先輩の本命さんて、誰、なんですか」
馬鹿だな私。
自分で自分の傷を抉ってる。
好きな人の本命なんて聞きたくなかったなあ。
「誰だと思う?」
「・・・・不毛な恋?」
だったらいいな、なんて駄目な私。
「ある意味ではそうかもしれないな。脈はなさそうだ」
「そう、なんですか・・・」
内心ほっとしてる、なんて絶対言えない。
「・・・協力してもいいぞ。アコの恋」
「へ?」
「ただし条件つきでな」
「な、なんでしょう・・・」
協力してくれる時点でもう無理だと思うんだけど。
「フられたら俺と付き合ってくれ」
「・・・・・・・・・・は?」
「ああ、フられる前提で話すのは失礼だったな。すまん」
「いやいやそういうことじゃないです。え?」
「出来る限り協力はさせてもらう。が、それでも駄目なら諦めて俺にしてみないか?」
「え・・・・・・じゃ、じゃあ協力して下さい」
「よし、交渉成立だな。それで、相手は?」
「め・・・・・・・目の前、の」
「・・・・目の前?」
「・・・シャンクス先輩と、付き合いたい、です」
「・・・・・そりゃあ何よりだ」
酷く驚いたあとのシャンクス先輩の満面の笑み。
・・・・・・1番面倒臭かったのは、
素直になれなかった私だったようで。