短編⑤
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「なんだアコ、今日はカシラと一緒じゃねえのか」
新しい島に着いた日。
怪訝そうに私に問いかけたヤソップさんは、
見張り番。
「・・・・今日は一緒に行けないんだ、ごめんなって」
島に着いた日はほぼ必ずお頭と町を見て回る。
別に約束とかはしてなかったけど、
何となく暗黙の了解だった。
・・・・・・でも、今日は。
お頭は居ない。
1人で行ってしまった。
その上、
『お前は船から降りるなよ』
だそうで。
誰かと一緒に、と思ってたのに、
『俺以外の男と行くのも駄目だ』
・・・・・・・・・・って、この船男の人しか居ないんですけど。
「珍しいな、お頭がアコを置いていくなんて。・・・・さては」
意味ありげににや、とヤソップさんは笑った。
「・・・・・・・何ですか?」
「女と会ってたりして」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「お頭も男だからなー色々あるだろ」
「・・・・・・・・・・・お頭が」
女の人と会う為に、
私を置いていった?
「・・・・・・・・アコ?いやいや、冗談だぜ?お頭がお前以外の女にちょっかい出したりしねェだろ」
「・・・・・女の人、かあ」
「いや、アコ?冗談だからな?」
慌て始めたヤソップさんをぼーっと見てたら、
「あれ、アコ?お前何でここに居るんだ?」
「え?」
町に行ったはずのクルーが船に戻ってきていて、
私を見て驚いた顔をしている。
「さっきまでお頭と居たろ?」
「・・・・・・・・・私ずっとここに居ましたけど」
「え、でもさっきお頭が女と」
「ここに居ました」
「・・・・あれ、アコじゃなかっ、」
「居ました」
「・・・・・・・・・・悪い」
その人は真っ青な顔で逃げるように走って行った。
直後にヤソップさんと目が合って、
「・・・・・・ヤソップさんすごーい」
ぱちぱち、と手を叩く私に、
「目笑ってねーし棒読みだし怖ェよ」
やっぱりヤソップさんも慌てたように私の前から消えた。
・・・・・・・・・・・ふんだ。
「今日はいい子にしてたか?アコ」
夜に帰ってきたお頭はとってもご機嫌で私の部屋にやって来た。
「・・・・してたんじゃないですか」
「何だ、拗ねてるのか?」
「別に」
「アコ、明日は一緒に回ろうな」
「・・・・・・・・別に、いいです。私明日も部屋でごろごろしてます」
さっきから目も合わせようとしない私に、お頭は困ったように笑って私の髪を撫でる。
・・・・・・・・・わかってる。
私、子供だって。
馬鹿だなあって。
別に・・・・私とお頭はどういう関係でもない。
手を繋いだり、
たまに抱きしめられるだけの(それも一種のからかい)、
ただの、
船長といちクルー。
それだけだし。
「・・・・そんなに怒ってんのか?」
「・・・・・・・・・・・どんな人なんですか?」
「・・・・・何の話しだ?」
怪訝な顔のお頭に一瞥をくれて、
視線を床に戻した。
「今日、一緒に居た女の人」
「お前、見たのか?」
「私じゃないです。・・・・・見た人が、いただけで」
「知りたいか?」
「・・・・・・・・・素敵な人ならいいなって思います」
お頭が選んだ人が、
嫌な人なら悲しい。
「明日会えるさ」
お頭の言葉に愕然とした。
信じられない。
その人と私を会わせるつもり?
「会いません、私。・・・・会いたく、ないです」
「アコ?」
「おやすみなさいっ」
泣きそうな顔を見られないように、
ベッドに潜り込んだ。
それからちょっとして、バタン。とドアの閉まる音がした。
目は閉じたけど、
・・・・・・・・全然眠れなかった。
翌朝。
「いーやーでーす!!」
「船長命令だ」
「じゃあ命令に背きます!船降ります!」
いやだいやだ、と叫ぶ私を力ずくで引っ張るお頭。
「馬鹿言え。そんなことさせるか」
「具合悪いです!吐きそうです倒れそうです!」
「安心しろ、そうなったら俺が介抱してやる」
「いーやー!!!」
必死の叫びも虚しく、
私は町に連れてこられてしまった。
「私の大好きなお頭はこんなことする人じゃなかっ・・・・や、する人でしたね」
でしたよ。
無茶苦茶言って、それをやってのけてしまう人。
あーあ。
「お、ここだ」
「・・・・・・・人の話聞いてます?」
お頭に連れてこられたお店。
・・・・・・・宝飾店?
「サラ、頼む」
「あら、お頭さんいらっしゃい。待ってたのよ、その子?」
「ああ」
お頭にサラ、と呼ばれた女の人はスタイルが良くて、ばっちり化粧した綺麗な人。
私を見て優しそうに微笑んだ。
・・・・・・・・良さそうな人で良かった。
でももう関わりたくない。
「これね」
「助かった」
サラさんがお頭に何かを渡して、
お頭はそれを、
「アコ」
・・・・・・・私に渡した。
「・・・・・何ですか。物で買収する気ですか。お母さんお父さんって呼べばいいんですか」
「何言ってるんだアコ。俺からのプレゼントだ、開けてみてくれ」
・・・・・お頭があんまり嬉しそうに言うんで、根負けして箱をあけた。
「・・・・・・・・・・これ」
中に入ってたのは、シルバーの指輪。
内側に、
私の名前が刻印してあった。
「気に入ったか?サラに色々アドバイスをもらってな」
「・・・アドバイス?」
「まずヤソップに、惚れた女を口説き落とすにはサプライズのプレゼントだって言われた」
「・・・・・・はあ」
「で、町に来てうろうろしてたらサラに声をかけられてな、そういうことなら自分の店に来いと」
「・・・・・・・・・・・・は、あ」
「それで、少しは俺に惚れたかアコ?」
「え・・・・・と?つまりこの指輪は賄賂じゃなくて?」
「なかなか落ちないお前を落とす為のものだ」
・・・・・・・・・・・・腑に落ちた。
「・・・・・・・・・はい」
お頭にも、落ちた。
・・・・だって私、
本当はきっと、ずっと、
お頭のこと。