短編⑤
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「ねえマルコどん」
「変な呼び方すんじゃねェよい」
「じゃあマルコしゃん」
「・・・・てめェ」
「・・・・・・・・・・どうしよう」
「普通に呼べよい普通に」
「いや、そっちじゃなくて」
今のどうしようはマルコの呼び方のことじゃなくて。
「・・・・・・・・・どうしようもねェだろうがよい」
「いやぁぁぁぁ!!遭難したぁぁぁ!!」
真っ暗な足元。
くたくたの身体。
・・・・・・・・今何処にいるのかわからないという状況。
唯一わかるのは山だということのみ。
これを遭難と言わずして何と言おう。
「うるせェよい!でかい声出すな!」
「だってぇぇぇ!!!私死ぬの!?」
「こんなところで死ねるかっての!馬鹿言うんじゃねェよい!」
「でもこのままじゃ・・・・!!」
・・・・どうしよう、マルコまで巻き込んでしまった。
私が、獲りたてのキノコが食べたいからと付き合ってもらっただけなのに。
・・・・ただの、幼馴染なのに。
「スマホがあるだろい」
「おおっさすが冷静なマルコどん!!」
「・・・・・って、おい」
マルコの助言で早速スマホを出したけど。
「・・・・ちーん」
電池切れ。
「まっマルコのは!?」
「持ってきてねェ」
「はい!?」
「持ってきてねェよい、休みの日にまで仕事の呼び出されんのは御免だからよい」
「・・・・・・・万事休す」
がっくし。
「・・・冗談じゃねェ」
「熊とか出たらどうしよう!?」
「俺がぶっ倒してやるよい」
「駄目だよマルコだってやられちゃうよ!」
「やられねェよい。ンんことより寝床だ」
「・・・・・野宿?」
「こんだけデカい山だ、あるだろい何か」
「あるかなぁ・・・・」
泣きそう。
あったとしても歩けるかどうか。
「ある」
・・・・妙に言い切ったマルコに違和感を覚えて見て見れば、真剣な顔で前を見ている。
・・・・カッコイイ。
「・・・何処にあるの?」
「あそこだよい」
「・・・・・・・・・うわーお」
あそこ、と顎で指した先には。
確かに小さいけど山小屋と思われるものが。
ただしそこにたどり着くにはまだだいぶ歩きそうだ。
「歩けるだろい?」
「歩けると思う!?」
「歩かなきゃ死ぬよい」
「・・・・・・・・・・・いいよマルコ1人で行って」
足手まといになるくらいなら。
覚悟して言ったのに、マルコは何故か呆れのため息を吐いた。
「馬鹿言ってんじゃねェよい。アコ1人置いて行ったら明日ここを通れねェ」
「・・・・どういう意味?」
「さすがに知り合いの死体を跨げる程神経図太くはねェんだよい」
「・・・こらこら」
深刻な状況なのに結構酷い!
「・・・・ほら、よい」
「・・・・ん」
差し出された逞しい腕。
少しだけ照れたようなマルコの顔。
「行くよい」
「あい!」
頑張る!!
「着いたぁぁぁぁ」
「・・・埃まみれだねい」
「外で一夜を明かすよりいいよー・・・・」
はぁぁぁ、と安堵のため息が出た。
「で、飯はどうするんだい」
「お菓子あるよ」
「・・・菓子かよい」
「キノコも」
「生で食う気かい」
「とりあえずお茶もまだあるし、食べ物には今日1晩なら何とかなると思う」
「・・・・仕方ねェ、か」
山小屋には簡単なテーブルとイス、小さいソファが1つ。
「・・・・・・怒ってる?」
「怒るより先にやることがあるだろい」
淡々と告げたマルコはじっと私を見る。
や・・・・やること、って。
「今冬じゃないよマルコ!!」
「知ってるよい!」
「あ・・・暖め合うの?」
「・・・・馬鹿なこと言ってんじゃねェよい」
え、じゃあ何。
「最初はぐーだ」
「は」
握られたマルコの手。
そして、
「じゃんけん」
ぽん。
掛け声につられて私も手を出した。
私はパー。
マルコはチョキ。
「え、何」
「ソファで寝るのは俺だよい」
・・・・にんまりマルコ。
・・・・やられた。
「・・・いいよ。私のせいでこんなことになったんだし」
だからそれも仕方ない、と了承したのに、
ごつんと頭に軽い衝撃。
「痛い・・・・何すんの」
「俺は自分の責任でここに居るんだい、他の誰のせいでもねェよい」
「・・・・マルコ」
「明日になりゃ道もわかるだろい。今日だけだ」
「うん・・・ありがと」
それからお菓子で夕飯を食べて、
もう寝ようかと言う時。
ガタ、と音がした。
「何・・・今の、音」
「風か何かだろい?」
「熊・・・・だったりして」
マルコがドアに向かおうとしたので、
「駄目っ」
マルコにしがみついた。
「・・・アコ、言っただろい?俺は熊ごときにやられたりしねェよい」
「やられるよ!海賊でもあるまいし!」
「本当に熊ならこのままじゃこっちがやられるだろい」
「駄目ー!!」
ぎゅうっと力を入れる。
「・・・・・アコ」
「マルコに何かあったら私生きていけないー!!」
「いいから離れろよい」
「でもっ」
「俺はアコを守れなかったら生きていけねェんだよい」
「・・・・・・・え?」
「帰ったら覚えてろい」
「なっ何を!?」
「2度と俺から離れられなくしてやるよい」
え。
マルコは強い口調でそう言って、
私を抱きしめた。
「マルコ!?」
「もう他の男なんて誘わせねェ」
「あ」
それからマルコは私を突き放してドアに向かった。
「まるこ・・・っ」
マルコが勢いよくドアを開けて、周囲を見渡す。
「・・・・何もない?」
「・・・・何もないよい」
ほっと胸をなでおろした。
・・・さっきのマルコの言葉。
期待してもいいのかな。
「・・・・寝よっか」
「俺は入口で寝る。・・・ソファはアコが使えよい」
「でもマルコせっかくじゃんけんで」
「・・・使えよい」
「・・・・一緒に寝る?」
「ばっ・・・・・・・・・・」
「・・・・マルコだけ、だから」
私には。
「怖くて寝られねェってんなら一緒に寝てやるよい」
「・・・・・・頼みますよマルコどん」
「おい」
次の日無事に下山することが出来た私たちは、
1年後結婚して、
新婚旅行で山に登りましたとさ。