短編⑤
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「辛い」
「甘ェ」
エースはブートジョロキアペペロンチーノ。
私はチョコレートのケーキ。
・・・・お互いに食べていたものを一口交換、という提案になって。
食べて同時に出た言葉が真逆。
なのはまあ仕方ないとしても。
「・・・辛すぎるよう」
「甘すぎるだろこれ」
「・・・・美味しいのに」
「これだって美味いぜ?」
どうやらお互い味覚が合わないらしい。
私は辛いのが苦手ではない。
でもさすがにこれは辛すぎるよ。
対してエースは甘いのも嫌いじゃないはず。
食べ物ならだいたい何でも御座れ。
・・・・と思ってたんだけど。
甘すぎるのは好まないようだ。
「美味しいかもしれないけど辛すぎて美味しさが全然わかんない」
「こんな美味ェのに」
言いながらまたエースは激辛ペペロンチーノを食べ始めた。
私は水を飲みながら、そんなエースを見つめる。
・・・・このパスタの中に顔突っ込んだら大変なことになりそう。
大丈夫かな、とハラハラと見守る。
「ん。やっぱ甘いのが癒される・・・」
「ごちそーさまでした」
どうにか眠らずに激辛ペペロンチーノを食べきったエースにほっと一安心。
そしてエースは食べ終わったそのままの口で、
「デザートもーらい」
がぶり。
私の唇にかぶりついた。
キス、なんて甘いもんじゃない。
不意に入って来た舌に、私は思い切りエースを突き飛ばした。
「や・・・・っ」
「・・・・・な、なんだよ・・・そんなに嫌だったのか・・・?」
「か・・・・・っ」
「か・・・?」
「からぁぁぁい!!!」
「あー・・・・・・」
ものすっごい辛さが口内に入り込んで。
辛いというか痛い!!!
「み・・・」
「水は駄目だ、余計辛くなんだぜ」
「んんんん!!でも辛いのおお!!!」
「・・・・イイな」
「なに!?」
「なんか、アコ可愛い」
「言ってる場合か!!!」
こっちは辛さで死にそうだっていうのに!!
「・・・・大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。もう怒りました」
「・・・悪かったって」
苦笑を浮かべるエースにもう我慢出来なくなった。
「エース」
「・・・ンだよ」
「これから1週間キス禁止」
「はぁ!?」
「したら別れる!!」
「う・・・・・・嘘だろ?」
「私がどれだけ辛い思いをしたか!!」
「辛い物食った時はしない、でいいだろ!?」
「トラウマになったの」
「ンな大袈裟な・・・・」
「ほら馬鹿にしてる。私全然大事にされてない」
「アコを大事に思ってる、嘘じゃねェ」
・・・真面目な顔のエースに思わずほだされそうになるけど。
「駄目。1週間禁止。決定事項」
「・・・・マジかよ」
マジだよ。
という訳で1週間キス禁止令。
初日こそ私の側でうろうろして、
「なぁアコ・・・駄目か?」
とか、
「すっげェ反省してる」
と要求してきたエースも、2日目には諦めたらしく大人しくなった。
「俺とキス出来なくて寂しくねェのかよ」
と思ったら3日目。
拗ねたように呟いたエース。
「1週間くらい全然平気」
「・・・・してェ」
「き、ん、し」
「・・・わァってるよ」
はああ、と深いため息をこぼすエースに、
イイよ、と言いたくなるのをぐっと我慢。
ここで甘やかしたら今後の為にならないもの。
と思ってたら。
「1週間たったら覚えてろよ」
「・・・どういうこと」
「キスだけじゃ済まねェからな」
「はいはい」
口ではこうは言ってるけど、
エースは優しい。
だからちゃんと私が嫌だって言えばしない。
・・・だからこうして、
キス禁止令も守ってるんだろうし。
「ん」
ん、と短く呟いてエースが両腕を広げて来た。
私がきょとん、としていると、
「ハグぐらいいいだろ」
と照れたような拗ねたような顔。
・・・可愛いなあ。
「大好きだよエース」
ぎゅ。
「・・・もう、いい」
「え」
エースはそれだけ言うと身体を離しさっさと何処かへ行ってしまった。
・・・・・え、え、え?
・・・・・もしかして怒った?
私、嫌われた!?
それから4日目、5日目もエースは私の前に姿を現さなかった。
・・・・寂しい。
6日目、エースを探して会えない1日。
7日目。
「今日で1週間だよな。今日はもういいんだよな?」
1人寂しく朝食を取っていた私の前にひょこっと現れたエース。
「・・・エース・・・」
ぽろりと涙が零れた。
「おわ!?な、何で泣くんだよ!?」
「・・・・嫌われたのかと、思って」
それだけを精一杯伝えた私の頬に流れた涙を拭うようにエースの唇が触れた。
「・・・抱きしめたらキスもしてェよ」
「・・・うん」
「だから我慢出来なくなりそうだったから。・・・俺が嫌われたくなくて会わないようにしてたんだぜ」
「私は・・・キス出来なくても会いたい」
「・・・悪かったよ」
「私も、ごめんね」
1週間ぶりのキスは、仲直りのキス。
「でも辛い物食べたあとはキス禁止」
「絶対しねェ!!」
これからのキスはずっと幸せのキスでありますように。