短編⑤
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「駄目だ」
「・・・・・・・何でですか」
「お前1人で何かあったらどうする?」
少し怒ったようなお頭に悲しくなって、
「もういいです。お頭なんて嫌いですっ」
言い返すことも出来ない自分も嫌になって。
そう言い捨てて私は自分の部屋に閉じこもった。
いつも誰かと一緒は嫌、と主張した私。
今度島に上陸した時は数時間でも1人で出掛けたいとお願いした私に、お頭は即座に首を横に振った。
例えそこが平和に見えたとしても、絶対に安全とは限らない。
私1人じゃ心配だ、と。
お頭の言うことはわかる。
心配してくれてるってことも。
・・・・・・・・・・・・・・・・だから、嫌い、なんて言うべきじゃなかった。
なんて今更後悔。
別に皆と一緒が嫌な訳じゃない。
お頭と2人が嫌な訳じゃ、決してない。
ちょっと、言ってみただけ、なんだけど。
言ってるうちに本気になっちゃった。
反省。
ベッドに潜り込んで、
明日は謝らなきゃなあなんて考えて眠りについた。
「・・・・・・・・・・おはよう、御座います」
「おう、おはようアコ。よく寝れたか?」
食堂でお頭にばったり会ってしまった私は、とりあえず朝の挨拶。
お頭は当然昨日のことを怒ってるかと思いきや、いつも通りの笑顔で声をかけてくれた。
「あ、はい」
「今日の卵焼きは美味いぞ」
言いながら卵焼きを私のお皿に乗せてくれたお頭。
「・・・・・・・・・有難う御座います」
あれ。
何か、いつも通り過ぎて。
・・・・・・・・・・・・・・謝るタイミング失った、かも。
「どうしたアコ、具合悪いか?」
はっと我に返れば目の前にあるのは心配そうなお頭の顔。
「いえ、大丈夫、です」
「無理しないで言えよ?」
「・・・・・・・・はい」
何で、
「そうだアコ、今日のデザートはお前の好きなアイスを用意したけどな、あんま食いすぎんなよ」
・・・・・・何で。
「午後は一緒に釣りでもするか」
・・・・・・・・・・・・・・何で、何で?
「ああ、そうだ、久し振りにアコの焼くケーキも食いてェなァ」
「何で、ですか」
「ん?」
「私、昨日お頭に怒ったのに。・・・・・嫌いって言ったのに」
「なのに、何だ?」
「なのに・・・・何でそんな風に笑ってくれるんですか?怒って、ないんですか」
ずきずきと痛む胸。
けれどお頭はやっぱり満面の笑みを浮かべた。
「アコが怒る気持ちもわかるからな。1人では外出させられねえが」
「・・・・・・・お頭が心配してくれてるのわかってます。なのに私昨日、嫌いって」
言ったのに。
そう言えばお頭は困ったように苦笑して、
「ああ、ありゃあさすがに効いたな。まあでも俺はアコが好きだからいいだろう」
私の頭を優しく撫でる。
その大きな手が、
あったかい手が。
・・・・・・・・・私はこんなにも大好きで。
何で嫌い、なんて言ってしまったんだろう。
「・・・・・・そういう問題ですか?」
「まあアコはまだ怒ってるかもしれねえが、俺は怒ってない。そんだけお前に惚れてんだ、俺ぁ」
お頭の真っ直ぐな視線。
顔が段々熱くなってくる。
同時に疼く罪悪感。
「それに、怒ってる顔も可愛いからなアコは」
そして、やっぱり優しく抱きしめられた。
「・・・・・・・・・・可愛くないです私」
「そうか?・・・じゃあ可愛くないアコも好きだ」
「あははっ何ですかそれ」
妙にお頭らしい言葉が面白くて思わず笑ってしまった。
そして今なら、
「お頭。・・・・嫌いなんて言ってごめんなさい。ホントは、大好きですよ」
心から謝れる。
「ああ、さっきのやっぱりナシな。可愛すぎるよ、お前は」
「え、あ、・・・・・・っ」
平然としたお頭の顔が近づいて、
目を閉じた瞬間に酷く優しいキス。
「島に着いたらアコの行きたいとこどもでも連れてってやるから、1人で行こうとするなよ」
「約束、ですよ」
「ああ、約束だ」
嫌い、なんてもう言わない。