短編①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それに気づいたのは数日前。
何となくいつもはつけないイヤホンで音楽を聴いたら、心地良かった。
それからは時々、耳に影響がない程度にはイヤホンで音楽を聴くことにしてる。
「おーいアコ」
「うわ!?」
耳元から直に流れ込んでくる音楽に酔っていたら、いきなり人の声が聞こえて驚いた。
イヤホンは両方ともはずされていて。
後ろを振り向くと不機嫌な顔のエースが立っていた。
「エース?びっくりしたぁ」
「何回呼んだと思ってんだよ」
「ごめんごめん、イヤホンしてたから気づかなかった」
大音量で聴いていた訳ではなかったけど、それでも気づかなかった。
エースの気配にすら気づけなかった。
「サッチが後でレシピ持って来てくれってよ」
「了解。ありがとね、エース」
「何してたんだ?」
サッチさんからの伝言を終えたエースは私のイヤホンに興味を持った様子。
「音楽聴いてたの。今まではイヤホン使ってなかったんだけど、やっぱ耳から直で来るといいなあって」
「ふーん。そんなもんか?」
「そんなもんだよ。特に声がいい人の歌声はヤバイ」
「声がいい?」
「低くて響く声の人とか、ぐっとくる!ドキッとしたり」
耳元で、っていうのがまたいいんだよね。
でもエースはその良さがわからない様子で、しきりに首を捻っている。
「んー・・・じゃあエース、耳貸して」
「・・・何すんだよ」
「いいから」
「・・・・ん」
文句を言いながらも素直にしゃがんで近づけてくれたエースの耳に口元を寄せた。
そして、
「エース」
小さく囁く。
途端エースの身体がびくっと跳ねた。
「な!?・・・・っ!?」
「あははっエース顔真っ赤!」
あ、耳も真っ赤。可愛い。
「うっうるせェ!」
「ドキッとした?」
「お前も耳貸せ!」
「えー」
「えーじゃねェ!」
照れたようににエースはそう言うと、私の耳に自分の口元を近づけた。
何て言ってくれるのかなーなんて思っていると、
「好きだ、アコ」
エースにしては低い声で。
ゆっくりと囁かれた言葉。
「っ!!」
「どうだ?」
顔が一気に熱くなったのがわかった。
「ど、どうだって言われても・・・!私は元々良さ分かってたし!」
「そうじゃねェよ」
暴れる心臓を押さえつけながらそう答えれば、エースは怒ったように言う。
そうじゃない?
どういうこと?
「そうじゃない、って」
「・・・・答えろよ。俺の気持ちに対する、アコの返事」
「今!?」
「今」
NOと言わせないエースの声音と真剣な表情に思わずごくりと唾を飲み込んだ。
そして、覚悟を決めた。
立ち上がって、背伸びして。
エースの耳元に、囁く。
「・・・・私も好き」
好きな人の声が耳元で響く。
くすぐったくて、でも愛おしい。
大事な言葉は、耳元で。