短編⑤
夢小説設定
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「幽霊船?」
「このあたりで出ると聞いたことがある」
と、お頭は楽しそう。
「それじゃ皆さんお酒が進みそうですねえ」
私は思わず苦笑。
今夜は盛大な宴になるだろうな。
皆何かと理由つけて宴にするから。
「出くわすといいなァ」
「・・・本当に出くわしたらどうするんですか?」
「そりゃ勿論接触を試みるさ」
「じゃあその時は私も一緒に」
「ほう、アコも興味あるか」
「ありますね」
「その手の話しは苦手じゃなかったか?」
「怖い話は苦手ですけど・・・体験するのは別です」
「だっはっは!!面白いことを言うな!」
怖い話を聞くのは少し抵抗があるんだけど、
自分で体験するのは別。
「お頭こそ。仲間にするーとか言ってたじゃないですか」
「おう、楽しそうだろう?」
「・・・楽しそう・・・・?」
想像がつかない。
「ま、お前が嫌がるなら勿論仲間にはしねェが」
「幽霊であることを悪用しないなら大歓迎ですよ」
「悪用?」
「・・・姿見えないのをいいことに覗きとか」
「・・・・なるほどなァ」
お頭が悪い顔でそう呟く。
「・・・お頭?」
「仲間にするのはヤメだな」
「面白い人ならいいんじゃないですか?」
「いや、駄目だ」
・・・・さすがにお頭でも幽霊の悪用は止められない、か。
「女性の幽霊だったら?」
「ナイスバディなら考えてもいい」
「幽霊にまでナイスバディを求めますか・・・」
「冗談だ」
とにっこりお頭は笑うけど、絶対冗談じゃない顔。
「抱きてェと思う女は今俺の目の前にしかいないからな」
「・・・・はいはい」
あーあ、ナイスバディになりたいなあ。
なれたら・・・自分に自信が持てたら。
お頭に好きですって言えるのに。
・・・こんな時、可愛く抱きしめて、って言えるのに。
「幽霊船に出くわした時の為に武器作ってもらわなきゃ」
「武器?」
「洗剤とかです!」
「洗剤?幽霊に効くのか?」
「相手はGです。もしかしたらいるかもいれないじゃないですか!」
「はははっ!そうだな!幽霊より実在する可能性が高いそっちの方が怖いか!」
「そりゃそうですよう」
「任せとけ、何があってもアコは俺が守るさ」
「・・・お願い、します」
・・・・まあどうせ、出くわすことはないだろうけど。
そして、夜。
予定通りの宴。
騒がしい宴を横目に、私は海を眺める。
「見つかりそうか?」
お酒片手のお頭が声を掛けて来た。
「ぜーんぜん」
「ま、噂だからな」
「別の海域では骸骨が歌を歌うっていうのも聞きました」
「そりゃいい。宴が盛り上がる」
「その骸骨さんは誰の為に歌ってるんですかね・・・」
「・・・そりゃあ、海賊の為だろう」
「・・・・聞いてみたいなあ」
「よし!歌うか!」
「えええ、お頭がぁ?」
私が嫌そうな顔をしたのを見て、
お頭は不服そうに顔を顰めた。
「俺ならお前の為だけに歌うぞ?」
「・・・それは、嬉しい・・・です、けど」
「・・・そんなに下手くそか、俺の歌は」
そして今度はしょんぼり。
「そ、そういう訳では・・・すみません・・・」
「いや、いいんだ・・・俺は駄目だな」
「駄目じゃないですよ!!お頭の楽しそうに歌ってるとこ好きです!!」
「・・・・そうか!」
「はい!!」
精一杯の励ましをしたところで、私は固まった。
「・・・おっと」
「おか・・・・・しら」
目の前に、船。
でもこの船・・・・もしかして。
「もしかして・・・・そういうことか?」
「・・・ですよね」
「・・・・船も幽霊とは恐れ入った!!」
目の前の船は透けていて、
到底存在しているとは思えない。
「これじゃあお邪魔も出来そうにありませんね・・・」
「行ってみるか?」
「止めて下さい、海に落ちても助けられませんから私」
「残念だったな」
と、あまり残念じゃなさそうなお頭がぐびりと喉を鳴らした。
「幽霊、かあ・・・」
「・・・・ん?」
「・・・私も死んだら、幽霊になってここに居るんだろうなって」
「ああ、そん時は俺も一緒だ」
「幽霊になっても皆と一緒に・・・お頭と一緒に居れたら最高ですね!」
「んで、レッドフォース号と一緒に幽霊船の噂の仲間入りって訳だな」
「あははっ、楽しみ!」
「ま、しばらくは無理な話しさ」
「そうですね、しばらくは生きて側に居たいです」
「そしたら俺は早いとこお前を口説き落とさないとな」
お頭はそう言って顔を近づけて来る。
「・・・もう、落ちてます」
「ん?」
「でなきゃ・・・幽霊になっても側に居たいなんて言いません」
もうこんなことを言ってしまったからには覚悟を決めよう。
この人となら。
「・・・・ああ、そりゃあ良かった」
優しい笑みのお頭と、
静かに唇が重なった。
「・・・・おか、しら」
「幽霊になったらこんなことも出来なさそうだ」
「・・・幽霊同士なら出来るかも」
「よし、楽しみだな!」
・・・・・今度は歌う骸骨さんに、会えたらいいな。