短編⑤
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こないだまで居た島は、
大きいところだった。
そこで買った香水を、
私はとても気に入っている。
爽やかで、力強い太陽の匂い。
大好きな、匂い。
まだ1回もつけてない。
顔を近づけて微かな香りを楽しんでる。
「ん。いい匂い」
ご機嫌で呟いたところに、
「アコー入るぞ」
お頭の声がして、慌てて香水を引き出しにしまった。
「はーいどーぞ」
「明後日島に着くそうだ」
「わ、ほんとですか?どんな島か楽しみですねー」
「昼過ぎには着くみてェだから、飯食ったら行くか」
「!いいんですか!?」
「おう。むしろ他の男と行くなよ、絶対」
「え、何でですか?」
「んー?そうだな・・・・他の奴と行くと甘やかされて何でも買ってもらうだろお前」
ずばり、と言われたけど、
「でもお頭以外の仲間と行ったこと数えるくらいしかないですよ」
だからあんまり覚えてない。
「・・・・あァ、そうだろうな」
「・・・・・・・・・・お頭?」
少しだけ見えた悪い顔。
その横顔に思わず声をかけると、
「ん?」
いつも通りの優しい笑顔を私に向けた。
・・・・・・っていうか、
甘さでいったらお頭の方が甘いと思うんだけどな絶対。
「お頭だって結構甘いですよ私に」
「俺はいいんだ」
「・・・・・・・・・・・えー」
「船長だからな」
納得出来るような、出来ないような。
でも、ちょっとだけ不安になった。
「・・・・・・私、駄目ですか?」
「駄目?何がだ?」
「皆に・・・・お頭に甘やかされて駄目な人間かなあって」
甘やかされてる自覚はあるから。
「大丈夫だ。お前は俺の大事な・・・誇れる仲間だ」
「・・・・・・・ほんとですか?」
じっと見つめて聞いてみたら、
片腕でそっと優しく抱きしめられた。
「当たり前だ」
安心する、大好きなお頭の匂いが広がって。
・・・・・・・・・・・・落ち着く。
「有り難う御座います・・・明日、楽しみです」
そして、船は無事に島に着いた。
どんな服を着ていこうかな、とか。
少しだけ化粧もしてみようかな、とか。
色々考えて、
たくさんドキドキして。
最後に私は手首に、
香水をつけた。
大好きな香りを纏って、
大好きなお頭とお出かけ。
嬉しくて、
楽しみで。
「お頭っお待たせしました!」
「お、気合い入ってるなァアコ」
「はい!楽しみですー!」
新しい島!
新しい町!
「美味しいものあると嬉しいんですけど」
「前の島で食った焼き鳥は美味かったな」
「お頭はお酒のおつまみばっかりですね・・・」
「酒が美味いのが1番だからな」
・・・・・・・・・別にいいけど。
「・・・・・・・・アコ?」
「はい?」
「お前・・・・」
「・・・・・・・・・何ですか?」
お頭は怪訝な顔で、
私の顔を見て。
それから身体の隅々までじっと見回した。
「・・・・・・・・いや」
「・・・・・・・・・・・・何ですかほんとに」
「腹減ったか?」
「さっきお昼食べたばっかですよ」
「・・・・あぁ、そうだったな」
何か、お頭が変。
「欲しいもんはあるか?」
「うーん、今のとこ特には。新しい服もこないだお頭に買ってもらいましたし」
「香水は?」
「え?」
唐突に出てきた言葉にドキッとした。
「・・・・・・・つけてるな?香水」
「え、はい」
「アコらしくない匂いだな・・・・何処で買った?」
「・・・・・・・この間の島で」
妙に低くなったお頭の声が少し怖い。
「いつ」
「・・・・・・・・滞在4日目に」
「誰に買ってもらった?」
「え、と。自分のお小遣いで」
基本的にお小遣いはもらってるけど、
欲しいものはたいていお頭が買ってくれるからあまり使うこともない。
「1人で行ったのか?」
「皆と行った時、です」
「・・・・・・・・・・皆と?」
「あの、お頭とかヤソップさんとかご飯食べに行ったじゃないですか」
「・・・・・あの時か」
皆でご飯を食べに行った帰り、
皆散々お酒飲んだりしてたのに、
酒屋さんでお酒を買い込んでた。
この酒がいい、いやこれがいい。とか言って。
その時たまたま隣にあった雑貨屋で、
見つけた香水。
ボトルが可愛くて引き寄せられて、
結局香りが気に入って買った。
「・・・・・・・・そういや一瞬居なかったな」
「はい」
「ちょっと目を離すとすぐこれだ・・・・」
「・・・・・・・駄目でした?」
怒ってるのか呆れてるのか。
どちらとも言えない表情でお頭は呟く。
「香水なんかつけて・・・・男を寄せ付けるつもりか?」
「はへ!?ななな何言ってるんですか!ただ気に入ったからつけただけです!」
「他の男を誘うつもりだったんじゃないのか?」
「違いますって!・・・・なんていうか、その」
・・・・・非常に言いにくいんだけども。
「何ていうか、の後は?」
「・・・・・・・・・えっと」
「言えないのか、アコ」
「・・・・・・海と太陽の匂いで」
「それで?」
「・・・・・・・・・お頭の匂いに似てて」
「・・・・・・・俺の匂い?」
「安心する匂い、だったから」
うわああああ恥ずかしい!!
だってこれ、
まるでお頭が好きですって言ってるようなものだし!!
いや、好きなんだけど!
お頭は目を丸くさせてぱちぱちと数回瞬き。
「・・・・・・アコ」
「は・・・・はい」
ドキドキしながらお頭の言葉を待つ。
・・・・・・・・と、
ぐ、っと引き寄せられて、
額にちゅ、と口付けられた。
・・・・・・あっという間、一瞬の出来事。
「・・・・・・・・・・・・おか、しら?」
「よし。んじゃあその香水、俺以外の男と居る時にはつけるな」
「・・・・・・・・何でですか?」
「何でだと思う?」
今度は私が瞬きをする番だ。
・・・・・・・・・何で?
「くさいから?」
「違うな。・・・・・まあ、鈍感なアコも可愛いがそろそろ我慢の限界だ」
「え、え?」
「今夜は覚悟しとけ」
「・・・・・・・・・・・・ええ?」
それから強く抱きしめられて。
・・・・・・・・・・大好きなお頭の匂いで、
私の頭はいっぱいになった。