短編⑤
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朝、昼を終えて夕飯の支度の前の優雅な時間。
サッチさんに作ってもらったケーキと紅茶で。
「ん・・・・・・んん!?」
紅茶を啜って思わず吹き出しそうになった。
・・・この紅茶、酸っぱい。
「・・・・・っエース!!!」
後ろで笑い声が聞こえて振り返って怒鳴った。
「くくっ、美味ェだろ?俺特製」
「いい加減に・・・・っ!!!!」
「おっと、捕まらねェよ」
追いかける私。
逃げるエース。
もう何度目だろうこのやりとり。
この光景。
昨日は目覚まし時計をいじくられ、寝坊した。
その前は私が楽しみに取っておいたお菓子を食べられた。
・・・・その前はもう覚えてない。
もうそれくらいエースは何度も私に悪戯をして、
意地悪をして。
私の反応を楽しんでいる。
怒った私がエースを見つけては追いかけて、エースが逃げる。
もうずっとこんな感じ。
そして、
「・・・・・もう」
逃げられた。
姿が見えなくなって、ため息を吐いた。
エースは何を考えてるのか。
今日は紅茶、やられたけど。
食べ物にはだいたい手を出さない。
・・・何なの?
何だか知らないけど、もう怒った。
もう許さない。
私にはエースを確実に逃がさない状況に出来るんだから。
翌日、
「うぉっ!?」
「おはようエース君」
「・・・・・おお」
お昼ご飯。
食べてる途中でお皿に頭を突っ込んで寝てるエースの隣でエースが起きるのを待ってた。
「ご飯粒、ついてる」
顔についているご飯粒を取ってあげて。
「・・・さんきゅ、アコ」
「さあエース、話しをしようか」
「わり」
「わり、じゃなくて」
エースは私を見てへらりと笑って短く謝罪の言葉を口にしたけど、
反省してるようにはとても見えない。
「なんっで最近私に意地悪するの!?」
「今日はまだ何もしてねェだろ?」
「ま、だ?」
まだということはこれからするということ?
じろりと睨めばエースは勢い良く立ち上がって、
「今日はしねェよ。じゃな!」
「あっ、こら!!」
言うが早いか、エースは颯爽と去って行った。
・・・・また、逃げられた。
結局何もわからないまま。
「いじめっ子に勝つにはどうしたらいいかわかる?」
「・・・戦うことですか?」
サッチさんに相談したら訳のわからないアドバイス。
別にいじめられてる訳じゃないんだけどな。
「答えはノー。反応しないことが1番」
「・・・・つけあがりません?」
「それが反応することの方が逆効果なんだな。特にエースの悪戯には効果場抜群だぜ?」
・・・・なるほど。
一理あるかもしれない、試してみよう。
今日のエースの悪戯は虫らしい。
部屋でのんびり本を読んでいた私の足元に虫。
・・・良く見れば、玩具だとわかる。
放置しようかと思ったけどさすがに気持ち悪いので捕まえてゴミ箱に捨てた。
「驚かねェの?」
ドアから覗くエース。
「・・・料理人はこんなことでいちいち悲鳴あげたりしません」
ほんとは虫苦手だから悲鳴あげる寸前だったけど。
エースはちぇ、と舌打ちした後、
「でもアコ虫は苦手だよな?」
と不思議そうな顔。
「・・・・苦手よ。大嫌い」
でも、と私は続けた。
「エースの方が嫌い」
私が虫苦手って知っててこういうことするなんて最低。
思い切ってそう伝えれば、
「・・・・・・ごめん」
エースは珍しく真面目な顔で謝って、出て行った。
・・・・言い過ぎた、かな。
そもそも何故私に意地悪するのか聞きたかったんだけど。
・・・・まあこれでこれからはなくなるでしょ。
と思っていたら。
「隣空いてるぜアコ!」
「あ、うん」
「アコこれ好きだったよな?なくなる前に取っておいた」
「・・・・ありがと」
・・・今度はエースが妙に優しい。
「今度島着いたら買い物行くんだろ?俺荷物持ちするぜ?」
「・・・・・何企んでるの?」
「何も」
「うさんくさい」
びしっとツッコむとエースは思い切り苦笑した。
「俺さ、この間すげェ凹んだんだ」
「・・・・それは、えっと」
「・・・嫌い、って言われてめちゃくちゃ落ち込んでサッチに相談した」
「・・・・それは、ごめん」
「俺こういうの初めてでどうしたらいいかわかんなくて・・・ガキだった」
「・・・・・こういうの?」
「絶対振り向かせてェって思ったらあんなんしか出来なかったんだよ」
「・・・・・んん?」
「なァ」
「・・・・な、に?」
真面目なエースの顔。
・・・いやいや騙されない。
「頼むよアコ。嫌い、って撤回してくねェか」
「へ」
「・・・そんで、好きって言ってくれ」
・・・だ、だまされ・・・・!!
「・・・・っ、もう意地悪しない?」
「しない」
「ごめんね、嫌いは嘘。撤回する」
・・・エースのあまりの真剣な顔にほだされた。
「・・・好き、って言ってくれねェの?」
「・・・・先に、聞かせて」
でも今まで意地悪されてきたからこれは仕返し。
真っ赤な顔のエースが小さく、
「・・・好きだ」
・・・これくらいは許されるよね?
「私も好き」
なるほど、好きなコに意地悪しちゃうのは男の子のクセみたいなものなのかと理解した。