短編⑤
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お頭と喧嘩した。
・・・・や、喧嘩っていうか一方的に私が怒っているだけだ。
だってお頭は謝ってくれたもの。
とても真摯に謝ってくれた。
それでも許せず怒ったのは私。
怒鳴って、泣いたのは私。
わかってる。
・・・・お頭だって故意じゃない。
許してあげればいい。
・・・・わかってるのに。
大丈夫、その言葉は出てこなかった。
私も言い過ぎましたごめんなさい、その言葉は。
出てこなかった。
喧嘩の原因は私がお頭に贈ったベルトをお頭が紛失したこと。
ほんとは好みじゃなかったんじゃないですか?
酔っぱらってなくしたんですね、
ほんとにちゃんと探しました?
ろくに探してもいないんじゃないですか?
・・・・・と酷い言葉を投げかけた。
島で見つけて、絶対お頭に似合う!って買ったもの。
受け取ってくれた時お頭はとても喜んでくれてたのに。
「お頭と仲直りしてくれアコ」
と懇願してきたのはベンさん。
「・・・・・怒ってます?お頭」
「落ち込んでてまったく何もしない」
「ああ・・・・なるほど・・・」
「怒ってないならさっさと仲直りしてくれ」
頼む、と疲労した顔でベンさんに言われてしまった。
・・・私だって。
お頭と仲直り、したいけど。
宴の時、いつもの仲間と飲んでるお頭と目が合った。
咄嗟に目を逸らしたら、
いつの間にかすぐ側まで来ていたらしいお頭に手を掴まれた。
「アコ。まだ、怒ってるか?」
切なげな瞳に見つめられて、言葉に詰まる。
「・・・・・もう、いいです・・・・っ」
ようやく絞り出した言葉がこれ。
私には本当に精一杯で、言うだけ言って逃げた。
幸いにもお頭の手に力が入ってなかったから逃げられた。
「・・・・最悪」
部屋に戻ってぽつりと呟く。
このままじゃ一生仲直りなんて出来ない。
・・・・でも、本当にショックだった。
私が贈ったベルトをつけてくれてるお頭を見るのが好きで。
幸せだったから。
・・・・お頭のことが、好きだから。
お頭には何にも伝えてないけど。
・・・・・・・・・・こうなったら!!!
覚悟を決めて私は筆を執った。
紙は確かここに・・・・よし。
口で言えないなら、と手紙を書いた。
そしてこっそりお頭の部屋に置いた。
たくさん怒ってごめんなさい、
もう怒ってないです。
そう書いて。
ドキドキしながら部屋に戻って、
宴に戻れる気もしなかったのでそのまま眠ることにした。
翌朝枕元に手紙を見つけた。
怒ってないなら顔を見せてくれ、声を聞かせてくれ、と書いてあった。
・・・・・・無理!!!
こんな手紙読んで顔なんか合わせられない!!!
恥ずかし過ぎる!!!
今会ったら絶対お頭のこと好きだってバレちゃう!!!
その瞬間コンコン、とノック音。
ほぼ同時に、
「居るんだろう?アコ」
お頭の声。
居ません!!居るけど!!
「い・・・・・っ今着替えてるので入らないで下さい!!」
「おっと、すまん」
「じ、時間かかるんで先にご飯行ってて下さい!!」
「・・・わかった」
そう言ってお頭を先に行かせて、
ドア越しにため息を吐いた。
30分くらい時間を見計らってそっと朝食へ。
お頭が居るのを見つけて、あえて離れたところに座った。
「仲直りしたんじゃなかったのか?」
とベンさんが呆れた顔で隣に座った。
「・・・恥ずかしくてお頭の顔見れないんですもん」
実はかくかくしかじかで、と事情を伝えると、
「わかった」
「・・・・わかった?」
何が?
「あの人には頭としてやってもらわなきゃいけねェことが山ほどあるんだ」
とベンさんは席を立った。
・・・・・・何がわかったの?
困惑する私に、
すべてがわかったのは翌日。
朝、昨日と同じように枕元に置いてあった手紙。
・・・・と、真珠の指輪。
手紙には、一言。
好きだ、と書かれていた。
ど・・・・・・・・・・・どうしよう。
ますます会えない、今顔真っ赤だし。
今日は引きこもり決定だ、なんて思っていたら突然ドアが開いた。
「お頭!?」
ノックもせずに!!
「すまんが今日は逃げられる訳にゃいかねェんだ」
「へ・・・!?」
「言いたいことが言えないのはお互いさまだ。っつー訳でここで返事を待つことにした」
「は!?」
「勿論口でなくていい。アコの好きな時に好きなように書いてくれ」
にっこり。
笑顔で、ただ今日はずっと側に居させてもらう、とお頭が告げた。
「え、え、えええええ!?」
「いつまでも待つぞ」
「ちょ、・・・・・っ!!!」
私は慌ててその辺にあった紙に短く書いたその2文字をお頭に見せた。
すき。
・・・・まさかこんな形で両想いになるなんて。
雨降って地固まる、的な。
ちなみにベルトはお頭の部屋から無事に見つかりました。