短編⑤
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「・・・・私にくれるの?」
「ああ、嵌めてみろよ。右手の薬指」
エースに言われた通り、
今もらったばかりのそれを右手の薬指にそっとはめてみた。
・・・・・うん、確かにぴったり。
ゆるくもきつくもない。
「ぴったりだな!」
「・・・・・そうだね。有難う」
私の反応にエースは満足そうに笑って、
「似合ってるぜ」
と言いながら去って行ってしまった。
え。
・・・・ちょっと待ってそれだけ!?
ええええ!?
私は・・・・・・・・・どうしたら!?
「プロポーズだろ?やるねェエースの奴。でも俺ならもっと場所を選ぶぜ?」
「・・・・サッチさん私とエースは恋人でもなんでもないんですけど」
「え、そうなの?」
意外そうな顔のサッチさんに、
ああやっぱりこの人に相談しなきゃ良かったとつくずく思った。
でもエースのことならサッチさんが詳しいかな(というかこの人がほぼ犯人)と思ったのに。
間違いだった。
「そもそもプロポーズなら左手の薬指じゃないですか?」
「まァ、そうだけど。勘違いしてんじゃねーの?」
エース馬鹿だからさ、とケラケラとサッチさんは笑った。
・・・・いくらエースでもそれくらいは。
いや、知らないか。
いやいや、まずプロポーズとも考えられないでしょ。
結婚のけの字も出てないし。
好きのすの字すらも出てないし。
「で、それが例の指輪?」
「・・・・そう、です」
シンプルな丸い輪っかの周りに散りばめられた小さなダイヤモンド。
「そういや右手の薬指に指輪してる女の子って恋人いるってことになるんじゃないの?」
「別にそう言う訳じゃ・・・」
「そうなの?」
「気に入った指輪がそこにしか入らなかったとか、何となく、としか」
「ふーん」
「・・・とにかくサッチさんが犯人じゃないみたいなのでこれで失礼します」
「エースに直接聞けばいいのにー」
・・・・・それが出来たら苦労はしませんて。
・・・エースは私のことどう思ってるの?なんて。
聞ける訳ない。
別に何とも思ってない、とか言われたらショックだし。
「何とも思ってない女に指輪贈る?」
ってナースさんは言うけど。
サッチさん(男)が駄目だから女性にしようと思って仲が良いナースさんに相談してみることにして。
「・・・贈りません?」
「贈らないわよ」
「でもエースだし」
「アコ、誕生日は?」
「半年先ですね」
「まあエース隊長のことだから?アコに似合うってだけで買っただけかもしれないわ」
「・・・・はあ」
「もう少し待ってみることね。待てないなら自分から聞いえちゃえばいいのよ」
・・・・・・だからそれが出来れば苦労しませんて。
エースから指輪をもらった翌日の、お昼ご飯。
ちょっと遅めのお昼ご飯をとっていたら、
「お疲れ」
隣にエースが座った。
・・・・ドキッとした。
「あ・・・有難う」
「・・・・アコ」
「な、何?」
エースの視線の先は、私の右手。
・・・・薬指。
あ。
「・・・気に入らなかったか?アレ」
「あ、ち・・・違うの、料理する時汚したりなくしたくないからはずして、そのまんま・・・」
・・・だった。
「そっか」
エースはほっとしたように笑った後、
頭をぼりぼりとかきながら、何かぶつぶつ言いだした。
「ネックレスにすればつけてられるよな?」
「や、料理する時汚れる可能性はそれでもあるし・・・」
「服ん中に入れても?」
「肌にくっついたらそれこそ汗とかで変色怖いし・・・」
「・・・そんなもんか」
「ダイヤもあるし」
「料理ん時以外はつけてるんだよな?」
「あ、うん」
「なら問題ねェか」
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
・・・・何それ。
あの指輪お守り的な感じなの?
はっ!!
まさか呪いの指輪!?
私のこと嫌いだけど口で言えないし仲間だから手出す訳にいかないからまさかの指輪で!?
・・・・・そういうことなの?エース・・・!
いやいや、普通そんなことの為にサイズまで調べ上げる?
しかもエースが。
・・・・・・・ないわ。
「わ・・・・私も今度何かお礼するね」
「気にすんなって」
にっと笑うエースは普通。
あれだよね、恋人同士とか好意があったらもっと照れたりするよね?
わからない。
エースがわからない・・・・・!!
うーんうーんと考え込んでると、
「アコ、飯」
エースが話しかけて来た。
「ご飯?食べたいの?」
そういえば私お昼ご飯の親子丼まだ食べてる途中だった。
「違ェよ、ここ」
「え」
エースは私の頬を指さした後、
そのまま自分の顔を近づけて。
ぺろり。
「ぴゃあああああああ!?」
「悪ィ、面倒になった」
へへっ、と全然反省してなさそうなエースが笑った。
「せっせめて手で取るとかね!?」
「それも面倒」
「若者よ!」
思わず突っ込んだ瞬間、エースの顔から笑みがすっと消えた。
「・・・年はそんな変わんねェだろ」
どくんどくん、と大きく動く心臓。
「そ・・・・・・・そうだね」
そして次の瞬間、ぎゅ、と手を掴まれた。
「俺は」
「・・・・な、に」
心臓の音が最高潮にうるさくなった。
「次はカツ丼が食いたい」
「・・・・・・・・・・・善処します」
真剣な瞳にめっちゃ期待したのに!
このときめき返せ!
と心の中で涙を流した時。
「そんで出来れば俺だけに作って欲しい」
「・・・・へ?」
「んで、次の島着いたら指輪したアコと出かけてェ」
「そっそれって」
デート!?
「楽しみにしてるからな!」
再びエースは私にときめきを残して、
颯爽と去ってしまった。
・・・・・・・謎は深まるばかり。
そんな謎が解明されたのは、数日後のことだった。
サッチさんに頼まれてマルコさんに書類を届けに行った時だった。
「マルコさーん失礼しまーす」
鍵もかかってなかったしノックしてすぐに開けたら、
「あ」
マルコさんとエースが居た。
「・・・っアコ」
エースは私を見て明らかに動揺した様子を見せた。
顔が赤くなって、言葉に詰まってる。
・・・・・・これは。
「マルコさんこれっサッチさんからです!」
「ああ、有難うよい」
マルコさんにさっさと書類を渡して、
「エース、今いい?」
「え、いや」
「・・・マルコさんとお話し中?」
「行って来いよいエース」
「・・・・あァ」
エースは気まずさそうに頷いたのでそのまま手を引っ張って連れ出した。
外に出てすぐ、
「黒幕はマルコさんね!?」
「黒幕?」
問い詰める。
「だってエース今明らかに変だったもん」
「・・・・・・バレたか」
顔は赤いままエースが小さく呟いた。
もうこうなったら、聞くしかない。
「・・・ねえエース、あの指輪の意味は?」
「・・・・けん制」
「けん制?」
「アコは俺のだって印。先にやっちまえって」
「マルコさんの指示?」
「っつーか相談したらそう言われた」
「・・・・何でけん制?」
「・・・・アコが好きだからに決まってんだろ」
顔を隠すようにエースが片手で顔を覆った。
・・・可愛い。
「なら好きって言ってくれれば・・・」
「マルコがまず先に印つけろって。他の奴に取られちまう前に」
「・・・・じゃあ、右手の薬指なのは何で?」
私の心からの疑問にエースは首を傾げた。
「右手の薬指に指輪してるのは男が居る証なんだろ?」
「・・・・・・・・違います」
男の人は皆そう思ってたのか・・・・・!
「違うのか!?」
「指輪も嬉しいけど・・・私は言葉が欲しい」
もう安心して聞ける。
「・・・好きだアコ」
「はい、私も好きです」
エースが私の右手の薬指の指輪に、
ちゅ、とキスをした。
私もお礼にエースの唇に、
キスをした。