短編⑤
夢小説設定
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「もうお頭飲み過ぎですよ」
宴好きお酒好きはいつものことなんだけど、今日のお頭は明らかに飲み過ぎだ。
「まだ大丈夫だ、こんくらい」
「大丈夫じゃないです。最近量増えてません?」
「アコが俺に構ってくれねえからだろう?」
お頭、あなた幾つですか。
いい年したおっさんが構ってくれない、なんて。
・・・・・・・・・・・可愛いじゃないか。
「そんなこと言われても、私もやることがあってですね」
「そんなもん全部後回しにしろって。船長命令だ」
「・・・・・・・・・卑怯ですよお頭」
私だって本当はずっとお頭の側に居たいのに。
するとお頭はにい、と笑った。
「そしたら俺と勝負ってのはどうだ?」
「勝負?」
「飲み比べで勝負だ。先に潰れた方の負け。んで勝った方の言うことを何でも聞く」
飲み比べ・・・・ってそれ、
「それお頭に勝てる訳ないじゃないですか私が」
「俺はもう結構飲んでるからな、ハンデになるだろ?」
む。
確かに私が止めるくらいにはお頭はだいぶ飲んでる。
顔を見れば赤い。
「私が勝ったら1ヶ月お酒禁止ですよ」
「いいぞ。俺が勝ったら・・・・アコに何をしてもらうかな」
「・・・・・・・・・・・・やっぱやめとこうかな」
お頭が何を言うのか想像出来ないし。
お頭はそんな私を見て楽しそうに笑った。
「だっはっは!1ヶ月俺の抱き枕になってもらうか。アコからのキスってのもいいな」
「よくないですやっぱやめときます」
「ほう、やめとくか」
その言い方と視線が妙に挑戦的で。
「・・・・・・・・・・・・・・・むぅ」
悩んだ末、
「やります」
と答えてしまった。
「じゃあ、勝負だな」
「私が勝ったらその瞬間から1ヶ月お酒抜きですからね!?」
「わかってる。約束は守るさ」
酔っ払いの戯言。
されど、
お頭なら約束を守ってくれると信じて。
「飲み比べ勝負、始め!」
「うぐぅ・・・・・・」
顔が熱い。
だるい。
眠い。
もう何杯目、これ。
目の前のお頭はさっきより幾分か顔は赤くなったものの、私より断然しっかりしている。
このままじゃ負けちゃう。
「もう終わりか?アコ?」
「まだ・・・・・いけますっ!」
「おいおい、あんまり無理するな」
「やぁ、です」
自分で挑発しといて無理するな、なんて馬鹿にしてる。
何させられるかわかんないけど、絶対負ける訳にはいかない。
「もう1杯、お願い、します」
「おい、アコ」
「女には負けられない戦いがあるんれす!」
「・・・・・・・・・・そんなに俺に酒飲ませたくねぇか?」
わかんねえ、とお頭は怪訝な顔でそう問いかける。
「だって・・・・・お頭は海賊じゃないですか」
「そうだな」
「四皇で、強くてカッコ良くて。なのにお酒が原因で死んだりなんかしたら洒落にならないですもん!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は」
お頭は強い。
だから誰かにやられるなんて心配はしてない。
でもだからこそ、お酒の飲み過ぎて早死になんてことになったら悲しいから。
あの時なんで止めなかったんだろうって後悔するから。
お頭は大きく口を空けて驚いた顔をした後、呆れたように笑った。
そして私の上に、その大きな手を乗せた。
「年に2回、健康診断やる。無理な飲み方はしねェ。約束する」
「・・・・・・・・・・・・絶対?」
「絶対。お前を残して死んだりしない」
その言葉に安心した私は、
「良かっ、」
そのまま意識を失った。
次に目が覚めた時に見えたのは、
船医さんの心配そうな顔だった。
「あれ」
目を覚ました私は船医さんにたっぷりと怒られた。
普段お酒を飲みなれない私があんな無茶な飲み方するなんて言語道断だ、と。
しばらく寝ていなさいと言って船医さんは出て行った。
・・・・・・・・・・・・だって勝負たったから。
「・・・・・・・・・・・・勝負。勝負は」
「俺の勝ちだな」
「げ、お頭」
いつの間にいたのかお頭が勝ち誇ったように笑って居た。
「・・・・・・・・・・・・ですよね、私意識失っちゃいましたし」
「まあでもアコの気持ちはわかった。酒は控えめにする。・・・・なるべく」
「っほんとですか!?」
「ああ。約束も守る。船医に頼んで明日は健康診断だ」
お頭の言葉に嬉しくなった私を、
「だからお前も約束は守れよ?何でもしてくれるっつー約束」
やっぱりお頭の言葉がどん底に突き落とした。
「・・・・・・・・・何すればいいんですか?」
抱き枕?キス?
もう自棄ですよ。
「そうだなァ。一緒に風呂」
「はい!?」
「と言いたいところだが。これから俺が酒飲む時は俺の膝に乗ること」
と言いたいところだが、の言葉にほっとしたのも束の間。
「・・・・・・・・・・・えええ!?」
「約束だからなアコ?」
・・・・・・・・・・・お頭と飲み比べ勝負なんて。
最初から勝負になんてなかった。
悔しいけど、
仕方ない。
「もうお頭と勝負なんてしません!」