短編⑤
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エースとばったり廊下で出会った。
・・・・・その時の衝撃を、何て言えばいいんだろう。
雷が落ちたような。
どーん、も違う。
ずきゅーん、でもない。
例えるなら撃ち抜かれた・・・・・?
眩しかった、ような。
心臓が破裂。
・・・・どれも違うけど、
エースの顔を間近に見た時、
何とも言えない何かが私の心に残された。
「アコ」
「うぁっはいっ!?」
「今日も飯美味かった・・・って、言おうとしただけだぜ?何だよその態度」
・・・・・あれから、マトモにエースの顔が見れない。
「そ、そう?ありがとね」
「・・・おい」
怪訝な顔で近づいてくるエースに、
「ああっ早く明日の下ごしらえに行かないとサッチさんに怒られるの!じゃね!」
慌てて逃げた。
・・・・別に遅れてもサッチさんに怒られることはない。
・・・・・それでも、
心臓がどうにかなりそうで。
早くエースから離れないと、と思った。
・・・・・・・思っておいて、
すぐに会いたいとも思う。
ああもう何だろうこれ、この気持ち。
変な態度だったよね、エース絶対変に思った。
嫌われてないといいけど・・・・!
どぎまぎしながら大根を切ってたら、
「い・・・・っ」
「アコちゃんやっちゃった?珍しいな」
はい絆創膏、とサッチさんがくれた絆創膏を切ったばかりの手に貼った。
「・・・・有難う御座います」
「大丈夫?痛い?」
・・・痛いけど、
さっきの態度でエースに嫌われてる方がもっと痛い。
「大丈夫、です」
・・・頭にエースのことしか思い浮かばない。
「今日は人もいるしもう休みな」
「すみません・・・・」
「っと、その前にコレ」
「これ?」
「見張りしてるエースに差し入れヨロシク」
「あ・・・・・はい」
エースの名前を聞いただけで、どくんと大きく心臓が動いた。
・・・エースに、会う。
差し入れの食べ物を受け取って、
小さい鏡で何となく身だしなみをチェックした。
・・・・・よし。
覚悟して見張り台まで上った。
「・・・・エース?」
「ん、アコ?」
エースはすぐに私に気づいて私を引っ張り上げてくれた。
「明日の飯の下ごしらえは?」
「・・・人が居るからいいって」
「そっか。良かったな」
「うん。それでこれ、サッチさんから差し入れ」
「有難うな、もらっとく」
真っ暗な夜の下でさえ見るエースの顔は眩しく感じた。
「・・・・どうした?」
「え?」
「何か変だぜアコ」
「変・・・・?」
「ぼーっとしてるっつーか。具合悪いのか?」
「・・・かなぁ」
「熱は?」
「え、あ」
熱は、と言いながらエースが私のおでこに自分のおでこをくっつけた。
その瞬間一気に熱が上がった。
あ、どうしよう。
でも、
「・・・・悪ィ」
「え?」
「俺も熱いからよくわかんねェ」
「あははっ、そうだった」
苦笑したエースに私も笑った。
心があったかくなる。
・・・幸せ、って言う感じ。
うん、この感情の名前はわかる。
・・・・わからないのは、あの時のあの感情。
「でも具合悪いんなら早く休んだ方がいいぜ?船医呼んできてやろうか?」
「ううん、大丈夫」
何となく、本当に何となくまだここに居たかった。
だから焦った。
何か、話さないと。
「ねえ、エース」
「ん?」
「・・・もし今ここに敵船が攻めて来たら私のこと守ってくれる?」
咄嗟に思いついた話題。
エースは真剣な顔で、
私の髪を優しく撫でた。
「聞くまでもねェだろ、そんなこと」
あ。
・・・・・あの時と、同じ。
また貫かれたような、
そんな感じ。
エースの真っ直ぐな瞳に私が見えた。
・・・心臓がきゅうっと締め付けられる。
苦しい。
それでも、
「アコは俺が絶対守るから心配する必要はねェ。わかったか?」
「・・・うん、ありがと」
その自信満々の笑みに、心が軽くなる。
「アコ、おかしいぜ」
「おかしい、かな」
おかしいかもしれない。
エースにもっと名前を呼んでほしい。
・・・・そう思うなんて。
「何か悩みがあンのか?」
「うーん、あるようなないような」
「どっちだよ」
半分はきっと私の中でもう答えは出てる。
でもまだ、半分。
・・・もやもやしてる。
「ね、エース。私の名前わかる?」
「アコだろ?」
「もう1回」
「アコ」
優しく私の名前を呼んでくれるエースのことを。
私は。
「・・・・アコ?」
首を傾げながら心配そうに私をのぞき込んでくれて。
ああ、私。
「・・・私、エースのこと」
思いが溢れたその瞬間、
「くぉらエース!アコちゃん襲うなよ!」
下からものすごいサッチさんの大声。
「襲ってねェ!!!」
「っごめんなさいすぐに戻ります!!」
急に現実に引き戻されて、
「邪魔してごめんねエースっ引き続き見張り頑張って!」
「おい、アコ!」
あ、また名前呼んでくれた。
「おやすみなさい、エース」
「お・・・・おう」
おやすみなさい、が言える幸せ。
・・・今日はいい夢が見れそう。
翌朝、モビーの厨房は大忙し。
それでも目の端にエースがご飯を美味しそうに頬張っては寝るの繰り返しをしていることを確認。
私はまだまだ終わりそうにないから一緒には食べられないだろうけど。
・・・・良かった。
「アコちゃん次あっち!」
「はい!」
何とか自分の食事をゲット出来たのは、
それから2時間後。
「・・・・・おなかすいた」
いつものことだけど。
でも人もまばらな食堂でゆっくりご飯。
「よォ、お疲れ」
「・・・・エース?」
エースが私を見て手を挙げた。
「昨日の続き聞きに来た」
「・・・・・・昨日、の」
・・・・ってアレ!?
「ああ、気になったから」
「・・・・あれは、えーと、その、あれよ」
「どれだよ」
・・・・どきどきどき。
昨日は言おうとしたけど今いざ言えと言われると。
「えーっと」
「俺のことだったよな」
「・・・・・・私最近エースのこと」
「・・・俺のこと?」
「何か・・・キラキラしてるように見える」
「は?」
「なんちゃって」
「・・・・最近、な」
「うん」
「俺は前からだけどな」
「・・・・うん?」
エースは私の方を見ず、
「前からアコはキラキラしてたぜ、俺にとっては」
赤い顔で呟いた。
「・・・・エース、言っていい?」
「あ?何を」
「・・・・好き」
そんなエースに思いが溢れた。
「・・・いや、俺の方が先に好きだったんだからな」
そしてこの気持ち、
恋、
は。
エースの言葉で愛に変わる。
「そうかもしれないけど私の気持ちの方が重いよ」
「いや俺の方が重い」
「私の方が好き」
「俺の方が好きだ」
「・・・・・好きだよエース」
「好きだ、アコ」
そして前の日と同じように、
こつんとおでこが合わさって。
自然と唇も重なった瞬間、
また私の心臓が撃ち抜かれたのでした。