短編⑤
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「見せろよアコ」
「やだ」
「何でだよ」
「宝物だから」
「・・・・じゃあ誰からかくらい、いいだろ」
「駄目です」
いい加減しつこいエースに、過去に戻って自分に余計なことは言わない方がいいと伝えたい。
ああ、あんなこと言わなきゃ良かった。
ナースさん達とのお茶会。
今回のテーマは、それぞれの宝物。
船長の宝物は家族・・・つまり私達。
そんなところから始まった、この話し。
ナースさん達はそれぞれ宝石だったり、
思い出だったり、色々。
それで私は、と聞かれて。
好きな人からもらった手紙、と答えた訳だけど。
それを恋人になったばかりのエースがたまたま聞いていて。
問い詰められている。
という訳で。
「男か」
「・・・・・まあ」
「この船の奴?」
「・・・・・うん」
「ラブレターか?」
「そんなんじゃない」
「どんなことが書いてあるんだ?」
「・・・・・・言わなきゃ駄目?」
「言えよ」
知りたい。とエースが顔を寄せて来る。
逃げても逃げても追って来て。
しまいには壁まで追い詰められてしまった。
「・・・・うーん、まあ私のことを心配してくれてる内容」
「は?」
悩んだ挙句、
「具合が悪かった時にもらったの」
「・・・・そいつに?」
「そう」
頷いた私にエースは難しい顔。
「・・・・それじゃ、嬉しい訳だよな」
「・・・・まあね」
はあああ、とエースが深いため息を吐いて項垂れた。
「・・・エースの宝物は、なあに?」
「俺の?宝物?」
「ん」
エースは真剣に悩みだした。
「ルフィの手配書・・・・帽子・・・いや、でもな・・・・」
「・・・・いっぱいあるんだね」
「・・・おう」
答えながらもエースはまだ考えてる。
「それから・・・オヤジからもらったアレだろ、後は・・・・」
宝物いっぱいかぁ。
エースは幸せものだなあ、なんて羨ましい半分呆れ半分で見ていたら。
「アコだな」
「は?」
「アコが笑ってんのが1番」
俺の宝物、とエースが満面の笑みを浮かべた。
「そ・・・・・・っそれはずるくないかいエース君・・・・・っ」
「ずりィ?何が?」
前半散々色んなもの挙げてたのに!!
ここに来て!私出す!?
しかもそんなキラッキラした笑顔で!!
「・・・・好き」
絞り出した声に突然エースの顔が赤くなった。
「・・・俺も、好き、だ」
数秒見つめ合って、
ドキドキ。
「・・・・・エース?」
「・・・・騙されるところだった」
「はい?」
「手紙。誰からのだよ」
「あー・・・・」
またそっち戻っちゃったか。
「なァ」
唇が、くっつく寸前。
「・・・ヒント。私が風邪引いて寝込んでる時にお見舞いに来てくれたの」
「わかんねェ」
「でも話してるうちに私寝ちゃって。起きたらその人は居なくなってた」
「まァ、普通そうするだろうな」
「手紙だけ残ってた。早く元気になってまた美味い飯作ってくれって」
これでもまだわからなかったらどうしよう。
・・・・私の宝物。
手紙をくれたのは、
エースだって。
「・・・・待てよ?それって・・・・」
「・・・・わかった?誰からの手紙か」
「・・・・・俺、か?」
「・・・・そう」
その手紙がどれだけ嬉しかったか。
お見舞いに来てくれたのも、
側に居てくれたのも嬉しかったけど。
手を握ってくれたのも嬉しかったけど。
残された手紙の温かさ。
「俺の手紙が宝物・・・・?」
「まあ・・・手紙って言うか・・・書き置きって言うか・・・・」
「・・・・・・やっべ」
「・・・嫌だった?」
エースが口元を手で覆ったので、嫌だったのかと思って胸が痛んだ。
エースは突然くるりと私に背を向けた。
その耳は赤い。
「・・・・嬉しいっつーか。恥ずかしいっつーか」
「嬉しかったのは私の方。読んで泣いたもん」
「・・・・側に居りゃ良かったな」
「居てくれたみたいだった。手紙があっただけで、寂しくなかったの。だから、有難う」
決してお世辞にも綺麗な字、とは言えなかったけど。
一生懸命丁寧に書いてくれたのがわかる文字だった。
「情けねェな、俺」
エースは俯いたまま私の方に向き直って、
「・・・何が?」
「自分に妬いてた訳だろ。情けねェ」
「私は好きよ、そういうところ」
再び私を捕らえた。
「じゃあ、いいか?」
「・・・・え?」
「さっきの、続き」
真っ直ぐな視線に射抜かれて、すぐ。
唇が重なった。
・・・・・この思い出も、きっと宝物。