短編④
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海は大荒れ。
天候は雷雨。
長く航海していればこんな日もある。
まあでも私にできることは少ないし。
やることも終わったのでのんびり。
珈琲とクッキーで読書タイム。
・・・・・という訳にもいかない。
別にやることはないんだけど、
でも、
ピカッ。
ゴロゴロ・・・・・ドーン。
激しく響く雷に加え、
「わ・・・・っと、っと」
船が揺れる揺れる。
とてもじゃないけど優雅に過ごすなんて出来ない。
「・・・・・はあ」
仕方ない諦めてお昼寝でもしますか。
とベッドに潜り込もうとした時、
コンコン。
ドアのノック音。
「アコ、居るかい?」
「マルコさん?」
マルコさんの声に慌ててドアを開けた。
「どうしました?」
「元気そうだねい」
「まあ、何とか」
マルコさんは私を見て笑った。
「船酔いしてんじゃないかと様子を見に来たんだよい」
「あはは・・・・有難う御座います。今の所大丈夫です」
「一応持ってきたんだが・・・・どうする?」
どうする?と言うマルコさんの手にはチョコレート。
マルコさん曰く糖分が血糖値を下げて云々。
・・・・難しいことはよくわからないけど、少し食べる分には船酔いに効くらしい。
「頂きたいです!!」
「紅茶もあるよい」
「わ、いい香り」
「ペパーミントティーだよい」
・・・・・すごい。
何がすごいってマルコさん、この揺れる船内で普通に立っていることもすごいし(私は壁に手をついてる)、
紅茶を何事もないかのように飲んでいることもすごい。
そしてミントが酔いにいいと知ってて持ってきてくれたんだろうことも。
ゴロゴロ・・・ドーン!!
「ぴゃあ!!!」
思わず出た悲鳴にマルコさんが苦笑した。
「なるほど、船酔いより雷の方だったかい」
「こっこれは油断してたから驚いただけです!!」
「ははっ、そういうことにしてやるよい」
「・・・とりあえず頂きます」
私だってモビーの一員!!
こんな波をものともせず綺麗に紅茶を嗜んで見せるわ!!
「ぶはっ」
盛大に零しました。
「・・・・・やってくれるねい」
「私の部屋ですから!私自分で後で掃除するんでお構いなく!!」
恥ずかしい!!
マルコさんはククッと笑って、
「余計なことをしちまったかねい」
至って普通に紅茶を飲んでる。
・・・・なんて人。
「いえいえ、とても嬉しかったです。・・・ところでマルコさんこんなとこにいて平気なんですか?」
「と言うと?」
「この嵐でもっと大変かと」
「やれることはやった。あとはすることもねえ」
「あはは、お疲れ様です」
「それでアコの様子を見に来たんだが・・・正解だったみたいだねい」
「正解?」
「雷が怖いんだろい?」
「こわ・・・・・・・・くはないです」
「・・・へえ?」
マルコさんの挑戦的な笑み。
「ホントですって!そりゃまったく怖くない訳じゃ・・・・ないです、けど」
「けど?」
「いつ何が起こるかわからないって言う意味ではいつもと一緒ですし」
「確かに」
「それにマルコさん達が一生懸命手を突くしてくれてるんで結構安心してます」
信じてるから。
「・・・嬉しいこと言ってくれるじゃねェかい」
何とか紅茶を飲み切って、
チョコを頂く。
はあ、美味しい。
と和む暇もなくグラリ。
「あ」
やば、完全に転ぶ。
そう思った時、咄嗟に腕を取られて、
「よ、っと」
「・・・・・どうも」
マルコさんに強く抱きしめられた。
「もう少しで波は弱まるだろい」
「あのマルコさん」
「なんだい?」
「有難う御座います、もう大丈夫です」
逞しい胸板に押し付けられた顔がいたたまれない。
「まだ雷は遠ざかってねェよい」
「いやだから雷は平気なんですって!!」
「いざって時側に居ないと守れねェだろい?」
「・・・・マルコさんはすごいですね、ホント」
びくりともしない大きい身体。
一朝一夕じゃこの身体は出来ないもんなあ。
「すごい?」
「私もいつもマルコさんみたいに冷静でいられたらいいのになって」
くわえていつも冷静沈着。
「冷静なアコ、ねえ・・・・」
「何ですか。駄目ですか」
「冷静なアコは守り甲斐がなくてつまらねェよい」
今心臓がバクバクなのが私だけなのって何か悔しい。
「マルコさんが冷静じゃいられない時ってないんですか?」
って聞いておきながらも、
たぶんないんだろうなあと思う。
あるとしたら船長の具合が悪くなった時くらいかも。
と思ってたんだけど、
「あるよい、たくさん」
「え、たくさん?」
予想外の言葉に驚いた。
「どんな時です!?」
「アコがエースと楽しそうに話してる時」
「・・・・・・え。・・・・別にマルコさんに悪戯しようとか話してませんよ」
更に予想外の言葉が続いて困惑。
「サッチと楽しそうに料理してる時もねい」
「ええええ!?」
「サッチをどうにかしてやろうと思ったことは1度や2度じゃねェ」
「マルコさんそんなにサッチさんのこと・・・・!?」
サッチさん逃げて!!
あとついでにエースも!!
「・・・・ま、アコじゃそんなもんだな」
「はい!?」
貶された!?
必死に考えていたら、
ちゅ。
額に厚ぼったい唇が押し付けられた。
「今はこれで勘弁してやるよい」
・・・・・・海は大荒れ。
天候は雷雨。
私の心は台風。
あと数分もすれば波は収まるし、
雷も遠ざかる。
・・・・・私とマルコさんの関係も、
変わる?