短編④
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いわゆる援助交際、みたいなものなのかもしれないと思う。
「アコ、今日はどうする?」
「あー・・・・っとお願いします」
「じゃあ、来週だな」
「・・・はい」
何故『今日』どうする、の質問に、
『来週』になるのか。
知らない人が聞いたらそう思うことでしょう。
・・・私は今日のお昼ご飯と引き換えに、
来週シャンクス先輩とデートをする。
すべての始まりは、
お昼休憩の時間に会社でお煎餅を齧っていた時のこと。
上司であるシャンクス先輩に、
「一緒に飯行かないか?」
と誘われた私は、
「すみません金欠で・・・・今日お昼これなんです」
恥を忍んで昼食が煎餅1枚であることを明かした。
すると先輩は、
「・・・・奢ってやろうか」
何とも魅力的なお誘い。
「え、いいんですか?」
だがしかし目を輝かせた私に先輩はにっこりと悪魔の微笑みを浮かべた。
「無料、ではないが」
「・・・・私今金欠って」
言いましたよね。
てか無料じゃない奢りってなんですか。
「金は取らない。今度の日曜日俺とデートすること、それが条件だ」
「・・・・今度の日曜日も私お金ないんですけど」
「払えるだけでいい。あとは俺が出そう」
「な・・・・・何スかそれ・・・・」
嬉しいような怖いような。
「何か問題があるか?」
「だ、だってそれ先輩に何もメリットないですよね?」
「惚れた女と飯が食えて、更にデートが出来る。これ以上の理由が必要か?」
「ほ・・・・・・・?わ・・・・・え?」
「とにかく心配する必要はねェってことだ。それで、どうする?」
「え、ええ・・・・!?えっと!?」
「勿論アコが断る権利はある」
「ち、ちなみにデートって何すれば?」
「アコの好きなところに行って好きなことをすればいいさ」
突然のことに状況が飲み込めなかった。
それでも、
ぐぅぅ・・・・と鳴ったお腹だけが私のその時の事実で。
「・・・・ラーメン食べたいです」
「よし、決まりだな」
・・・・・ラーメンに負けた。
そしてそれ以降、こうしてたまに先輩にお昼ご飯を奢ってもらっては先輩とデートをしている。
こんな関係もう終わりにしないと、と思いながらも言えないでいる私。
「今日は何が食いたい?」
「んーオムライス、とか」
「なら麦わら亭だな。あそこは美味い」
「はい、そこで」
洋食の麦わら亭。
そこのコックさんは基本的に何でも美味しいんだけど。
先輩の知り合いのお店で、よく行く。
「アコ、デザートは?」
「あ、大丈夫です」
先輩の奢りなのにデザートまで食べられる訳ない。
「・・・そうか」
「アコちゅわんにならサービスだよぉぉぉ!!!」
どん、と出された美味しそうなプリン。
「わぁ有難うサンジ君」
めろりーん、と目をハートマークにしてプリンを出してくれたコックさんは、
そのまま厨房に戻って行った。
「・・・・あれさえなきゃいい店なんだがな」
「男性へのサービスないですもんね」
「それは構わねェんだが・・・・」
「ていうかオムライスすらまだなんですけどね」
ま、いっかと口に入れたプリンは絶品で、思わず頬が緩んだ。
「それで、来週行きたいところはあるか?」
「たまには先輩の行きたいところでいいですよ」
「ホテルでも?」
「この間駅前に出来たカフェが気になります!!」
油断も隙もない!!
「了解」
先輩はそう短く言って楽しそうに笑った。
「でも・・・先輩のおかげで少しずつ貯金出来てます」
「1人で大変になったらいつでも言え、いつでも一緒に住むつもりだ」
「あはは、有難う御座います」
私が金欠な理由は、1人暮らしを始めたから。
・・・・でも私だって頻繁に先輩に奢ってもらってる訳じゃない。
それなりの覚悟があって始めたんだもん。
でもそろそろ言わないといけないことが、ある。
「・・・・・・あの先輩、私っ」
「アコちゃんお待たせしました、特製オムライスで御座います!」
口を開いたところでサンジ君のオムライス登場。
「で、こっちはビーフシチューだ」
・・・・この差ね。
「ビーフシチューも美味しそうですね・・・」
っていうかサンジ君の作るものは全部美味しい。
「一口食うか?」
「是非!」
「ほら」
突き出されたビーフシチュー。
でもこれは・・・・これは・・・・っ!!
あーん、ってやつで。
・・・・私に口を開けろと!?こんないい歳して!?
「・・・・・・・あー・・・・・」
それでもサンジ君のビーフシチューの誘いに勝てず口を開けた。
そこに優しく放り込まれたこれまた最高のビーフシチュー。
ああっ恥ずかしいけど口開けて良かった!
「幸せ・・・・」
「さっき・・・・何を言おうとした?」
「あ・・・・えっと」
美味しかったけど、言う勇気は何処かに飛んで行ってしまった。
「今度・・・食べたいケーキ2つあるんですがご協力をお願いしてもよろしいでしょうか」
「半分こ、ってやつだな?」
「です」
「そんな可愛い願いながらいくらでも聞いてやる」
「半分こしてもらえれば2種類食べられても1個分で済むんですよ・・・!」
「多くは聞かないでおこう」
「助かります・・・」
次の、日曜日。
デートの日。
・・・・今日は、いつもと違う服。
いつもと違うお化粧。
・・・・財布の中身も、ばっちり。
「ここです、先輩」
「混んでるな」
「・・・駄目ですか?」
さすが噂のお店、待ち列が出来てる。
「俺は平気だが・・・アコ今日はヒール高いだろう?きつくないか?」
「この後座れるし大丈夫です!スイーツの為なら!」
「疲れたら抱っこしてやるから言えばいい」
「・・・遠慮しておきます」
私と一緒に嫌な顔しないで並んでくれる、
優しい先輩。
仕事も出来るし、上司からの信頼も厚く部下にも慕われている、素敵な人。
雑談をしているうちに順番になって、無事に着席。
「チーズタルトとチョコレートのロールケーキとカフェオレで」
「紅茶を」
よし・・・・!タイミングは今しかない!
「先輩あのっ・・・・!今日ここのお金私が出しますので!」
「・・・無理しなくていいんだぞ?」
「それとこのお金も、受け取って下さい・・・・」
「この金は?」
鞄から出した封筒に、数枚の万札。
「今まで先輩に出してもらってたお金には足りてませんが・・・・」
「気にしなくていいと言ったはずだな?」
「違うんです・・・もう、本当に大丈夫なんです、ご飯ももう普通に食べられます」
金欠脱出した。
だから、もう。
「・・・・・それは、もう俺とは出かけられねェって意味か?アコ」
「そっ、」
「お待たせ致しましたータルトにロールケーキ、カフェオレと紅茶ですー」
・・・・タイミング!!!
「・・・・・っせんぱ、」
「卑怯だとは自負してる。弱みにつけ込んでいたことも理解してるつもりだ。だが・・・・っアコ?」
「・・・・・っ、ぅ、私駄目で・・・・ごめんなさ」
泣きそうだけど辛うじて泣いてない。
ぐっと堪える。
「・・・・自分を責める必要はない、アコ。俺が悪かったんだ」
「ちが、たい・・・・っ」
「たい?」
「タイミングぅ・・・・っ最悪・・・・っ」
お腹の鳴るタイミングも言おうとしたタイミングも実際の、タイミングも。
ずびびっと鼻水を啜って、
「私だってっほんとは先輩のことずっと好きだったんです!!」
叫んだ。
「・・・・初めて、聞いたな・・・」
「初めて言いましたから!私だっで卑怯なんです、奢ってもらってデートして、でも好きって言えない自分がっ嫌いでっ」
こんな素敵な人が私を好きなんて信じられないって思ってた。
でも・・・・ここまでしてくれる人を信じないなんて最低だ、と。
今日思いを告げようと気合を入れてきた。
「・・・っていうかタイミング悪すぎる自分がほんと、1番・・・嫌い・・・です」
あの時だって、先輩がご飯誘ってくれてカッコ良く決めたかったのにお煎餅1枚しか食べられない状態見られて。
「いや・・・タイミングは最高だ、アコ」
「・・・・・は?」
ぽかんと馬鹿みたいに開いた私の口にロールケーキが放り込まれた。
「ふぁ、ぉ・・・・・」
・・・・美味しい、けど何が・・・・あ。
口の中に固い物を感じて、取り出した。
「ガレットデロワってのを知ってるのか?」
「あ、ケーキに人形が入ってるっていう・・・う?」
・・・・入ってたよ?人形。
小さい人形。
「それはケースになってる、開けて見てくれ」
「・・・・・・・・・・・このタイミングで?」
1粒のダイヤが光ったネックレス。
「改めて聞く。俺と付き合ってくれないか?アコ」
「でっデート代割り勘なら!あ、でもピンチな時は助けて下さい!・・・っじゃなくて!」
それもだけど!
「私もずっと好きでしたよろしくお願いします!」
金欠関係なく、デートする関係になりたいんです。
タイミングを見計らってた私。
でもほんと、難しいんだよタイミング。