短編④
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「今日飲みに行かない?2人きりで」
「行きません」
「そう言わないでさぁ」
仕事終わりに上司に声をかけられたのでドキッとしたけど、
残業のお願いじゃなくて良かった。
と思ったのも束の間。
「部長奥さん居ますよね。誤解されたら困るんじゃないですか?」
「大丈夫大丈夫、酒飲むだけだから」
「それ奥さんに直接確認していいですか?」
「いやほら、ちょっとだけだからさ」
「私ならちょっとでも嫌ですけど」
「どうしても相談したいことがあるんだよ」
「それならここで聞きます」
ああ、しつこい。
残業じゃなかったけど面倒なことになった。
「酒の席で・・・・いや、誰にも聞かれたくない話しなんだ」
「私みたいな下っ端がお力になれると思えませんが」
「・・・・君つまらない女だな」
「面白い女性をお探しなら他を当たって下さい。御用がないなら帰りますけど」
「じゃあ食事でいいよ、イタリアン?フレンチ?」
思わず舌打ちが出そうになったのを堪えた。
「ラーメンで」
「は?」
「俺、美味い店知ってるぜ」
阿呆な上司が阿呆面をしたところで割り込んで来たのは、同僚のエース。
「ホント?エース」
「おう、食いに行かねェ?」
「行く行く!じゃ、そういうことで失礼しまぁす」
金魚みたいに口をぱくぱくさせている上司を背にエースと2人で会社を出た。
「疲れたぁぁ」
「お疲れ。特に最後のアレな」
「つまらない女だな、だって」
「気にすることねェよ、あんなの」
「大丈夫気にしてない。そんなことより美味しいラーメンが食べたい」
「ははっ、だよな!」
「ところでホントにあるの?美味しいお店」
「あるぜ、ちっと狭くて汚いんだけどな?」
「美味しければ全然オッケー」
苦笑するエースに頷けばエースは少しほっとしたように笑った。
エースのおススメのラーメン屋さんは、
メインの通りから少し横道に逸れたところにある、
話し通りのこじんまりとした、決して綺麗とは言えないようなお店だった。
「私チャーシュー麺」
「俺プラス餃子ライス」
カウンター5席、テーブル席が2つ。
でも鼻を掠める匂いは醤油のいい匂い。
ああ、お腹が空く。
「にしても部長最悪」
「しつこかったな」
「それもあるけど。何より奥さんいるのに」
私が1番怒ってるのは実はそこ。
「まぁなァ。まだ結婚して1年だろ?」
「結婚して何年だろうが関係ない」
「そりゃそうだ。でも飯くらい良くねェ?」
「2人きりなんて絶対駄目。エースはいいの?奥さんが自分の知らないところで男の人と2人きりで食事してたら」
「いや俺結婚してねェし」
「知ってるけど。もしいたら・・・まあ、彼女でも」
「彼女もいねェ」
「・・・・居ると仮定して」
エースは私の言葉に考えるように数秒沈黙。
そして、
「嫌だな」
と結論を出した。
「でしょ。そもそも誰にも聞かれたくない話しって何かしら」
「口説きたいだけだろ?」
「そう思う?」
「つーかそれしかねェだろ、あの顔じゃ」
「エースにまでバレてたんじゃおしまいじゃん」
「見れば誰でもわかるだろあんなの」
「まあ部長この間ナミにこっぴどくフられてたらしいから、次のターゲットは私ってとこなのかも」
「・・・・女なら誰でもいいのかよ」
「ね。最低」
「・・・・・なァ、それって」
「・・・・何?」
急にエースが真剣な面持ちになったから何かと思えば、
「・・・何でもねェ」
「何。気になる」
急に口を閉ざした。
「何でもねェよ、気にすんな」
今回私を助けてくれた恩もあるし、気になるんだけど。
「・・・・もしかしてエース、ナミのこと好き?」
「は?」
「だから部長に怒ってるのかなって」
「あー・・・ナミにはルフィが世話にはなってるから感謝はしてっけど、そんなんじゃねェ」
「ああ、新入社員にして数々の伝説を持つ弟君」
「・・・・面目ねェ」
ぺこりと頭を下げるその顔はすっかりお兄ちゃん。
「いい子だもんね、大丈夫。将来に期待」
「ありがとなアコ」
「で、何気にしてたの?さっき」
私もいい加減しつこいかな、と思いながら聞いてみたら、
「や・・・・やっぱ部長みたいなのが好きか、女って」
「はい?」
訳のわからない返答が返ってきた。
「アコが女なら誰でもいいのかって怒ってたのって・・・部長のことホントは好きだからとかじゃ、ねェの?」
「奥さん大事に出来ない人なんか絶対好きにならない」
「・・・ホントはイタリアンとかフレンチとかがの方が喜ぶんだろ?」
「・・・・どしたのエース」
困惑する中注文の品が到着。
「ほらエースラーメン食べよう。いただきます」
「・・・・いただきます」
スープを一口、からの麺を啜る。
「ん!!めっちゃ美味しい!!美味しいよエース!!」
「・・・・そ、そっか」
「そもそも私がラーメン食べたいって言ったんだから」
私の要望を叶えてくれたエースに感謝だ。
「・・・・・俺は、浮気とか絶対しない」
「うん?うん、そうだねエースはしないタイプだよね」
「絶対大事にする」
「・・・・う、うん」
「だから俺と・・・・・つ・・・・っ、付き合ってくれま、せん、か」
顔を真っ赤にしたエースからのまさかの告白。
・・・・・さっき、彼女も居ないって聞いてほっとしたのバレたのかしら。
助けてくれたのがエースで嬉しかったの、バレたのかしら。
「・・・・餃子1口、くれるなら」
「・・・・喜んで」
今度部長に声をかけられたら、
恋人の為に断ることにしよう。