短編④
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「随分と念入りに化粧してるみたいだが、誰と何処へ行くんだ?」
「シャンクスには関係ない」
「・・・あまり遅くなるようなら連絡くれ」
気まずさそうなシャンクスに私は無言でのままドアを閉めた。
そりゃあメイクだって念入りになる。
だって今日の相手は、
「珍しいのね、喧嘩?」
「そ。喧嘩」
・・・ロビンちゃんなんだもの。
少し前から約束してたんだけど、シャンクスに話す前に喧嘩になってしまったから、
心配してるかもしれない。
優しい恋人のシャンクス。
交際記念日に同棲を始めてもうすぐ1年。
・・・・でも私今、シャンクスに対して怒ってるから。
「あら。まさか浮気?」
「記念日に一緒に飲もうって言ってたお酒飲んじゃったの」
「お酒の好きな人だと知ってたけど・・・それは酷いわね」
「しかも1人で呑んだんじゃないの」
「まさか・・・女の人?」
「ううん、ヤソップさんとか」
「飲みたいって言われて断れなかったんじゃないかしら」
「・・・・断って欲しかった」
シャンクスがとても友達思いなのは知ってる。
・・・それでも、断って欲しかったと思うのは駄目かな。
「それで大喧嘩?」
「喧嘩・・・・というか私が一方的に怒っただけ、なんだけど」
シャンクスはひたすら謝ってくれた。
「記念日はいつ?」
「明後日」
「なら今日は帰って謝った方がいいんじゃない?」
「無理。私シャンクスに大嫌い!って言っちゃったし・・・・」
謝ってくれたシャンクスを許すことが出来ずに、冷たい言葉を投げた。
合わせる顔ない。
「・・・・仕方ないわね、お茶だけ付き合ってあげるわ」
「ロビンちゃああん・・・!!」
今日はロビンちゃんとサンジ君のカフェに行って、
ショッピングして・・・って満喫するはずだったけど。
・・・仕方ない、か。
「ん!!やっぱりサンジ君のガトーショコラ絶品!!」
「紅茶も美味しいわ」
「めろりーん!!!」
絶妙な甘さに心が少し落ち着いた。
「・・・ここでシャンクスにお土産、買って行こうかな」
なんて気持ちになった。
1度口にした言葉は戻らないから。
・・・反省。
「サンジ君、おススメある?」
ところが、
「おっと、そいつは止めた方がいいな」
「え?」
「優しくて女神のようなアコちゃんにぴったりのアイディアだが・・・賛成出来ないよ」
「・・・・何で?」
「俺から言えるのはただ1つ。早く家に帰った方がいい」
「・・・・・ん、そうする」
サンジ君の優しくも真面目な瞳にほだされて頷いてしまった。
「仲直り、出来るといいわねアコ」
「有難うロビンちゃん・・・!!」
ということでこっそり帰宅。
「ただい、ま・・・・・」
家に入ってすぐにいい匂いに気づいた。
美味しそうな匂い。
「帰ってきてくれたかアコ・・・・!」
「あ、シャンクスただい・・・・・・・・・」
・・・・玄関まで迎えに来てくれたシャンクスはエプロンを着用していた。
「楽しめたか?」
「・・・・・うん」
「この時間に帰って来たということは夕飯、食うだろう?」
「食べる」
「もう出来てるんだ、食べよう」
「・・・・帰るかどうかもわからないのに作っててくれたの?」
「ああ、今日のは自信作だ」
まだ笑えない私にとびきりの笑顔を向けてくれたシャンクスに泣きそうになった。
「・・・・有難う」
そしてずらりとテーブルに並べられたご馳走。
「すごい・・・・」
「この間の代わり、と言っちゃなんだが」
どん、と置かれたお酒。
そのボトルには私の名前が刻まれていた。
「こんな・・・・・・素敵・・・・」
「気に入ってくれたか?」
「・・・・っ、勿論だよ有難うシャンクス・・・!!」
感極まって思い切りシャンクスに抱き着いたら、
シャンクスはしっかりと受け止めてくれた。
「これで許してくれとは言えねェが、少しでも喜んでくれたんなら何よりだ」
「・・・・ねえ、何で約束してたお酒飲んだの?何か理由があったんでしょ?」
問い詰めてみれば、シャンクスは苦笑しながら口を開いた。
「あれはアルコール度数が高い上に味も良くない、記念日に飲む酒じゃないとヤソップから聞かされてな」
「え、そうなの?」
「試しに開けて飲んでみたらその通りだったもんで、全部飲んじまった」
「それならそうと言ってくれれば・・・」
「どんな理由であれ約束の酒を飲んだことに変わりはねェからなァ」
「・・・・ごめんねシャンクス。大好き」
馬鹿だなあ私。
何でもっと信じてあげられなかったんだろう。
「その言葉が聞けてほっとした。実はデザートも買ってあるんだ、あとで食べてくれ」
チラリと見えたそのケーキは、
「あ、これサンジ君のところの・・・?」
「ああ、今日行って買って来た」
「実は私も行ってたの・・・ロビンちゃんと」
「なるほど、それで今日は格別に可愛い訳か」
「ごめんね言わないで出掛けて」
「いいさ、アコが無事に帰って来てくれただけで十分だ」
「・・・本当に、有難う」
ちゅ、と額にシャンクスの唇が落ちて。
「さあ、食ってくれ」
それを合図に2人きりの宴が開始。
「頂きます!」
それから2人で他愛のないことを話して。
美味しいご馳走もぺろりと平らげた。
「デザートの準備をしよう」
「あ、有難う」
可愛いお皿に可愛いケーキ。
でも私の分だけ。
「シャンクスは?」
「俺はいいんだ」
「・・・・そう?頂きます」
ケーキにナイフを入れた瞬間、カチリと何かに当たる音がした。
「当たりだな」
シャンクスがにこにことそれを見て言った。
「・・・・人形?」
聞いたことある、ガデッドデロワというケーキを。
この人形、箱になってる?
クリームを布で拭いて開けて見た。
そこには。
「・・・・・嘘」
ダイヤモンドの、指輪。
「本当は明後日の記念日に、と思ったんだが・・・すまん、待ちきれなかった」
まるで悪戯が成功した子供のようなシャンクスの笑顔。
その手には私の名前が入ったボトル。
・・・くるりと向けられた裏側には。
【Please marry me】
「・・・・有難う、私は幸せです」
「これからも俺が幸せにしても問題ないか?」
「末永く」
よろしくお願いします。
こうして喧嘩したり、仲直りしながら。
ずーっと、側に居るからね。