短編④
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最近アコの様子がおかしい。
妙に俺によそよそしく、
目が合うと逸らされる。
・・・エースと居ることが増えた。
心当たりがあるとしたら1つだけしかねェ。
ホームシック、だ。
もとの世界に帰りたくなったことを俺に言えねェんだろうよい。
いつかこんな時が来るかもしれねェと覚悟はしちゃいた。
・・・・が、実際来るとなるとかなりのモンだ。
「アコちゃんから直接言われた訳じゃないんだろ?」
サッチと酌み交わす酒が不味い。
「・・・心当たりはそれしかねェんだよい」
「エースのこと好きになったとか」
「それならそれでいい」
「いいんだ!?」
「エースならアコを幸せに出来るだろうよい」
帰りたいならどうにも出来ねェが、
エースとくっつきてェなら何とかしてやれる。
「・・・ま、とりあえずはアコちゃんと話し合いな」
「アイツから話してくれるのを待つだけだい」
本当に言いたいことがあるならちゃんと言える。
アコはそういう女だからだ。
だから俺からはまだ何も言わない。
「で、そのアコちゃんは今何してんの?」
「エースと飲んでるよい」
「あんだけマルコマルコ言ってたのになァ」
「・・・・仕方ねェよい」
と言いながらも気になるのは事実。
「気になるんだろ?行って来いよ」
「・・・・悪いねい」
重い腰を上げてアコを迎えに行けば、
何やら深刻そうな顔でエースと酒を飲んでいる。
・・・恋だの愛だのって感じじゃねェな。
「アコ」
「まっ・・・・マルコさん・・・」
俺の顔を見て気まずさそうに目を逸らすアコ。
もう何度目だ。
「そろそろ部屋に戻るよい」
「わ、私まだエース君と飲んでます!」
今までなら間違いなく着いて来ただろうアコが。
「・・・そうかい。なら俺も一緒に居るよい」
「え」
明らかに嫌そうな反応を示され流石に舌打ちを隠せなかった。
「俺が居たら問題あるのかい?邪魔か」
「今日はもうやめとこうぜアコ」
とエースが言えば、
「・・・だね」
と頷いて立ち上がった。
・・・エースの言うことは聞くのかい。
気に入らないねい。
「・・・行くよい、アコ」
「はぁい」
渋々と言った風に着いて来たアコは俺を見ようとしない。
「・・・アコ」
部屋に入ってすぐに手首を掴んだ。
・・・こうして俺が掴んだから、こいつは今ここに居る。
「・・・なん、でしょう」
「・・・俺に言うこと、あるだろい?」
「はて、何のことだか」
言ってくれるまで待つ、と決めていたのにこのザマだ。
情けねェ。
「もう、いいんだアコ」
・・・アコを怖がらせねェように。
意識して優しく頭を撫でた。
「もしかしてバレてます・・・?」
「ああ、だから全部言ってみろい」
俺を見上げるアコの不安気な顔。
もう1人で苦しませやしねェと腹を括った。
「・・・怒ってますか?」
「怒ってねェよい」
だからもういいんだ。
そんな、泣きそうな顔をするな。
「・・・私、ごめんなさい。こんなこと、思うなんて」
「アコが気にすることはねェ」
帰りたいと思うのは当たり前のことだ。
だから、必ず俺が。
「じゃあもういっそパイナップルってことで良かったりします?」
「・・・・・・あ?」
「・・・・え?」
思ってもいなかった名詞がアコの口から出て来たもんで、
思わず低い声が出た。
「俺の聞き間違い、だねい?」
「え、あれバレてるんですよね何故か。でもってマルコさん怒ってないんですよね!?」
「何がパイナップルで良いって?」
「もうすぐマルコさん誕生日だから」
プレゼントって思った時にパイナップルしか思いつかなくて、と彼女は言った。
「・・・・・へェ」
「それで罪悪感から顔合わせられなかったのとかエース君に相談してたのとか」
バレてたんですよね!?
と青い顔。
・・・帰りたいんじゃ、なかったのか。
幾ばくかの呆れと、安堵から思わず手が出た。
ごつん。
「ったぁぁい!!やっぱ怒ってるじゃないですかぁ!!」
「・・・・ったく、俺の誕生日?忘れてたよい」
「・・・あれもしかして私騙された!?」
「もとの世界に帰りたいのかと思ってたよい」
本音を口にすれば、
アコが俺を睨み付けた。
「言う訳ないじゃないですか!もう信用薄いなあ私、心外です!」
「悪い、よい」
素直に謝れば今度は微笑んだ。
「私がマルコさんから離れたいなんて思うことはないです」
そして俺に抱き着き、
「離しませんからね!」
と宣言。
笑った顔が好きだ、なんざ気障すぎて言えねェが。
「俺もだよい」
これくらいは、な。
「ホントはサプライズにしようと思ってたのに」
もうこうなったらマルコさんが決めて下さい、プレゼント。
・・・この歳にもなって誕生日くらいで嬉しくもねェ。
そう思っていたが。
アコが祝ってくれんなら悪くないかもしれねェよい。
「アコが居てくれんならそれだけでいい」
「あ、じゃあその日島に着きますよね?デートしましょ!」
「好きなモン買ってやるよい」
「いやそれ逆です!私が買ってもらってどうするんですか!」
「いいんだよい、それで」
「・・・じゃあ勝手にお祝いするんでいいです」
「ありがとよい、アコ」
出会った時からアコには敵う気がしねェ。
これからも敵わないんだろう。
・・・・それで、いい。