短編④
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海岸で私は待っていた。
その時を、ただ待っていた。
目の前にやって来たのは赤い髪の人だった。
「この島の人間か?」
「・・・・・そう、ですが」
「島を荒らすつもりはねェんだ、食べ物を少々補給したい。勿論金は払う、案内してもらえないか?」
・・・・・どうやら海賊らしい。
「ごめんなさい、私には出来ません」
「・・・・忙しいか?」
彼にはそうは見えないだろう。
だって私は海を見てぼーっとしていただけなのだから。
でも今の私にはこれが大事なこと。
「私生贄なのでここに居ないといけないんです」
「生贄?」
「神様に捧げる供物なんです、私」
だから神様を待ってるんです。
正直に伝えたら赤い髪の人は一瞬目を丸くしたあと、
「だっはっは!そうか!その割には堂々としてる、たいしたもんだ!」
・・・・何故か豪快に笑った。
生贄だと伝えてこんな風に笑われたのは初めてだ。
「生贄になることは前から決まってたので」
唯一親が居ない私が生贄だと。
前からわかっていたこと。
「覚悟が出来てるってことか」
「そうですね。色々覚悟してきました」
「色々?」
「神様ってどんな姿かなとか人語話せるのかなとか色々想像して来たので」
せめて来年からは食べ物とお酒に変えてくれないか交渉してみようかとか。
「・・・・面白いこと考えるなァお嬢さん」
「・・・・アコです」
何故だろう、私は生贄なのに。
もうすぐこの一生を終えるのに。
何故かこの人には名前を伝えたかった。
もう2度と会うこともないだろう赤い髪の人。
「アコ。いい名前だ」
「・・・有難う」
「生贄には俺がなろう」
「・・・・・・・は?」
「だから食べ物を買えるところを案内してくれないか?出来れば酒もあると有難い」
笑顔で何を言ってるんだこの人は。
「だっ駄目です!生贄は若い娘じゃないと・・・災いが・・・・」
「若い娘?そりゃあまた随分と我が儘な神だな」
「た・・・・確かに・・・!」
言われてみれば若い方がいいなんて確かに我が儘だ。
・・・・まあでも神様だし、そんなもの?
考え込んだ私に赤い髪の人はにっこりと微笑んだ。
「俺はシャンクスだ、アコ」
「シャンクス、さん」
「生贄にはなってやれねェみたいだが神には俺も興味がある」
「え・・・・」
「このままここで待ってれば神が来るんだな?」
「・・・・の、はずです」
「よし。じゃあ俺も一緒に待つことにしよう」
「ええええええ!?」
「どれくらい待てばいいんだ?」
「・・・・日が、暮れるくらいに現れると」
言われた。
ちなみにもうすぐだ。
「そうか。じゃあもうすぐだな」
「え、あの、でも・・・・」
見ず知らずの海賊さんを危険な目に遇わせる訳には・・・・!
「ちょうどいい」
「ちょうどいい、ですか?」
「酒飲むにゃ明るいより暗い時がいいだろう?」
「は!?」
「ああ、美味い酒と肴のある酒場も案内してくれると助かる」
・・・・この人は、助かる気でいるのか。
神が本当に居たとして、敵うと本気で。
・・・・そして、この先の未来を語る。
「アコは酒は飲めるのか?」
「飲めます・・・・一応」
「そりゃいい、一緒に飲もう」
「あの、えっとでも私一応このあと生贄になる予定でしてね?」
何故私と一緒の未来を語るのか。
「生贄っつーのは帰れないものか?」
「・・・・神に食べられるものだと」
実際に今まで帰って来たコは1人も居ない。
そう聞いている。
神が動物のようなものなのか。
人の形をしているのか。
何も知らないけど。
「いいか、アコ」
「は・・・・い」
突然シャンクスさんが真剣な顔で私を見つめて来たのでドキッとした。
「俺は仲間との美味い酒の為なら何でもする」
「・・・・・・はあ」
さようで。
お酒ってそんな美味しいものだったっけ。
「もうすぐ日が暮れるな」
「・・・・そうですね」
「生贄になりたくないとは言わなかったのか?」
「言ったところで聞き入れてはもらえません。毎年生贄が必要なんですから」
誰かがなる、それなら身寄りのない子がなる。
それは当然だとも思うし。
「毎年か・・・・そんな贅沢な神はまだ来ないみたいだな」
「・・・・そうですね」
夕日が海に落ちた。
「来ないなら仕方ねェ、行こう」
「・・・・何処に?」
「食料と酒の確保だ」
「・・・案内します」
シャンクスさんと話してると真剣に悩んでる自分が馬鹿みたいに思えて、立ち上がった。
「アコ!?あんた何でここに・・・」
まあ当然もう2度と会うことのないと思ってた私が居れば皆は驚く訳で。
「・・・隣に居るのはまさか海賊かい!?」
「食料の調達に来たんだ、この町をどうにかするつもりはない」
でも驚いているのは私が居ることだけじゃない。
シャンクスさんが居ることにもだ。
「・・・・その子なら好きにしていいよ。食べ物も酒も持って行きな」
え、いいの?
会う人会う人皆同じような反応を示す。
一通りの買い物をしたあと、
とりあえずお酒を飲みたい、と言うので小さいけど美味しい肴のお店を案内した。
ここは・・・・ここだけは私も気に入っていた場所。
まさかまた来れるなんて思ってもみなかった。
「そうかい、赤い髪の人・・・あんたがこのコを見つけてくれたんだねえ・・・」
「でもおばさん、私生贄なのに・・・」
「そりゃあ神とて姿を現せやしないさ。四皇相手じゃ勝ち目はなかろう」
「四皇ってそんなすごいの?」
驚く私にシャンクスさんは苦笑を浮かべた。
「海に興味あるか?アコ」
「あ・・・・・あります・・・・!」
「俺達と海に出てみる気は?」
「えええ!?」
「楽しいぞ、世界は」
・・・・この人の隣で過ごしたら、
楽しく生きれるのだろうか。
生贄になっても未来を語れるくらい強くなれるんだろうか。
「でも、災いが・・・・」
「もう来ないかもしれないよ、災いは」
不意におばさんが呟いた。
「え、何で・・・?」
「アンタは知らなくて当然だ。神の正体は海軍だからねえ」
「海軍!?」
「なるほど、納得した」
「海賊を島に入れない、守るという約束で生贄を捧げてたのに・・・この有り様だろう?しかも四皇と来たもんだ」
「今回現れなかったのは俺達に敵わないと踏んだからってことだな」
「・・・・・そういう、こと」
「わかった。ここは俺の島にしよう」
「はい!?」
「そうすればここはもう安全。生贄を出す必要もない」
「たし、かに・・・・・」
「生贄になる覚悟があったんなら、海賊に掻っ攫われる覚悟は持てないか?」
「わ・・・・・・・・私・・・・・・でいいん、ですか?」
「アコがいい。俺は神より我が儘なんだ、悪いが大人しく引き下がるつもりはない」
「行きたいです・・・!」
私を変えてくれる、赤い髪の人。
「決まりだな」
「シャンクスさんの大切なお仲間さんとも一緒に、お酒を飲んでみたい」
仲間との美味しい酒の為なら何でもする、とシャンクスさんは言った。
そんな素敵な時間なら共有してみたい。
「ん・・・・そうだな、それもいいが・・・・その前にもう少しここで口説かせてもらうとするか」
「・・・・海になら行く覚悟は出来てます」
「だっはっは、そっちじゃねェんだ!」
大切な人が、出来ました。
これからずっと側に居ようと思います。
(興味が尽きません!)
(お互いにな)