短編④
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お頭に好きだ、と言われた。
その日の夜のことは覚えてる。
妙に真剣なお頭から目が離せなかった。
・・・・・でも、じゃあ。
その日から私たちは恋人か、と問われれば。
非常に困る。
何故かと言うと。
その日お頭は酷く酔っていたからだ。
何処まで本気で取っていいものか。
・・・・・・まあ、かくいう私も同じくらい酔ってた訳で。
『好きだアコ、俺の女になる気はないか?』
『私も好きです・・・・!』
の会話しかしてない私たちは今。
どんな関係と言えるのか。
そもそもお頭覚えてるのかしら。
この会話から数日が過ぎたけど何も変わらないし。
・・・・・覚えてないに1票。
覚えてなくても、お頭の気持ちから出た言葉ならまだいい。
別に私のこと何とも思ってなかったら?
・・・・そう思ったらこっちから動くことも出来ない。
でもなかったことにするには思い出が強すぎる。
覚えてますか、と聞く勇気も度胸もない私はどうしたらいいのか。
「おうどうした、浮かない顔じゃねぇの」
「・・・・ヤソップさん」
甲板でぼーっと海を見ていたら声をかけられた。
ああ、これがお頭だったら。
「何だぁ、悩み事か?おじさんに話してみな」
「嫌です」
「何でだよ」
「ヤソップさんに話すとすぐ皆に伝わる」
イコールお頭にも伝わる、ということだからだ。
「いやいやおじさんを信じて話してみ?」
と言うその口元のニヤつき加減で。
「信用出来ないと判断します」
「ひっでェな・・・よしわかった」
「何ですか」
「待ってろ」
「・・・・・・は?」
待ってろ、と言われたので仕方なく待つこと数分。
「俺には聞かせてくれるな?」
「え。・・・・・おか、しら」
「ヤソップから聞いたぞ、悩んでるそうだな?」
「え、はあ、まあ」
「俺がお前の信用に足る男なら悩みを話すだろうと言われた」
「・・・・マジですか」
「さあ話してみろ」
にこにこと話しかけて来るお頭。
私が話さない・・・話せないことなんか欠片も疑ってない目。
でも無理です。
まさに貴方のことで悩んでるんで無理です!!
「え・・・・っとぉ・・・・」
「・・・・俺は信用されてねェか」
「いやそういう訳じゃ・・・・っ」
あからさまに落ち込んだ顔を見せられて思わず慌てるけど、
「なら話してくれるんだろう?」
と来られて困る。
いやいや、私も赤髪海賊団の一員!
こんなことを怖がってちゃ駄目。
女は度胸!!
「こ・・・・この間飲み過ぎちゃったなあって反省してたんです」
まあいきなりは無理だけどね!
「心配することはねェ、俺も飲み過ぎた」
「お頭はいつも飲み過ぎですけどね」
「だっはっは!そう言ってくれるな」
「事実じゃないですか」
・・・・この感じだと脈はなさそう。
「それで、体調が優れねェようなら船医を呼んで来るがどうする?」
一瞬肩を落としたけど、
お頭の優しさにやっぱり舞い上がってしまう。
「あ、それは大丈夫です二日酔いとかはないので」
「そうか?辛かったら無理するなよ」
「有難う御座います」
にっこり笑ってはい終わり。
になるかと思いきや。
「で?」
・・・・・・で?と来たもんだ。
「・・・・はい?」
「何に悩んでるんだ?」
「・・・・や、だから先日飲み過ぎたことをですね」
「それだけじゃないな?」
「・・・・・うぐぅ」
何でバレたんだろ。
「この際だ、全部話してみろ」
「・・・そう、ですね」
腹括るのは今しかない。
「実は・・・・好きな人との関係に悩んでて」
「・・・・そりゃあ、初耳だが」
お頭は一瞬目を丸くしたけどすぐにいつもの顔に戻った。
覚えてる、のかな。
「この間告白されて私も好きですって返したと思ってたんですけどそれ以降何もなくてですね」
思い切って口にした思い出。
気になるお頭の反応は何かを少し考えるように顎に手をやって数秒。
「そうか・・・・実は俺も悩んでいることがあるんだが、聞いてくれるかアコ?」
「え、あ、はい」
結局私の悩みは解決されないまま、
何故かお頭の悩みを聞くことになった。
「この間飲んだ時惚れた女に好きだと伝えていい返事をもらえたんだ」
「・・・・・・はあ」
「だがお互い飲んでたもんで、相手が覚えてるかわからねェんだ」
「・・・・・・なんと」
「どう思う?」
「そのままでいいと思います」
「・・・・いい、か?」
お頭が首を傾げた。
「たぶん今夜お酒を飲んでないその人から好きですって言われると思います」
「・・・そうか、じゃあ今夜は俺も酒は飲まないで待ってるとしよう」
「そうして下さい」
今夜はお酒に飲まれずに。
愛を覚えていよう、2人で。