短編④
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恋人が怒っている。
原因は不明。
黙って他の男性クルーと時間を過ごした覚えもないし、
料理が失敗したようなこともないと思う。
少なくともサッチさんは何も言って来ないし。
エースに聞いても首を捻るだけだったし。
・・・・・はて、我が恋人のマルコさんは一体何に怒っているのか。
ただ不機嫌な訳じゃない。
私に対してだけ怒っているのは明白。
だって皆には普通だもの。
私にだけ目を合わそうとしないし、
すぐ逃げるし。
・・・・絶対私に何か怒っている。
思い切って私何かしましたかと聞いてみたいところだけど、
その隙も与えてくれない。
・・・・・・原因もわからず、謝罪も出来ない。
どうしろと!?
もうこうなったらアレしかない。
昼過ぎ、おやつにはちょうどいい時間。
紅茶にクッキーに本。
これで完璧。
インマルコさんの部屋。
待ち伏せ大作戦。
でもこれで私が居るの見た瞬間に出て行かれたらどうしよう。
どうしようもない。
泣くしかないぞ。
なんて意気込んでたのに、
「あ」
作戦開始早々にマルコさんが帰って来て。
私の姿を見た瞬間に表情1つ変えずそのまま踵を返した。
「まっ・・・・・・・・・マルコさんの分もクッキーありますですよ!!!」
必死に何か言わなければと口を開けたら出て来たのがコレ。
「・・・・いらねェよい」
マルコさんは私を一瞥して短く一言。
まっ、負けない!!
今までは大人なマルコさんに釣り合うように、
面倒にならないように。
甘えないように。
大人しくしてきたけど。
「じゃあ私はどうですか!?」
「・・・・は?」
「私は、いりませんか」
「今は忙しいんだい」
「じゃあいつならいいですか?」
「・・・・アコ」
はあ、とマルコさんがため息を吐いて完全にこちらを向いた。
「じゃあ1個だけ聞かせて下さい、マルコさん私に何か怒ってますよね!?」
せめてこれだけでも。
覚悟を持って聞いたのに、
「これが普通だよい」
マルコさんはあっけなくそれだけ答えて去ってしまった。
え・・・・・・。
嘘、普通?いやいや普通じゃないよ!?
言いたくない?それ程怒ってるの・・・・?
これは少し距離置いた方がいいのかもしれない。
寂しいけど。かなーり寂しいけど。
マルコさんの部屋で食べたクッキーは固くて。
紅茶は冷めてて美味しくなかった。
「という訳でこんばんは」
「おい」
夜マルコさんの部屋にお邪魔しに来ました。
「紅茶もクッキーも完璧です」
「・・・・構ってやれねェんだ、悪いが出てってくれねェかい」
やっぱり嫌そうな顔のマルコさん。
「あ、どうぞお構いなく」
「アコ」
怒気を含んだ声を聞き流して、
「これは独り言です」
「・・・・・独り言?」
「もし私が、マルコさんが口にするのも嫌な程のことをしてしまったのなら謝りたいです」
優しいマルコさん。
大好きだから。
「・・・・ねェよい、そんなもん」
「もし本当に何もないなら側にいたいです」
好きだと伝えたのは私から。
それでもマルコさんは受け入れてくれた。
甘えてる。
そんなのわかってるけど。
「・・・・・怒ってるように、見えたかい?」
「え、むしろ怒ってるようにしか見えません」
「参ったねい」
マルコさんは今日初めて表情を変えた。
と言っても苦笑、だけど。
「あ、紅茶とクッキーどうぞ」
「頂くよい」
今度は紅茶にもクッキーにも手を出してくれてほっとした。
「美味ェ」
「・・・有難う、御座います」
それからマルコさんは天井を仰いだ。
「・・・・マルコさん?」
「怒っちゃいねェ。これは本当だ。アコに非はないよい」
「じゃあ悩み事ですか!?私お力になりたいです!」
無力なのは100も承知だけど!
「それだよい」
「へ?」
それ、と言われても。どれ?
「アコの敬語が悩みなんだよい」
「私の敬語が!?」
やっぱり私に非があったじゃありませんか!
「恋人になっても変わらない言葉遣い、気にならないと言っちゃ嘘になる」
「あ・・・・・・」
そっかそうっだよね。
距離、感じちゃうよね。
・・・寂しい、よね。
気を付けます、と言おうと口を開いて。
「だが嫌いじゃねェ」
「・・・・と、おっしゃいますと?」
「その敬語がアコって感じがするだろい?」
「そ・・・・・・・・そう、ですか?」
「たまに出る変な敬語も可愛いと思ってる」
「ええええ!?」
それは恥ずかしいですよ!?
「それを言うか言うまいか迷って、このザマだ」
「え・・・・私に会いたがらなかったのって」
「顔見る度に悩んじまうから悪いと思ったんだよい」
・・・・・・・・・マルコさんて。
マルコさんて!!!
「呆れたかい?」
「可愛い・・・・・・!!!!」
敬語は徐々になくしていくことに決まりました。