短編④
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『お前はもう仲間じゃねェ』
はっきりと今でも覚えてる。
お頭の声で、
お頭の顔で、
冷めた目で。
そう言われたのを。
・・・・・・・・・夢の中で、だけど。
お頭を筆頭に皆が私を置いていく。
私は突然の出来事にショックで言葉も出ないし、身体も動けなかった。
・・・・・・・・もし、本当に現実で同じことを言われたら。
私はどうするんだろう。
・・・・・・・どうすれば、いいんだろう。
「寝不足か?アコ」
「お頭・・・・おはよう御座います」
食堂でコーヒーを飲んで今朝の夢を思い出していたら、
お頭が顔を覗きこみながら隣に座った。
「具合悪いならまだ寝てていいぞ?」
「や、大丈夫です。ちょっと夢見が悪くて」
「ははっ俺達が死ぬ夢でも見たか」
「・・・・・・・そんなとこです」
言えなかった。
貴方に必要とされなくなる夢でした、なんて。
口にしたら本当になってしまいそうで、
怖くて。
不安と恐怖で頭がいっぱいになった私に、
「死なねえよ」
力強い声。
そして、
頭の上の手。
「・・・・・・・・・・・・・はい」
大丈夫。
私はまだ、この人の仲間でいられる。
「あ、じゃあ私掃除してきちゃいますね!」
「おう、頼む」
にか、っと笑ってくれたお頭にほっと肩を撫で下ろして。
私は船内の掃除を精一杯頑張る。
・・・・・・・・大丈夫。
私はまだ、必要とされてる。
えーと後はモップと、
お頭の部屋も掃除したいなあ。
何時ごろなら行っていいかお頭に確認しよ。
そう思ってすぐにお頭の部屋まで、向かった。
お頭の部屋のドアの、直前で。
「いいのか、お頭」
ベンさんの真面目な声が聞こえて思わず立ち止まった。
・・・・・・・・・真剣なお話し?
入ったら邪魔かな。
出直した方が良さそう。
考えてくるりと背中を向けた瞬間。
「アコの気持ちも考えてやれ」
私の名前が聞こえて、
ドキッとした。
・・・・・・・・・・私?
何かしたっけ?
続いて聞こえてきたのは、
やっぱり真面目なお頭の声。
「あァ。・・・・もうアコは仲間、なんて言えないな」
ちょっ、
・・・・・・・・・ちょっと、待って。
脳裏に過ぎる今朝見たばかりの夢。
夢と同じように私は動けない。
「傷つけるなよ、お頭」
「俺だって傷つけたくはねえさ。でも難しいんだぜベン」
「アコはまだあんたのことを尊敬してる」
「・・・・・・そうだな」
「アコも薄々勘付いてると思うがな」
2人の会話を聞きながら、
私はドアノブに手をかけていた。
「そーいう話しっ!!」
思い切りドアを開けて、叫ぶ。
目に入ってきたのは、酷く驚いているお頭の顔と、
頭を抱えてるベンさんの姿。
「・・・・アコ?」
「そーいう話しは私の前でっ!して下さい!!」
2人を睨みつけると、
「ほらみろ。俺は知らん」
ベンさんが煙草を取り出しながら、部屋を出て行った。
「・・・・・・・・・・お頭!」
「聞いてたのか、アコ」
苦笑を浮かべながら、呟くお頭。
「聞いてました」
「そうか」
そして短い返事。
「そうか・・・・って、それだけですか」
「他にどう言えばいい?お前は全部聞いたんだろう」
「・・・・・・・ちゃんと、私の目を見て言って欲しい、です」
それが例え、船を降りろ、っていうことでも。
「・・・・・・・言ったら気持ちは変わるのか?」
「・・・・・・・・・・・・はい」
お頭がそうしろ、と言うのなら。
辛いけど、
悔しいけど。
・・・・・・・・悲しいけど。
船を、降りる。
「なら、言おう。アコ」
「はい・・・・っ」
覚悟を決めた。
のに、
自然と目に溜まる涙。
泣くな。
泣くな私・・・っ!!
「好きだアコ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、い?」
ぽろ、と零れ落ちた涙。
でも私の思考は完全に止まった。
「俺の恋人として側に居てくれ」
「・・・・・・・・・・え、と?」
え、何が?
どういうこと・・・・!?
「言えば気持ちは変わる、と言ったな?」
「いや、だって私船降りるんじゃ・・・・」
疑問をそのまま口にしか出来ない私にお頭は、はあああ、と深いため息を吐いた。
「・・・・・・・お前いつから聞いてた?」
「え?えーっと、ベンさんが、いいのか、って言ったとこです」
「・・・・・・全部聞いてなかったんならそう言え。ったく、時期を見て言うつもりだったんだぞ俺は」
「だって・・・お頭が、もう仲間として見れない、ってっ!今朝の夢、とリンク、して」
だから私、は。
「そりゃ夢だろう?・・・仲間として見れねェだろ、好きな女を」
「べ・・・ベンさんが、いいのかって言ったのは」
「本当に告白すんのかって意味だ」
身体の力が一気に抜けた。
「はぁぁ・・・・」
「ため息つきたいのはこっちだぜ・・・アコ。俺はてっきり脈ナシだと思ってたのに」
「・・・・・・・・のに?」
「お前がはっきり言えば気持ちが変わるっつーから期待しただろ」
何処か拗ねたようなお頭に、
こみ上げるのは嬉しさ。
涙も、止まった。
「・・・いいえ、変わりました。私」
「アコ?」
「もう、絶対船降りてなんかあげません。ずっとずっとお頭の側に居ます」
「俺の女として?」
「・・・・・・・・・・はい」
でも私は我が侭だから、
「仲間としても、お頭の恋人としても」
ってお願いしてもいいですか?
夢と同じように、
仲間じゃなくなるのも嫌だから。
「上等だ、アコ」
嬉しそうに笑ったお頭に、
今朝見た夢は、
もう忘れた。