短編④
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「明日父さんが海軍に捕まるかも」
「ありえねェ」
「・・・・・・・・明日世界がひっくりかえるかも」
「絶対ない」
「いや、でもさ」
もっとあり得ないことが起こってるんだけど。
「エースが風邪引いて寝込んでることのほうがあり得なくない?」
今エースはベッドの中。
顔は真っ赤で、辛そう。
・・・・・・・・珍しく弱弱しいエースの姿。
お見舞い中の私。
サッチさんにはちゃんと許可をもらった、
・・・・・・・・というか、
『この隙にエースをモノにしちまえ!』
とか言われた。
・・・・・・・・・無理だよ。
私はエースが好きだけどエースはきっと私のことは大切な仲間、としか思ってない。
でも今はそれで十分幸せだから。
・・・・・・・・だから早く、エースが良くなりますように。
「俺だって風邪くらい引くに決まってんだろ・・・」
小さく言い返すエースは何だか可愛くて、
熱を測ろうとおでこに触れたら、
「あつッ!」
めちゃくちゃ熱かった。
「・・・・・・・・あんま近寄らない方がいいんじゃねェか、うつるぜ」
「喉渇いてない?お水持ってくるけど」
「・・・・・・・・聞けよ」
「薬は飲んだんだよね?」
「・・・・・・・・・・・・ナースに無理やり飲まされた」
「ん。じゃあ後は栄養と休息だね」
「眠くねェ」
まるで我が侭言う子供。
「何か欲しいもの、ある?」
「アコが欲しい」
「無茶言わないで」
叱るように言えば、
エースはちぇ、と舌打ちしながら目を閉じた。
やっと寝てくれる気になったのかな、と私は黙って立ち上がる。
1回寝たらお腹すくだろうし、
栄養のあるもの食べさせてあげなきゃ。
そう思って台所に行こうとドアノブに手をかけたところで、
「行くなよ」
小さいけど確かに聞こえた。
「・・・・・・・・エース?」
振り返って見てみると、
真っ直ぐに天井を見据えたエース。
「行くなよ、アコ」
「寝ないの?」
「アコが居ないと寝れないんだ、俺は」
と、これは私の目を見る。
その目はまるで私の機嫌を窺うように。
・・・・・・・・可愛い、なあ。
「お腹、すいてない?」
「すいた」
「ここに居たら作れないんだけどな」
「・・・・・・・・・・・・・だろうな」
「あ、サッチさんに作ってもらおっか」
「それは嫌だ。アコの作った飯が食いてェ」
「・・・・・・無茶苦茶言ってるって気づいてる?」
言いながら苦笑すればエースはまた、目を閉じた。
「・・・・・・・・・悪ィ」
思わずそんなエースの髪を撫でた。
「・・・・・・・・・アコ?」
「大丈夫だよ、エース」
いつも強くて、
カッコ良くて。
怖いものなんかないって感じのエースだけど。
熱があって具合悪い時くらい、不安になるんだよね。
「・・・・・・・何が、だよ」
「ずっと側に居るから、私」
エースがそれを望んでくれるなら。
「・・・・・・・・・・・・アコ」
今日初めての強い声が私を呼んだ。
「ん?」
「キス、したい」
突き刺さった、言葉。
「な、っ何言ってんのエース・・・!」
心臓が大きく動いた。
うっすらと目を開けたエースは、
そっと私の頬に手を伸ばしてきた。
「熱で頭どうにかしちゃっ、ぁ」
エースの手はそのまま私の顔を引き寄せて、
そのまま、
「・・・・・・・・・・ん」
唇が触れ合った。
「・・・・・・ははっ、熱ィ」
唇が離れた後エースはそう言って満足そうに笑う。
あ・・・・・熱かった。
エースの手も、
唇も。
今も、
熱い。
「っエースっ!いい加減にしないといくら病人でも怒るよ!?」
「怒れよ」
「・・・・・・・え」
いいの?
エースは掠れた声で、
「病人とか関係ねェ。アコが好きだからした、そんだけだ」
熱のこもった声で。
・・・・・・・・・・・そんなこと、言うなんて。
「そっ、そんな、こと」
「嫌だったら怒ればいいだろ?・・・・・あーでも何か眠くなってきた」
「・・・・・・・・・エースってほんと子供」
やりたいことやって、
満足したら寝ちゃうなんて。
「・・・・・・ガキには出来ないようなキスしてやろうか?」
「やめときなさい、病人なんだから。・・・・だから、病気が治ったら」
「なお、ったら?」
エースの目が閉じかけてる。
ああ、眠いんだな。
「もう1回、言って。そしたら私も返事する」
「絶対、だな?」
「うん、絶対」
「・・・・・・・・・待ってろ、アコ。ぜってー、言う・・・・」
そう言って再び目を閉じたエースからは、
今度こそ寝息が聞こえてきた。
ねえ、エース。
早く風邪治して。
もう1回、聞かせてね。