短編④
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さっきまでの喧騒が嘘みたいに静かだ。
今日は小さいながらも久しぶりに戦闘があって、
特に盛り上がった宴だった。
火照った頬に当たる冷たい風が気持ち良くて。
目の前に広がる満点の星空は綺麗で。
眠いんだけど、
ここで目を閉じるのは勿体ない気がする。
なんて思ってたら。
「こんなとこで雑魚寝してると襲われるぞ」
きらきら、光る、赤い髪。
「・・・おか、しら」
「寝るならちゃんと部屋にしとけ」
「でも皆、寝てるし」
「だから危ないんだ、まったく・・・・このお嬢さんは」
「私を襲おうなんて人この船に居ませんよお」
「ここに1人居るが?」
「・・・・お頭くらいのもんです」
皆、ホントに寝ちゃってる。
・・・・・今ここで目が覚めてるのは私とお頭くらいのものだろう。
「なら今ここで俺に大人しく襲われるか?」
「あははっ、それは嫌かなあ」
「部屋、戻るぞアコ」
「うーん、もうちょっと」
ここに居たい。
そう言うとお頭は少しだけ顔を強張らせた。
「ここに気になるやつでもいるのか?」
「風が・・・・気持ちいいし」
「・・・・風邪を引くぞ」
「星、綺麗だし」
「・・・・確かに、な」
お頭はどかっと私の横に腰を降ろすと、空を見上げて呟いた。
「お頭も一緒に寝ましょうよ」
「・・・・おいおい」
「お頭が隣に居てくれたら誰も私を襲わないでしょう?」
「そりゃそんな度胸のある奴はいねェだろうが・・・・そもそもさせねェが」
「ね。一緒に寝ましょ」
「・・・・仕方ないお姫さんだなァ」
そう言うとお頭は立ち上がって、居なくなってしまった。
・・・・・・・あれ。
さすがに呆れられたかな。
さっきまで気持ち良かった風が妙に冷たく感じた。
お頭は優しいからって甘えすぎたかな。
「・・・・・・はあ」
ため息を吐いたら、
ぼふ。
身体に圧力と同時にぬくもり。
「生憎と1つしか持ってきてねェんだ、我慢してくれ」
「お頭!?」
あったかい毛布をかけてくれたお頭が、
私の隣に寝ころんだ。
「文句は受け付けないぞ」
「・・・有難う御座います」
お父さんみたい、と少し思ったけど、
前にそう言ったら物凄くフクザツそうな顔をされたのでもう言わない。
「明日もいい天気になりそうだな」
「明日はきっと皆二日酔いで寝てますね」
「んで、ベンに怒られる訳だ」
「あははっ、そしたらお頭も怒られて下さいね」
「任せとけ」
「朝になったらまた賑やかになりますね・・・・」
「そうだなァ・・・静かなのも今のうちだ」
「・・・・たのし、かったぁ」
「・・・・そうか」
お頭は何が、と聞くこともなく静かに頷いてくれた。
そのままぼんやりと空を眺めてたら、
「あっ流れ星っ」
「・・・流れ星と言やァ、星の屑だって知ってるか?」
「・・・・何で今そんなこと言うんですかー。ロマンの欠片もない」
「だっはっは、すまん」
「いいんです、星の屑でも。綺麗だから」
「・・・・ロマンのあること、か」
「お頭には無縁ですよね」
「失礼だな。そうでもねェさ」
「そうですか?」
「・・・今目の前に広がるどの星より、アコの方が綺麗だ」
私の目を見て、
にやり、とお頭が笑った。
「・・・・・・・・ずるいです、それ」
卑怯です。
こんな状況でそんなこと言われたら心臓が動き出してしまう。
「少しは意識したか?」
「え?」
「襲うぞ、って言ってる男に寝よう、って言葉は禁句だぞ」
言いながらお頭の片手が伸びて来た。
「おか、しら・・・・・?」
するりと私の髪を撫でて、穏やかな微笑みを私に見せる。
・・・・静かすぎるせいで、
お頭の声と私の心臓の音としか、聞こえない世界。
「・・・・まだ酔ってるのかもしれないです、私」
「ああ・・・俺も酔ってるのかもしれねェなァ」
「お頭はいつも酔ってるじゃないですか」
「はははっ、それもそうだが・・・今日は妙に気分がいいもんでな」
「・・・・勝ったから?」
「俺達が負けると思うか」
「思いません」
「宝箱も何個か巻き上げた、欲しいのがあったら取っていいぞ」
「いりません。私が欲しいのは・・・・・」
「・・・・・欲しいのは?」
「流れ星」
「流れ星?願いごとでもあるのか?」
「綺麗じゃないですか、流れ星」
一瞬だけど。
願い事なんて絶対言えないけど。
「よし、わかった」
「・・・・わかった?」
「流れ星を手に入れてみせよう」
「はい!?」
「そしたら俺の女になってくれるか?」
・・・・・思っても見なかった言葉に時が止まった気がした。
「・・・・流れ星が手に入ったら、お願いしてもいいですか?」
「・・・何を願うか興味あるな」
「賑やかな昼間と静かな夜。それから」
「それから?」
「好きな人と1つの毛布にくるまって眠りたい・・・・です」
今日みたいに。
何だか今日がとても幸せだったから。
「・・・・やっぱり流れ星はやめだ」
「え」
「お前が望むのは俺だけにしておけ」
光ったのは、
お頭の目。
「・・・・そうします」
おやすみなさい。