短編④
夢小説設定
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『エラー :最初からやり直して下さい』
画面に出た文字にはあ、とため息が漏れた。
もう、何なの。
「・・・・・親の敵みたいな顔でパソコン睨んでるわよアコ」
隣に座る同僚に苦笑で突っ込まれた。
自分で選んだ仕事とはいえ、
事務は疲れる。
や、他の仕事も疲れるんだろうけど。
「だってもう訳わかんない!な、ん、でエラー出るの!」
「間違えてるからでしょ?」
「だから!何処がどう間違ってるのか教えろっての!」
「はいはい、頑張ってねー」
「むう」
同僚の言葉に諦めてモニターを見つめた。
と、
ふわりと煙草の香りがした。
「ここ、数字間違えて入力してるんじゃねえの?」
「・・・・・・・・・・・おお!」
指された所を見れば確かに指定された書類と違っていた。
「確かに!有難う御座いますサッチさん」
先輩であるサッチさんは、にしっと笑う。
「どーいたしまして。他にわかんないとこは?」
「今のとこないです」
「ま、また何かあったらすぐ俺を呼べってんだ。それよりアコちゃん今夜暇?一緒に夕飯でもどうよ」
「あ、今夜は健康エンターテイメント家庭の医学スペシャルがあるんで無理です」
「・・・・・・・・・そりゃ渋いな」
がっくりと肩を落として自分の席に戻っていったサッチさんを見て、
「ちょっとアコ、勿体ないじゃないサッチさんのお誘い断っちゃうなんて」
「えーそう?でも家庭の医学スペシャルだよ?」
「録画しなさいよそんなもん」
「録画してこなかったんだもん」
同僚からブーイングが飛ぶけど、こればっかりは仕方ない。
PRRRR.....PRRRR....
電話のコール音。
「あ、私出ます」
ガチャリと受話器をとって、
「お電話有難う御座います株式会社白ひげの」
名前を言おうとしたところで、
「お、その声はアコだろ?久し振りー。なあ、今夜飲みに行こうぜ?」
誰だお前。
と言う言葉をぐっと飲み込んで、
「失礼ですがどちら様でしょうか」
「やだなあ取引先の」
ガチャ。
嫌な予感しかしなかったので切った。
取引先の会社の息子が妙に私を飲みに誘ってくるのは知ってた。
最近電話かかってこなかったから油断してた。
「・・・・・・・今の誰?」
「知らない人」
「・・・・・・・・・・あ、そ」
心底呆れ顔の同僚に私そろそろ首になるかもなと思う。
「アコちゃん、今の電話って取引先の馬鹿息子?」
「え?はあ、まあそうですけど」
「ったくしゃーねェなぁ。あんだけ言っといたのに」
「言っといた?」
サッチさんは何処か怒っているような顔でぼそりと呟いた。
「アコちゃんは俺のだから、って」
「・・・・・・・・・・・・・・・え、違いますけど」
「でも最近かかってこなかったろ?」
うんまあ確かにそこは感謝せざるをえない。
「アコちゃんを他のやつにやる気はねーし、首にさせる気もねえから、安心しなって」
「・・・・・はあ、どうも」
カッコ良くそう言って颯爽と去っていったサッチさんの背中を見送った。
「・・・・・・勿体無いなあアコ」
「だってサッチさん煙草吸うでしょ?私煙草吸う人ってあんまり好きじゃない」
「え?そう?・・・・あれ、そういえばサッチさんてアコが出勤の時だけ吸ってるかも」
思い出したかのように言う同僚に私の頭はハテナマークが飛び交う。
「・・・・・・・・・・サッチさん今何処?」
「自販機のとこ」
「よっしゃ行ってくる」
「ええ!?」
驚く同僚に手を振って部屋を出た。
自販機のとこに行けばサッチさんは煙草を灰皿に押し付けているところ。
「サッチさんてやっぱ煙草吸いますよねー」
「あっれーアコちゃん?どうした?寂しくなった?」
「煙草。吸いますよね」
力強く言い直せばサッチさんは観念したように答える。
「・・・・・・・・吸います」
「私が居ない時は吸わないんですか?」
単刀直入に聞けば、
「吸わねえよ」
と簡単に返って来た。
続いて、
「アコちゃんが居ない日は吸わなくてもいいんだけどなー。居る日はやっぱ駄目だわ俺」
「駄目?って何がですか?」
「アコちゃんが他の男と話してるの見ると苛苛しちまってさ」
・・・・・・・・・・・・・何かそういうの聞いちゃうと。
「サッチさん」
「ん?」
「・・・・・・・・・明後日なら見たいテレビないんでご飯行きますか」
「マジで」
「煙草は身体に悪いんですよサッチさん」
だからサッチさんの健康の為に。
今日はテレビ見て、
明後日は一緒にご飯を食べに行くとしますか。