短編④
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「肝試し、開始でーす」
・・・・何ともまあ呑気な掛け声で始まった肝試し。
うちのサークル旅行の恒例行事。
「俺ら何番目?」
「10番目」
「もう少し先か」
「そ」
私は今年エースとペア。
顔も良くて優しくて、人気のあるエース。
密かにペアを狙っていた女の子も少なくないだろう。
「今年もお札?」
「らしいぜ」
肝試しのルールも毎年同じ。
お墓のある道を進んで、
本堂までたどり着いたらそこにお札があるので、
それを各ペア1枚ずつ取ってくること。
辿り着けずに取れなかったペアは罰ゲームを受ける決まり。
取れても帰り道に脅かされて落としたりしても失格。
まあ罰ゲームと言っても皆にご飯を奢るーとか、
帰りは立って帰るーとかたいしたことないんだけど。
ペアはくじ引きで決まる。
「お、俺らの番だぜ」
「ん、行こうか」
薄暗い道を、エースが持つ懐中電灯の灯りを頼りに歩く。
「怖くねェ?」
「これだけ明かりがあれば、まあ」
「・・・・じゃなくてよ」
微妙な顔をしたエースに言いたいことを理解した。
「脅かす係りにエースが居ないからそこまでは・・・今回サッチさんとマルコさんだっけ」
「あァ」
「マルコさんは何仕掛けてくるかわからない怖さあるよね」
「・・・・まぁな」
「マルコさんには勝てない?」
「・・・・絶対勝つ」
「あははっ、じゃあ大丈夫だ。私霊感ないから別方面は平気」
さすがにお墓は不気味っちゃ不気味だけど。
エースが居る安心感。
「・・・・そっか」
「エース去年はノリノリで脅かし役やってたのに今年は違うんだね」
「あー・・・・・まァ、事情があってよ」
「ふぅん・・・・」
エースは私から目を逸らしてぽりぽりと頬を掻いた。
まあ、聞かれたくないことならこれ以上聞かないでおこう。
「・・・・そろそろかな」
結構進んで来たけど、まだ何もない。
「何が」
「脅かし役の登場」
「まだ来ないに1票」
「・・・・何で?」
「脅かすなら油断してる時が1番だろ?」
「・・・・ってことは?」
「楽しそうにしてる時とか、ゴール直前で札を手に入れる時、だな」
「なるほど・・・・」
さすが去年の脅かし役。
頼りになるなあ。
「お札と言えばさ、去年わかりにくいところに隠されてたの知ってる?」
「そうなのか?」
「え、何処?って探してる時に脅かされたわそう言えば」
それでも何とかお札探し当ててGETしたけど。
「今回もそうかもな」
「罰ゲームだけは避けたいけど・・・・」
「・・・・だな」
・・・・なんだか珍しくエースの口数が少ない。
「・・・・エース、怖い?」
「・・・・何がだよ」
「おばけ」
「ンなもんは別に怖くねェ」
「何か緊張してるみたいだったから」
「・・・別に」
・・・・もしかして、と。思い当たることがある。
「私と一緒が嫌だった?」
「はァ!?」
「ほら、肝試しのペアってくじだったから。ホントは狙ってるコとかいたのかなあって」
「・・・・アコはどうなんだよ」
「何が?」
「俺で・・・・良かったのか?」
「うん、嬉しい」
「そ、そっか。・・・・・・俺は、」
エースが何か言いかけたけど、
「あ、本堂着いたよ」
本堂に着いたので早々にお札を探す。
「エース後ろ見張ってて」
エースに守ってもらえれば安心してお札を探せる。
さて今回は、っと。
・・・・・はい、ありました。
横に張り付いてるタイプ。
「エース、お札げっ・・・・・・・」
GETしたよ、と報告しようと振り返ればそこにエースが居なかった。
「・・・・エース?」
・・・・エースが私を置いていくとは考えられない。
「エース・・・・エース!?」
必死に名前を呼んだら、
「・・・悪ィ」
何処からかエースが出て来た。
「・・・何処行ってたの?」
「野暮用。札、取れたんだな」
「うん、あとは持って帰るだけ」
「・・・・だな」
「ねえ、私驚かされたら落としちゃいそうだからエース持ってて」
不安だったのでエースにお札を渡そうとしたら、
お札ごと手を握られた。
「・・・・これで落とさねェだろ」
「え・・・・うん」
・・・・・まさかの状況に色んな意味でドキドキ。
「・・・さっき、お前が札探してた時サッチが来たんだ」
「脅かされたの?」
「・・・さっさと告白しろってせっつかれた」
「・・・・告白?」
「俺は・・・・っ好きでもねェやつこんなことしねェからな!」
「・・・・へ?」
繋いだ手が熱い。
「好きだアコ・・・・っ!!」
「えええええ!?」
「これを言う為に今年はこっちにしたんだ・・・くじはマルコに細工してもらった」
「そうなの!?」
「・・・俺と、付き合って下さい」
「・・・・・喜んで」
ペアになれただけで幸運と思ってたけど。
これ以上は望まないって思ってたけど。
・・・・望んでもいいのかな。
「ほっほんとか!?」
「う、うん・・・・よろしく」
小さく答えた瞬間、突然横からひゅーひゅーという口笛と共にサッチさんが出て来た。
「ようやくだなエース!やったな!」
「サッチ・・・ありがとな!本堂でサッチがせっついてくれたおかげだ」
「え、俺本堂には行ってないけど」
「え」
「・・・・・・・お化けに感謝?」
ちなみにいつの間にかお札もなくなってて、
2人仲良く手を繋いで帰る罰ゲームを果たしましたとさ。