短編④
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「マルコさん大丈夫ですか?」
夜中に廊下でマルコさんとすれ違った。
眠そうな瞳はいつもだけど、
目の下に隈。
疲れた顔で。
思わずそう口に出しちゃったけど、
答えは何となく予測出来た。
「ああ、大丈夫だよい」
・・・・・・・・・予想通り。
そりゃそうだよね。
あのマルコさんが大丈夫じゃない、なんて言う訳ない。
例え大丈夫じゃなくったって。
そんなこと言える人じゃない。
「あんまり無理しないで下さいね」
そして私に言えるのはこれだけ。
しかもマルコさん、無理して笑ってたし。
・・・・・・・もう、
大丈夫?って言わないようにしよう。
そう、決めた。
「マルコさん、珈琲どうぞ」
マルコさんが食事を終えて。
取り出した紙とにらめっこして何分過ぎただろう。
せめて私に出来ることは、
美味しい珈琲を提供することだ。
大丈夫ですか?って聞かないことだ。
・・・・・・でもこれが結構辛いんだなあ。
ついぽろっと大丈夫ですか、って言っちゃいそうになる。
いかんいかん、我慢だ。
なるべくマルコさんのことを気にしないようにして食器洗いに集中。
それから何分過ぎたか、
ふと目の端に捉えたマルコさんの姿。
・・・・・・まだ、にらめっこしてる。
珈琲も飲んでないみたい。
もう、冷めちゃってるねきっと。
少しだけ寂しくなりながら、
それでも自分に出来ることを探した。
「マルコさん、ケーキ召し上がって下さい」
「・・・・・・ケーキ?」
「ビターチョコです。甘い物とったほうが頭冴えるかなって。あと珈琲も淹れなおしておきましたので良かったら」
困惑した顔のマルコさんに微笑みかける。
「・・・・悪いねい」
「いえいえ、自信作です!」
「気を遣わせちまってるな、俺は」
「そんな、こと」
言葉に詰まった私に、
マルコさんは珈琲を一口啜る。
「ああ・・・・美味いよい」
「良かった、です」
自然と出た笑顔にほっと一安心。
すると、
「ところでよい、アコ」
「はい?」
真面目な顔になったマルコさん。
「誰かに何か言われたかい?」
「え?」
「それとも・・・・俺のせいかい」
「え、と。・・・・何が、でしょうか」
唐突の疑問。
でもそれが何のことかわからない。
首を捻る私にマルコさんがズバリ。
「大丈夫、って聞かなくなったろい?最近」
「・・・・・・っあ」
思わず手で口を押さえた。
「・・・・・・・・・・・その反応は俺だねい」
・・・・・・・・・私の馬鹿。
「マルコさんだけじゃないですけど、ね。この船に居る皆そうじゃないですか」
「そう?」
「大丈夫?って聞いて大丈夫じゃない、なんていう人いませんよ」
「は、なるほどねい」
「・・・・・・だから、聞けなかったんです」
「余計な気遣わせちまったねい」
苦笑してマルコさんはケーキを口に運ぶ。
「・・・・・・・・・バレてましたか」
「顔見ればわかるよい、それくらい。・・・ケーキも美味い」
「有り難う御座います・・・・」
いくら渾身のケーキを美味しいって言われても。
・・・・・・・・・さすがにちょっと凹む。
「そんな顔すんなよい、アコ」
「あはは・・・・」
乾いた笑いしか出てこない。
そんな私の頭にぽん、と置かれた手。
そしてゆっくり優しく、撫でてくれた。
「俺は今までどおり言って欲しいよい」
「・・・・・・でも」
「アコは顔に出るんだって言ったろい?どうせなら言葉で聞きてェんだよい」
「・・・・・・・・・・・・・・でも、プレッシャーになりませんか?」
ただでさえたくさんのものを背負ってるマルコさんなのに。
「その逆だい」
「逆?」
「アコの大丈夫ですか、っつーのは俺の力になってる。こいつを笑顔にする為に頑張ろうって思う」
言いながら向けてくる視線が。
優しくて。
その言葉が本当なんだってわかる。
・・・・・・・嬉しい。
「だから余計な気遣うなよい、アコ」
「私が・・・・私に、出来ることがしたかっただけで」
「なら言葉で言ってくれ」
「マルコさんが、心配です。・・・・無理して欲しくないです。大好き、だから」
私が心をこめてそう伝えたあとの、
嬉しそうな笑顔。
誰にも見せたくないくらい可愛かった。