短編①
夢小説設定
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「・・・・・明後日誕生日?」
「そうだけど?」
「そうだけど?じゃねェよ!何でそれを今日言うんだよ!」
エースと付き合って初めての私の誕生日が明後日。
エースとはプチ遠距離恋愛で、
物凄く遠い訳ではないけど、気軽に会いに行ける距離でもない。
・・・・お互い休みでないとゆっくり会えないんだけど。
「・・・・・・言ってなかったっけ」
「聞いてねェ。明後日バイトだぜ俺・・・・」
「えー気にしなくていいよ。この年齢になるとあんまり嬉しいものでもないし」
「あのな・・・・・とにかく、絶対俺が1番にメール送るからな、他の奴からのメールは受けとんなよ!」
そんな無茶な!
と思いつつ、心の中ではすごく楽しみにしてる自分が居た。
そして迎えた誕生日。
言葉の通り、0時になった瞬間エースからメールが届いた。
『 差出人: エース
TO : アコ
件名 : 無題
本文: 来年は絶対一緒に祝うって約束しろよ?
誕生日、おめでとうアコ 』
エースらしい文章に思わず笑みが零れた。
そしてその日はエースからのメールを筆頭に何人かの友達からおめでとうメールももらえて。
うん、やっぱり誕生日も悪くないかも。
そう思いながら1人で夕飯の支度をしてた時だった。
メールの着信音が部屋に響いて、何となく携帯を手に取った。
送信相手はエース。
ああ、仕事終わったのかな。
「・・・・・・・・・・・え?」
何も考えずにメールを開いて私は驚いた。
え、ちょっと待って、何これ。
メールに書かれていた文は。
『今アコの家の前に変な奴いたぜ』
・・・・・・・見たならやっつけてくれればいいのに。
変なの。
そんな感想が浮かんだ瞬間、はっとなった。
あれ、待って。うちの前に・・・ってどういうこと?
考えてすぐに私は外に出た。
・・・・・・・家の前、異常なし。
何だ、何もないじゃん。
と帰ろうとして、私はドアノブにかけられたビニール袋に気がついた。
「・・・・・・・これ」
中身はコンビニのカップケーキ、小さい紙袋。そして、Happy Birthdayとだけ書かれたメッセージカード。
私はドアの前で携帯を片手に呆然。
でもすぐに我に返って、その番号に電話をかけた。
数回のコール音の後、
『どーした?』
間延びしたエースの声。
「エースっ今何処!?」
『今?もうすぐ俺の家』
そう言うエースの声の側から聞こえるのは、
『間もなく3番線に○○行き電車が到着致します』というアナウンス。
「嘘、だって駅の音する」
『・・・・・・・・・・・バレたか』
「5分!」
『え?』
「5分待ってて!」
それから私はそのまま走った。
絶対、エースは近くの駅に居る。
全力疾走すれば5分で行ける!
「・・・・・・えー、すっ!」
かなりの息切れをしながら何とか名前を呼ぶ。
思った通り、エースが、居たから。
「4分。足速くなったなァアコ」
「来てくれたんなら言ってくれれば、いいのにっ、はあー!!」
疲れた!と言えば、笑いながら近づいてきたエースに、
ぎゅ、っと優しく抱きしめられた。
「ええええエースここ駅!」
「いいじゃねェか今日誕生日なんだから」
「私の誕生日だけど!?」
「俺はついこの間まで知らなかったけどな」
その声に違和感を覚えて、
「エース・・・・もしかして怒ってる?」
だから会ってくれなかった?
と思って胸が痛んだら、
「怒ってるに決まってんだろ。今まで知ろうとしなかった俺最悪じゃねェか。だから・・・会いたくなかったんだよ」
なんて言う。
「エースは悪くないでしょ?」
「しかもお前嬉しいもんでもねェとか言うし」
「・・・・・・・・・・・ごめん」
「いいか、これからは毎年俺と一緒だからな。でもって絶対笑顔にしてやる」
「うん」
年をとると、誕生日ってのも複雑だなあなんて思ってたけど。
その度にエースが側に居てくれるなら。
笑顔になれるなら。
「じゃあ改めて。誕生日おめでとう、アコ」
愛してるからな、と囁かれた耳元が幸せで。
「有難う、エース」
来年の誕生日が楽しみになった。
小さい紙袋の中には、ちっちゃな赤い宝石がついたピンキーリングが入っていて。
数年後には違う指にやるから、
それまで我慢しろよ。
だそうです。